第110話 俺って金持ち?


<ギルドのフロア>


俺が受付の佐々木さんのところへ近づいて行くと、やはりあの若者たちが近づいて来た。

悪い奴じゃなさそうだが、何か俺って絡まれやすいのだろうか?

「あ、あの・・おっさ・・じゃなくて、村上さん、どうだったのですか?」

あれ?

何か態度が急変したぞ。

どうしたんだ?


「あぁ、別に何もなかったけど、ライセンスカードをもらったよ」

「そ、そうですか・・あの・・少し伺いたいのですが、内閣調査隊に入るのって、その・・試験って難しいのですか?」

あのタメ口だった男が聞いてくる。

「君たち、調査隊に入りたいのか?」

俺の言葉に大きくうなずいていた。

「なるほどなぁ・・あ、入隊試験はそんなに難しくはないよ。 軽く模擬戦をすれば、大体が受かると思うよ」

「そうなのですか? 俺たちは、レベル20くらいなければ合格できないと聞いていたのですが・・」

「そんなことを言っていたね・・でも、基本は誰でも入れるわけだし、中で鍛えてくれたりもするからね。 問題行動を起こさなければ、大丈夫じゃないかな」

俺は適当に答えてみる。

「ほ、本当ですか!」

ケンとヨシヒコ、クミが顔を見合わせていた。

「ありがとうございました。 し、失礼します」

3人の若者はササッと俺の前から立ち去った。


俺は佐々木さんのいるカウンターに座る。

待ち時間はない。

佐々木さんが笑顔で俺に接してくれる。

ほ、惚れてしまうぞ、佐々木さん。

「どうでしたか、村上さん」

「はい、いろいろと情報交換させてもらいました。 ありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそこれからよろしくお願いします」

佐々木さん、感じいいよなぁ。

「佐々木さん、それで俺に受けれる依頼って、何かあります?」

「そうですね・・Cランクですから、それはいろいろとあると思いますが・・村上さんはどんな仕事を希望ですか?」

「何があるのです?」

「まぁ、本当にゲームみたいな感じですよ。 実際に魔物の討伐や魔石の売買など・・」

・・・

・・

佐々木さんが丁寧に教えてくれた。

聞けば聞くほど、RPGゲームじゃないのかという感じだ。


「佐々木さん、早速ですが・・俺の持ってる魔石を見てもらってもいいですか?」

「えぇ、構いませんが、素材を鑑定するところで提示してもらってもいいですか?」

佐々木さんが手を伸ばして、場所を指示してくれる。

俺は佐々木さんにお礼を言って、素材を鑑定するカウンターの前に行ってみる。

何人か順番を待っているようだ。

俺も順番を取り、待つこと10分ほど。

俺の番号が呼ばれた。

「いらっしゃい。 えっと、あなたは初めて見る人ね・・ライセンスカードを見てせもらえるかしら?」

「は、はい」

俺は受付の人の言われるままにカードを取り出した。

受付の人がカードをスキャンさせる。

「このカードは、査定が終わるまでここに刺さっているから・・素材を見せてもらえるかしら?」

俺は言われるままに、先ほどギルマスに見せたオーガジェネラルたちの残りの魔石をいくつか並べてみる。

結構な数を持っているからな。

・・・

「う~む・・えっと、村上さんだったわね。 これって・・Cランクの素材じゃないわよ・・って、この魔石って、オーガジェネラルよね・・こっちはオーク、オーガ・・そしてオーガキング・・」

素材を鑑定している人が横を向いて、他の所員を呼ぶ。

3人が集まって来て、皆難しそうな顔をしていた。

・・・

何か小さな声で話し合っているようだ。

しばらくすると、一番初めに俺に応対してくれた人が来た。


「村上さん、一応買い取らせてもらうわよ。 お金はカードに振り込まれると思うけど、2~3日くらい後になると思うわ。 それでいいかしら?」

「はい、それはいいのですが・・いくらくらいになります?」

俺はそちらの方が気になった。

「フフ・・私たちの方でもオーガキングなんて初めて見るしね・・大体600万と言ったところかしら?」

「ほ、ほんとですか? そんな大金になるんですね。 ありがとうございます。 じゃあ、また討伐してきたら大金持ちですね」

「・・村上さん、そんな簡単に討伐できる魔物でもないと思うんだけど・・ま、あればこちらとしてもありがたいしね。 その素材を使ってギルドも儲かるし」

「なるほど、ウィンウィンの関係じゃないですか。 魔石6つくらいで600万って、やる気出ますよ」

俺の発言に、応対してくれた人が驚いたような顔をする。

「え? 村上さん・・オーガキングの魔石が600万なんだけど。 後のオーガジェネラルが400万くらいかな。 オーガやオークがそれぞれ150万くらいになると思うの。 大体そんなところかな」

「・・・」

俺は言葉が出て来なかった。

この世界・・もうお金に振り回されることはなさそうだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る