第107話 やり過ぎたのか?


「ギルマス・・あの・・レベルって測定できるのですか?」

俺は聞いてみる。

「えぇ、まぁ大体は・・ね」

「大体?」

「正確に測る装置はないのよ。 そのうち開発されるかもしれないけど、今は自己申告と鑑定士の測定で決定しているわ」

何か、アナログだな。

それに、鑑定士なんているんだな。

「なるほど・・じゃあ、私のレベルは27ということで・・」

「・・村上さん・・じゃあって、どういうこと? 最低でもレベル27ということよね? 鑑定士も自分よりレベルの高い人は正確には判定できないしね」

「す、すみません。 あまり人と関わるのが得意じゃないのですよ。 ソロでいろいろと活動したいのです」

「わかったわ・・じゃ、Cランクから始めてもらえる? すぐにBに上がると思うけど、いいかしら?」

ギルマス、良い人だな。

あまり人の詮索をしてこない。

これがマナーなのかな?


「はい、ありがとうございます・・あ、それからギルマス・・」

「何?」

「はい、昨日ダンジョンに潜っていて素材を集めたのですが、引き取ってもらえるのですか?」

「もちろんよ。 そのバックパックの中に入っているの?」

「はい」

「私も専門じゃないから、正確な査定はできないけど、何の素材?」

ギルマスは好奇心旺盛な人のようだ。

「はい・・えっと・・魔石が少しと・・後はちょっと強い魔物の素材が手に入ったので・・」

俺はそう言いながら、トロウルとジャイアントの魔石、素材はミノタウロスの角を1つ出してみた。


「・・・」

ギルマスが無言で魔石と素材を見つめている。

・・・

・・

無言のまま、1分くらい経過しただろうか?

「村上さん・・これって何の魔石? 見たことないんだけど・・それに結構な力みたいなのを感じるわ。 鑑定士に判断させると正確にわかると思うけど・・」

「え、え~と・・その・・左からトロウル、ジャイアントです。 そして、素材がミノタウロスの角です」

「・・・」

ギルマスが無言で固まっていた。

また時間が1分ほど流れただろうか。


「む、村上さん・・その・・聞いたこともない魔物ばかりだけど、どこのダンジョンに潜ったの?」

「はい、○○神社のダンジョンです」

「え? あそこはレッドマークのダンジョンよ。 突然、高位の魔物が出現するから、みんな近寄ろうとはしないところね。 はぁ・・」

ギルマスがため息をつく。

「ギルマス・・何か、まずいことをしましたか、私・・」

「う~ん・・マズくはないんだけど・・どうやってあなたのレベルなどを隠そうかと考えているのよ。 でも、この素材は・・とんでもないわね。 世界のどこのギルドでも扱ったことないんじゃないかしら?」

「え?」

俺は焦ってしまった。

やり過ぎたのか?

だが、既に出してしまったし・・。

「ギルマス・・どうしましょう?」

「あのね・・こちらがどうしましょうって感じだわ」

俺とギルマスはしばらく無言のままジッと座っていた。


ギルマスがスッと立ち上がると、机の上の内線を手に取る。

「もしもし・・えぇ、すぐに松本さんに来てと伝えてもらえるかしら? うん・・無理言うわね、ありがとう」

ギルマスが俺の方を見て微笑む。

「村上さん、今、鑑定士の人を呼んだわ。 それで見てもらって・・おそらくはこのギルドで厳重保管ね」

「え?」

コンコン・・。

ノックと同時にドアが開いた。


「松本さん、無理を言ってごめんね。 ちょっと見て欲しいものがあるのよ」

「失礼します・・」

松本という人がギルマスの方へ近づいて行く。

30歳くらいだろうか?

長髪の結構なイケメンだ。

俺の方をチラッと見て、ギルマスに挨拶をしていた。

「ギルドマスター、その机の上にある素材を鑑定すればいいのですね」

「そうなんだけど・・その結果は、決して口外しないこと。 これは絶対よ」

松本が少し驚いた表情でギルマスを見て、返答。

「わかりました」


松本が魔石を手に取りいろいろと眺めている。

一つ手に取り、いろんな角度から見つめ、また次を手に取る。

・・・

・・

最後はミノタウロスの角に触れていた。

!!

よく見ると、松本の顔には汗がいっぱい流れていた。

少し顔色も悪そうだ。

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