第106話 Cランク


「日置・・さん?」

「ん? どうかされましたか?」

俺の悶々とした考えなど余所にギルマスが首をかしげて俺を覗き込む。

び、美人だな。

「い、いえ・・珍しい苗字なので・・あ!」

俺は珍しい苗字に記憶があった。


ギルマスが目を大きくして俺を見つめる。

「し、失礼しました、ギルドマスター。 あの・・日置という苗字で思い出したのです。 内閣調査隊に女の子がいて・・」

「あぁ、ヤマトちゃんね。 日置大和、私のめいです」

ギルマスがにっこりと微笑む。

その笑顔もいいが、俺にはチラチラと見える胸の谷間が気になって仕方がない。

「な、なるほど」

「村上さんは素材班でいたと伺っているのですが、ヤマトちゃんと面識があるのですか?」

「い、いえ・・1度だけ、食事会で攻略組の団長に紹介されたんです」

「坂口団長ね・・ふぅ~ん・・なるほど」

ギルドマスターが俺を見つめる。


「な、何か?」

俺はその視線にドキッとする。

「いえね、ライセンスカードの情報と食事会の件・・あなた普通じゃないわね」

「え? ど、どういうこと・・」

「村上さんが参加した食事会・・あれは段議員の肝入りの会だったはず。 そこに招待されたということは、新しい世界の参加者に選ばれたということよ」

「新しい世界?」

「あら、ご存知なかった? ま、そのうちわかるから教えておくけど、遷都・・首都を話があるのよ」

「え?」

ギルドマスターが呆れたような顔をして俺を見る。

「ほんとに何も知らないのね。 段議員たちが遷都組で頑張っているの。 内閣調査隊は段議員が立ち上げた組織で、旧体制派と完全に衝突しているのよ。 まぁ、衝突できるほどの力ができたから、表面化してきたわけだけど、旧体制派は今までの日本の政治システムで行こうと考えているわ。 でも、こんな世界になったでしょ? もう、今までのシステムでは無理なのよ。 それで新しく日本を作り直そうって人たちが、ギルドを通じて集まっているの」

・・・

・・

ギルマスがいろいろと話してくれた。


まさか首都を変更する事案があったとは知らなかった。

内戦なんてことにならないよな。

・・・

俺が考え込んでいると、ギルマスがジッと俺を観察していたようだ。

「ハッ・・ギ、ギルマス、どうしたのですか?」

「フフ・・村上さん、とても真剣な顔をしてましたよ。 この国が心配ですか?」

「い、いえ・・そんなことは・・というより、何の話をしてましたっけ?」

「はぁ?」

ギルマスが呆れた顔を向ける。

「まぁいいわ。 で、村上さんのギルドでの登録は大歓迎よ。 一応ランキングみたいなシステムを採用してるけど、どのランクがいいかしら?」

「・・あの・・ランクって選べるのですか?」

「まさか・・あなたのレベルって27以上でしょ? そんな人はこのギルドにいないわ。 とはいえ、他のギルドとも企画は統一されているから、無茶苦茶なランキングは差しあげれないけど、ね」

「は、はぁ・・」

「一応、レベル20でCランクになっているの。 レベル25以上でB、レベル30以上でAね。 後は、存在は確認されてないけど、レベル35以上はSということになっているわ。 D以下は大体5単位くらいで区切られているから、レベル15はDってことになるのだけれど・・村上さんは、Bってことになるけど・・いきなりっていうのもねぇ・・」

「なるほど・・私の位置づけが難しいのですね」

「そういうこと」


俺は先ほどの若い連中のことを思い出していた。

内閣調査隊はレベル20以上でないと入れないとか何とか言っていたような気がする。

「日置さん・・いえ、ギルドマスター、このギルドでは大体みんなどのくらいのレベルなのですか?」

「そうねぇ・・年配者が集まって作っている、白狼ってクランがあるのだけれど、そこのトップがレベル23じゃなかったかしら? 後は大体20前後が多いわね」

「そうなのですか・・」

俺がうなずいていると、ギルマスが少し近づいて来てそっと囁くように言う。

「で、村上さん・・本当はレベルいくつなの?」

「は?」

おいおい、ギルマス、相手のレベルを聞くのってご法度じゃなかったのか?

「別に言いたくなければ言わなくていいけど、ギルマスの権限で強制的に聞くこともできるのよって、そんなことはしないけど・・ちなみに私はレベル24よ」

俺はギルマスを見ながら悩んでいる。

う~ん・・どうしたものか?

レベル27で押し通した方がいいのかな?

それとも正直に現在のレベルを打ち明けた方がいいのか・・正確にレベルを測定する装置も・・って、そういえば若い連中がレベル測定するって言ってたよな?

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