第105話 俺を試しているのか?


俺が座っていると、先程声をかけてきた若者たちがまた近寄って来る。

「おっさん、無事に登録終わったのか?」

「あ、あぁ・・終わったというか、ちょっと待っていてくれって言われてな」

俺の回答に3人が不思議そうな顔をする。

「おじさん、何か問題でもあったのですか?」

「い、いや、俺は何もしてないと思うんだが・・」

「そうよねぇ・・普通は入力をして、レベル検査をしてライセンスカードが出来上がるのだけど・・何だろ?」

「おっさん・・あまり聞いちゃいけないが、レベルっていくつ位なの? あ、言いたくなければ言わなくていいんだ。 これはギルドのルールに抵触するからな」

「なるほど、そんなルールがあるんだな。 だったら言いたくないよ、俺、あまり強くないし」

俺の回答にケンたちは笑わなかった。

「そ、そっか・・別にいいけど・・受付に何か渡してなかった?」

なんだこいつら?

俺のことを観察していたのか?

「あ、あぁ・・紹介状みたいなものだよ」

「「紹介状?」」

ケンとクミがハモッて答える。

「そんなのがあるの? おじさん・・何者?」

「あぁ、俺・・ほんの数日だけど、内閣調査隊にいたんだよ。 素材班だけどな。 その時の班長が紹介状をくれたんだ」

クミとケン、ヨシヒコが顔を見合わせて驚いていた。


「マ、マジかよ・・おっさん、かなりの実力者じゃないかよ」

「え?」

「内閣調査隊って言えば、レベル20越えじゃなきゃ入れないんだろ?」

「は? そんなルールがあったのか?」

俺は全く知らない。

「ってことは、俺達よりもレベルが上か・・」

ケンがそこまで話していると、佐々木さんが帰って来た。

「あら? お知り合いですか?」

「いえ、今知り合いました」

「フフフ・・なるほど。 では村上さん、そこの通路に沿って移動してください。 突き当りの扉が室長室になります。 よろしくお願いします」

「はい、わかりました」

俺はスッと席を立ち、佐々木さんに言われた通りに移動する。


俺が移動した後、佐々木さんにケンたちがいろいろと聞いていたようだ。

「佐々木さんよ、あのおっさんは何者なんだ?」

「それはお答えできません」

「チッ、まぁそうだろうけど・・そういえば、あのおっさん、内閣調査隊にいたって言ってたぞ」

佐々木さんがうなずいて答える。

「なるほど・・そのことは話されたのですね。 そうですね、そこの紹介状を持って来られたので、少しお話をお聞きしようということになったのですよ」

「はぁ? なんだそれ? 俺たちも後少しレベルを上げて、内閣調査隊の入隊試験に挑戦しようかと思っていたのに・・」

「そうなのですか? あそこは誰でも試験は受けれるはずですよ」

「え?」

ケンがクミの方を向く。

クミが首を横に振る。

「あそこって、レベル20以上じゃなきゃ入隊できないんだろ?」

「そんなことはないと思いますよ。 ただ、そのレベル以上が必要とされる仕事だとは聞いてますが」

「なんだよ、それ。 でも、あのおっさん・・そこを辞めてきたのかな?」

「人にはそれぞれ事情がありますからね。 さて、次の方がお待ちなので、ケン様たちも移動なさってください」

「あ、あぁ・・ありがとう、佐々木さん」

ケンは受付の前から移動した。

ケンの中では疑問ばかりが沸き起こっていた。


<ハヤト>


俺は通路を進み、突き当りのドアの前まできていた。

「室長室か・・ギルドマスターがいるんだよな?」

俺はドアをノックする。

「どうぞ」

「失礼します」

タッチ式の自動ドアらしく、俺が手を近づけて触れるとドアが開いた。

部屋の奥で椅子から立ち、笑顔で俺を出迎えてくれる女性がいる。

ギルドマスターだろう。

年齢は、パッと見では20代後半くらいだろうか。

清潔な雰囲気で妙に色っぽい人だ。


右手で椅子の方へ俺を促す。

「村上さん、どうぞお掛けください」

「は、はい」

俺が応接用の椅子に座ると、正面にギルドマスターが座る。

「失礼します。 私は、この○○神社でギルドマスターをやっている日置へきと申します。 よろしくお願いします」

ギルマスが軽く頭を下げると、首筋から鎖骨・・そしてそのたわわな胸の谷間がチラッと見える。

!!

こ、このぉ・・ワザとか?

このギルマス、俺を試してるんじゃないだろうな。

俺の頭の中はスパークしそうなほどフル回転だ。

・・・

ん?

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