第103話 ギルド


<ハヤト>


俺はダンジョン7階層にいた。

「ここが7階層か・・なんかきれいな場所だな」

『ハヤト様、周りに脅威となるような敵は存在していないようです』

ベスタの言葉を聞きながら、俺も周囲を見渡してみる。

・・・

・・

「ベスタさん・・ここって本当にダンジョンだよな?」

俺はあまりにも平和的な雰囲気に、逆にオロオロとしていた。

『はい、間違いなくダンジョン7階層です。 今のところ魔物の気配はしませんが・・どういうことでしょう?』

「いやいや・・俺が聞きたいよ。 何だろう・・まさかトラップばかりの階層とか・・」

余計な考えが浮かぶが、取りあえずはマーキングはできた。

今回はこれで帰ろう。

「ベスタさん、ここで帰ろうと思うよ」

『はい、十分過ぎるほどの戦果です』

「あぁ、ベスタさんのおかげだ。 ありがとう」

『ハヤト様、主を守るのが私の使命です』

ベスタの言葉を聞きながら、魔法陣へと足を踏み入れた。


即座に地上の入り口へと戻って来ていた。

「ふぅ・・本当に疲れたよな。 えっと・・かなり長くダンジョンにいたけど、時間の進み方が違ってたっけ?」

『いえ、ハヤト様・・ダンジョンが視覚化されるようになり、地上の時間経過とそれほど違わなくなっていると思います』

「え?」

俺はベスタの淡々とした答えに驚いた。

「べ、ベスタさん・・どういうこと?」

『はい、以前は亜空間のようなところに存在していましたが、今は現実とつながっております。 おそらくですが、深いところに行けば時間の流れが変化すると思われますが・・浅い階層では地上と同じ流れだと思います』

「なるほど・・ということは、今回は結構な時間が流れたのかな?」

俺はスマホを確認する。

電波時計で時間が補正されていた。

・・・

マジか・・3日も経過しているじゃないか。

1度地上へ出たけど、あまり関係なかったようだな。

無我夢中で、がむしゃらに攻略していたからな。

時間どころではなかったはずだ。

俺は深呼吸すると、取りあえず帰路につく。


自宅に帰って来ていた。

郵便ポストを確認する。

ん?

ネ〇ポス?

誰からだ?

!!

調査隊からか・・あ、楠木班長だ。

いったい何だろう?

俺は大きめの封筒を持って家の中に入る。


荷物を置いて、早速開封。

・・・

ふむ・・なるほど。

「村上さん、お元気? って、変よね。 要件だけ伝えるわ。 同封されているライセンスカードを持ってギルドへ行くと、いろいろと優遇されるので、遠慮なく使ってね。 調査隊に在籍していた証だから、役立つわよ。 それに公認ギルドの所在地が記載された書類も入れておくから役立ててね。 そのうち、また会いましょう。 楠木紫音くすのきしおん

楠木班長、良い人だな。

ありがとうございます。

俺は早速、公認ギルドの所在地を確認してみる。

・・・

え?

まさか、あの〇〇神社がこの地域のギルドになっているのか?

商売上手だなぁ。

明日にでも行ってみるか。


やはり疲れていたのだろう、昨夜はよく寝れた。

時間は7時過ぎ。

俺は、軽く朝食を済ませると、一応バックパックを背負い、○○神社へ車で向かう。

○○神社は、年末は大混雑するが、平日は閑散とした感じだった。

・・・

俺は駐車場に到着して驚いた。

いったいどこの観光地だ?

神社だよな?

この大きな駐車場に交通整理の人が出ていた。

まるで初詣の時のような感じだ。

俺は案内されながら、駐車場に車を止める。


車から降りて人の流れに沿って歩いて行く。

ギルドがどこに設置されているかわからないが、これだけの人がいるんだ、みんなギルド関連の人だろう。

人の流れに乗って歩くこと5分ほど。

本殿周辺は代わり映えしないが、少し離れたところに2階建てのビルが建っていた。

結構大きな建物だ。

そして、間違えようがない看板がかかっていた。

○○神社ギルド、行政公認とある。

俺は少し外から建物を眺めていたが、後ろから声をかけられる。

「おっさん、入り口で立ち止まると、みんなの迷惑だぞ」

俺は急いで振り返り、「すまない」と頭を下げて、道を譲る。

学生だろうか? 

全くの正論だ。


さて、俺も中に入るか。

自動ドアが開いて中に入る。

・・・

う~ん・・俺って、うらしま太郎か?

なんだこの空間は・・どこの空港ロビー?

清潔できれいな、近未来的な空間が広がっていた。

だが、迷うことはないようだ。

大きな垂れ幕というのか、タペストリーというのか、重要な情報場所が一目でわかる。

掲示板みたいなのもあるが、デジタルサイネージだよな・・これって。

あそこはカフェか?

神社という感じじゃないぞ。

俺はしばらくキョロキョロとしていたが、取りあえず受付へいかなければ。

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