第100話 やばいんじゃね?


ミノタウロスがまたも両手で斧を握りしめる。

俺の方へ近づいて来ようとした。

!!

ミノタウロスが一歩足を踏み出した時、確かに少しふらついた。

右足に体重がかかる時に少しふらつく。

だが、そんなことはお構いなしに俺との距離を詰めてくる。

そして、距離が詰まってきたら斧を振り回す。

単調な攻撃だが、それだけに破壊力が凄まじい。

おそらく、当たれば間違いなく死ぬどころか、俺の身体はバラバラになるほどの衝撃だ。

そんな衝撃を毎回繰り出してくる。


ただ、神眼のスキルだろう、何とか凌ぐことができていた。

・・・

何度か攻撃を凌いでいると、ベスタが話しかけてきた。

『ハヤト様、後5分も戦うと、スキルポイントが枯渇します。 回復までにかなりの時間が必要になるかと思います』

「は?」

こ、こんな時に・・って、それほど消耗が激しいのだろう。

俺はミノタウロスの攻撃を躱しつつ、膝のところを執拗に攻める。

「このぉ!」

攻撃を当てては距離を取り、ミノタウロスの斧を躱す。

何度かそれを繰り返していると、いきなり俺の目の前に何か棒のようなものが見えた。

バチーーン!!

俺は衝撃で吹き飛んでしまった。


かなりの距離を吹き飛ばされたようだ。

だが、意識はかろうじてある。

俺は手に力を入れて身体を起こす。

「く、くそ・・いったい何が起こったんだ?」

遠くでミノタウロスが立っているが見える。

そしてそこにはミノタウロスの尻尾が動いていた。

なるほど・・あの尻尾で弾き飛ばされたというわけか。

だが、俺の頭の中にイメージが浮かんで来なかったぞ。

『ハヤト様、神眼のスキル・・当分は使用できません。 それに回復スキルも後1度ほどが限界かと思います』

「ま、マジかよ・・ヤバいよな」

俺はそうつぶやくも、ミノタウロスが足を引きずりながら歩いて来るのが見える。


「ベスタさん、あいつにダメージが与えられたんじゃね? このまま退却できないかな?」

『ハヤト様、退却できれば申し分ないのですが、入り口はミノタウロスの後ろ側です』

荒野のような地形で、俺とミノタウロスが戦っているところは少し窪地のようなところだった。

周りには身を隠せる岩が少しある程度だ。

それにそれほど大きく広がっているわけではない。

要は、ミノタウロスを倒さなければ、先へ進めない。

・・・

「ベスタさん・・戦うしかないよな」

『はい、そうなるでしょう』

「まだ身体は動けるから、回復は瀕死になった時だな」

『・・・』

ベスタは返事をしない。

さて、行きますか。


あれだけ膝に攻撃を入れたのに、引きずる程度か。

・・・

ミノタウロスとの距離が詰まって来る。

ミノタウロスが斧を振り上げた。

袈裟切りに俺の方へ斧を振り下ろしてくる。

もう、神眼による恩恵はない。

だが、今までの攻撃パターンや癖のようなもの、それらは把握したつもりだ。

袈裟切りにするときは、右肩上から振り下ろす。

攻撃が当たらなくても、地面に刺さったまま斧を敵に振り抜く。

その繰り返しだった。

バックステップで斧を躱し、次の攻撃を右側に避けて躱す。

斧を振り払うと、少しだがミノタウロスに硬直時間がある。

斧を両手で持ち直そうと、体勢を整えるからだ。

だが、地面から振り払った時、右膝がガクンと力が抜けたようになった。


俺は何も意識せずにミノタウロスに接近。

そのまま鉈で、ミノタウロスの首の後ろのところを叩きつける。

ドン!

ズバン!

3度ほど鉈で叩きつけると、最後の一振りが首の真ん中部分まで食い込んだ。

引き抜こうとすると、ミノタウロスが暴れ出す。

俺は急いでその場から離れた。


「く、くそ! 武器がなくなった。 だが、首は本当に弱点だったんだな。 他の部分と比べてかなり柔らかい感じがした」

ミノタウロスがブモブモと言いながら、首の鉈を引き抜こうとする。

・・・

「あ!」

『あ!』

俺とベスタが同時に言葉を出した。


ミノタウロスが鉈を引き抜いた瞬間、首からブシューッと血が噴き出していた。

手に持った鉈をポトンと落とすと、フラフラとしながら俺の方に歩いてくる。

「べ、ベスタさん、あいつまだ生きてますけど」

『ハヤト様、鉈を拾って攻撃です』

俺は迷うことなくミノタウロスの方へ向かって走る。

俺が接近すると、ミノタウロスが斧を振り上げようとするが、うまくいかないらしい。

かなりダメージを受けているようだ。

俺は危なげなくミノタウロスを躱し、鉈を拾う。

そのまま方向を変え、ミノタウロスの首めがけて鉈を振るう。

ミノタウロスも手でガードしようとするが、何せあの出血だ。

うまく動けない。

俺的にはラッキーだが。

手に何度かガードされながらも、首に鉈を打ち込む。

1度、俺の服が掴まれた時には焦ってしまった。

なんという力だ。

グッと引っ張られるとガクンと身体が引き寄せられそうになった。

だが、服が破れたおかげで助かった。

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