第99話 怖いんですけど


とにかく今動けば確実に見つかるし、意識を集中させてミノタウロスを見つめている。

・・・

しばらくすると、ミノタウロスの周りにいろんなデータみたいなのが表示された。

!!

「こ、これって・・ゲームみたいだな」

ミノタウロスの生命力だろうか。

頭のところに体力ゲージみたいなアイコンが見える。

また首のところが弱点らしく、ご丁寧に赤く表示されていた。


『ハヤト様、普段は邪魔になるような情報は提示されません。 今はそれらの制限が解除されております』

!!

「そうか・・前にベスタさんが表示してくれたような機能なんだ」

『その通りです。 で、レベル差はありますが、あの弱点を攻撃できれば生き残る可能性があります』

「ベスタさん、そこは勝てると言って欲しいところだけど・・」

『申し訳ありません。 今のところ、断言できません』

ベスタの言葉を受けながら、俺は覚悟を決める。


とにかく殺らなきゃ殺られる。

ミノタウロスは両手で斧を持ち、ゆっくりと辺りを見渡している。

途中、鼻をヒクヒクさせながら匂いでも索敵しているようだ。

20mくらいは離れているから匂いはわからないだろうと、俺は推測。

・・・

俺はこの岩陰とミノタウロスを一直線上に置き、距離を取ろうと考えていた。

『ハヤト様、今動けば確実に見つかります』

即、ベスタから警告が飛ぶ

!!

いったいどうすれば・・動けば見つかるし、このままでも詰みそうだ。

それに、このままジッとしているのも精神の限界が近い。

だが、俺の武器って鉈だぞ。

あの太い首・・ダメージって与えれるのか?

!!

ミノタウロスが両手でグッと斧を持ち直すと、ゆっくり確実な足取りで俺の方へ近づいてきた。


俺は岩陰に身体をめり込ませるようにピタッとくっつく。

・・ズン・・ズーン・・ズーン・・。

!!

一瞬、周りの音が消えたかと思った。

その瞬間、俺は岩を蹴り飛び退いた。


ドッゴォォーーン!!


俺が先ほどまでいた大きな岩が砕けていた。

土埃の中、ミノタウロスの影が見える。

ん? 目が赤く光っているのか?

『ハヤト様、あれは高位魔物の怒りの信号です』

ベスタがこんな時だというのに、冷静に情報を提供してくれる。

「ブモォォォォォ!!!」

ミノタウロスが斧を両手で掲げ、俺に向かって突進してきた。


クソ!

やるしかない。

ミノタウロスが目の前に迫る。

俺は右に避けようとしたが、頭の中に俺が潰れるイメージが浮かぶ。

急いで左側に避ける。


ドォン!!

思いっ切り地面に斧が刺さる。

ミノタウロスはそんなことはお構いなしに、地面に埋まった斧ごと俺に向かって振り払ってきた。

斧が地上から出ると同時に石礫が飛んで来る。

まるで弾丸のようだ。

だが、俺にはその攻撃が

最初に岩を蹴って飛んだ時もそうだ。

潰れるイメージが浮かんだからな。

前にベスタさんに言われたことを思い出していた。

神眼のスキルに「軽い未来予測」みたいなものがあると。


おかげでそれほど神経をすり減らすことなく対処できている。

今まで、何故発動させなかったのだろう。

ベスタさんに後で言われたが、闇落ちしそうな心境で、スキルの発動どころではなかったらしい。

とにかく今はこの魔物を倒さなきゃいけない。


ミノタウロスが大きな斧を両手で持ち直す。

そしてその目はまっすぐに俺を見つめている。

・・・

怖いんですけど。

あの顔と身体、どうしろっていうんだ。

って、突っ込んでいる場合じゃない。

とにかく首の赤くなっているところが弱点なのは間違いない。

後は膝の裏とかが黄色く表示されている。

ここもやや弱いところなのだろうか。


ミノタウロスが表情を変えることなく俺を見つめ、近づいてくる。

これだけで息苦しく、怖い。

逃げ出したいが、逃げようとするとあの斧が俺の背中に刺さるイメージが浮かぶ。

・・・

とにかくあの弱点らしきポイントを攻撃しなきゃ。


首は一番の弱点らしいが、無理だろう。

ならば、膝のところの黄色い表示が無難だが・・。

俺がそこまで考えると、ミノタウロスの巨体が前方に迫っていた。

ミノタウロスが右足を一歩前に出すと、斧を斜めに振り下ろす。

!!

俺は頭に浮かぶイメージ通りに、ミノタウロスの方へ踏み込んでいく。

イメージが一瞬で3種類浮かぶ。

後ろと横に避けるイメージ・・これは即座にアウトだった。

だが、前方に移動するイメージだけは躱せるようだ。

そのイメージ通り、かなり怖いが斧が俺のところに到達する前に、ミノタウロスの腰下に飛び込んだ。

そして、ミノタウロスの右膝裏に鉈を叩きつけ、即座にバックステップ。

ミノタウロスが俺の移動に、少し遅れて反応し、斧を振り回す。

ブゥン!!

だが、俺はそこにはいない。

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