第70話 反省会


<近藤邸>


ハジメがいなくなってから20分くらいが経過しただろうか。

近藤の屋敷の周りに赤色灯が集まり出した。

ゾロゾロと警察官が集まってくる。

近藤と深い中にあったものもいた。

1人の大柄な男が屋敷の中に入りながら、ゆっくりと辺りを見渡した。

「ほんとに、誰も人がいない感じだな・・」

「はい、巡回中のパトカーから通報を受けて来てみたのですが・・わざわざ部長がお越しにならなくても・・」

「いや、こういった連中の屋敷の中は確認しておく必要があるからな」

部長と呼ばれた男は答える。


月に何度かは顔を出すところだ。

それぞれが情報を交換し、持ちつ持たれつの関係でうまくいっていた。

今度の定例会にはどんなものを食べさせてくれるのだろうかと思っていたところだった。

それに、新しい女もそれとなく聞くつもりで、今度は制服がいいかなと考えていたところだ。


「おい、早くこっちに来てくれ!」

屋敷の中から声が飛ぶ。

部長と呼ばれた男は変わらぬ歩調で歩いて行く。

周りの連中は駆け足をした。

!!

屋敷の中は屍山血河と呼ぶにふさわしい光景だった。


部長も屋敷の中を見ると、思わず言葉を失う。

・・・

な、なんだこれは?

まるで映画か・・。

・・・

ん?

壁などは傷ついていないな・・どういうことだ?

部長は冷静に状況を見極めていた。


殺されるまでわからなかったのか?

いや、この人数の誰もが気づかないはずはないだろう。

無抵抗・・いや、違う。

死ぬ瞬間まで・・何が起こったかもわからずに死んだ、そんな感じだ。

妙な違和感を感じる。

部長がいろいろと頭の中で考えていると、声が聞こえた。

「鑑識・・こちらへ来てくれ!」

まるで叫び声のような感じだ。

部長も一緒に移動する。

!!

現場を見て部長は動揺した。

こ、近藤じゃないか!

その身体つきですぐにわかったが・・首から上がない。

視線をずらすと、横に近藤の頭が転がっていた。

恨めしそうに目が開いていた。


鑑識と一緒に現場でいる警察官がつぶやく。

「ハッ、クズには相応しい死に方だな」

部長の耳にも届いた。

部長は真剣なまなざしになり、その声の主を睨む。

「おい貴様、亡くなった方に失礼だろう!」

部長は思わず言葉を出していた。

暴言を吐いた警察官が部長の方を見る。

そして、何かを言おうとした。

その警察官の前に1人の男が割り込む。

「ま、前田・・ど、どうもすみません、大黒部長。 こいつ、最近配属されたもので・・まだ教育が出来ておりませんで・・すみません」

部長としても、こんな下っ端に関わっている時ではない。

それに自分のようなことはしたくはない。

そのまま軽くうなずくと、視線を移動させる。


それにしても、いったい誰がやったんだ?

近藤と敵対する組織は、この辺りにはない。

しかし、この惨状・・警告などとも違う。

一方的な蹂躙だ。

レベルのある世界になったが、まさかこんなこともできるのか?

部長は驚きの方が大きかった。

ただ、頭の中では違う組の名前が浮かんでいた。


「前田君・・部長の前で妙な言葉を使わないでもらいたい」

前田は素直にうなずく。

「それよりも、君が見た現場げんじょうはどうかな?」

「はい・・間違いなくレベルのある者の仕業しわざですね。 しかも相当レベルがあると思います。 僕でも全員倒すことはできると思いますが、相手に気付かれる前にと言われると・・この数ですからね」

「そうか・・面倒なことになったな」

前田はそんな言葉を聞きながら思う。

別にいいじゃないか。

こんなクズどもは死ねばいい。

そのためのレベルシステムだろうに。

僕が代わりにやりたかったくらいだ。

だが、いったい誰がこんなことを・・。

これだけのレベルとなると、それほど存在するはずもないと思うが・・。

前田はそんなことを考えながら、現場ですることもなくたたずんでいた。


<内閣調査隊・素材班>


事務室で戦闘の反省会を行っていた。

俺は黙って聞くだけ。

真田助教が何度も不甲斐ない、と連呼。

楠木班長が笑いながらなだめていた。

オーガキングの討伐が、もっぱらの話題となる。

楠木班長がチラチラと俺を見るが、何とか誤魔化して話してくれていた。

ありがたい。

「さすが楠木班長ですね。 それにしても、まさかオーガキングを倒してしまうなんて・・僕もその現場にいたかったですな」

真田助教は機嫌がいいようだ。

「あ、そういえば・・村上さんも一緒にいたんだよね・・どんな感じだった?」

真田助教に聞かれる。

他の隊員たちも俺の方を向いていた。

「え・・い、いえ・・私は・・その・・正直、気絶してました」

カラーン・・。

マグカップが落ちる音が聞こえた。

楠木班長が落としたようだ。

皆、すぐに楠木班長の方へ視線と飛ばす。

「ご、ごめんなさいね。 少し疲れたのかしら・・」

「あ、すみませんでした。 班長は戦闘して、まだ休息されてなかったですね。 申し訳ありません」

真田助教が急いで謝罪。

すると、ドアをノックする音が聞こえた。

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