第69話 邸宅内
「社長・・いえ、近藤さん・・終わりです」
ハジメが静かに言葉を出す。
?
「お、お前・・原さんの遣いじゃないな・・だ、誰だ?」
社長が席からゆっくりと立ち上がろうとする。
「これからいなくなるあなたが知る必要はない」
「な、なんだと・・そんなことが・・そんなことが許されると思っているのか・・」
いつもなら相手の言葉など聞く前に、ターゲットは始末するハジメだ。
だが、今回は少し情報が欲しかった。
この社長とのつながりのある連中のことだ。
「近藤さん、あなたとつながりのある連中・・黒田と八木、大黒・・他にはいませんかね?」
「は? 何を言っとるんだ? レベルがあるからと言って、正義ゴッコか? やめておけ・・今なら許せる範囲だぞ」
社長は少し落ち着きを取り戻してきたようだ。
そして、いろいろと次の行動を考えていた。
右の指を動かして椅子にある非常ベルを押そうと思った時だ。
指が動いていない。
!!
何も感じなかった。
・・
自分の右腕がきれいに切断されていた。
驚いた顔でハジメの方を見る。
「・・お、お前・・いったい・・」
「近藤さん、質問はこちらがしているのです。 あいにくと余計な言葉は困ります。 で、どうなんです?」
「だ、だから・・知らんと言ってるだろ! それよりも、お前・・こんなことをしてタダで済むと思っているのか?」
近藤は焦りを感じながらも、どこかで自分は大丈夫だろうという根拠のない安心感を持っていたようだ。
「無論、問題ありません。 誰もいなくなるのですから・・最後です・・他にいませんか?」
ハジメの言葉の意味がよくわからなかったようだ。
「・・だ、誰かぁ! 誰かおらんのか!!」
近藤が言葉を出した時だ。
近藤の首がスパッと切断される。
ハジメはそのまま近藤に前蹴りを繰り出す。
首が転がると同時に近藤の身体も仰向けで倒れていた。
そのまま鮮血が吹いている。
すぐに用心棒だろうか、近藤のところへ駆けつけてくる。
今から、勝負にならない勝負が始まろうとしていた。
・・・
・・
ハジメが屋敷に入って10分くらい経過しただろうか。
入って行った扉がゆっくりと開く。
中からハジメが出てきた。
『ハ、ハジメ・・大丈夫だったか?』
「あぁ、ポチ・・お待たせ。 終わったよ・・いや、掃除が残っているな・・」
独り言のようにハジメがつぶやく。
ポチはハジメの雰囲気が普通の状態に戻っていたので少し安心したようだ。
『ハジメ・・中の連中はどうなった? 何か痛い思いをさせられなかったか?』
ポチは心配してくれているようだ。
ハジメはポチを抱えて、頭を撫でながら歩いて行く。
「ありがとうポチ、誰もいなくなったよ・・誰もな」
犬でも他者を心配できる。
だが人という生き物はどうだ?
クズと呼ぶにふさわしい。
もしかして俺にレベルが付与されたのは、こんな連中を間引かせるためか?
・・・
まさかな・・そんな妙な思考回路は、俺にはないな。
今、昔の嫁のことが頭をよぎった。
毎日、毎日、小さな嫌がらせを受け続けていた。
俺の洗濯物だけを洗濯機の中に残してみたり、食器も俺のだけ洗わなかったり・・いったい何がしたかったのだろうか?
何で元嫁のことが浮かんだのだろう?
ハジメは頭を軽く振る。
さて、近藤つながり関連の連中だけでも始末しておこう。
子供を薬漬けにしてるような連中だ。
人ではない。
先程の子も最後に薬を大量に口にしたのだろうか。
ビクビクと震えながら冷たくなっていた・・気の毒に。
ハジメは夜の街の中に消えて行く。
◇
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