第66話 団長


攻略組の回復、回復って言ってた女の子がオーガキングをジッと見つめながら言葉を出していた。

「隊長、このオーガキング・・お腹が爆発してますよ」

隊長と呼ばれた、楠木班長と話している若い男が振り返る。

「え? 俺、オーガの死体なんて見たくないし・・」

隊長はそう言いながらも、オーガキングの死体を見る。

少しして楠木班長を見た。

「やっぱ班長、攻略組に是非!」

楠木班長が首を横に振りながら笑う。


回復って言っていた女の子がやはりオーガキングを見つめている。

・・・

「素材班の班長さん・・剣しか持ってないわね・・これほどの威力があるのかしら? それとも何かのスキルなのかな?」

この子、鋭いな。

チラッと俺の方を見るが、すぐに隊長から声がかかる。

「おい、無事が確認できたんだ。 撤収するぞ!」

「は~い」

隊長がオーガキングを見て楠木班長を見る。

「やっぱ攻略組に欲しいな・・」

同じことをつぶやいていた。


俺たちは、その後は普通に帰投となる。

無事に地上に到着し、報告タイムが待っていた。


<攻略組のワークショップ>


楠木班長とハヤトの救出に向かったチームが報告をしていた。

「・・以上が、今回の報告になります」

「団長、我々もオーガキングなどは初めて見ました」

報告を聞きながら、団長と呼ばれた男が微笑む。

「なるほど・・君たちが見たのは、本当にキングだったのだね? ジェネラルなどではなくて・・」

団長の言葉に戸惑ったが、確実に確認した若い男が返答する。

「はい、私が直接確認しました。 それに工藤も一緒に見ています」

「は、はいぃ・・わ、私も一緒に見ましたが、間違いないと思います・・ちょっと河上君、いきなり振らないでよ」

河上と工藤が団長の前で気を付けをしていた。


「うむ・・間違いないようだね。 写メも確認した。 僕もオーガキングだと思うのだが、その・・お腹が吹き飛んでいたよね?」

団長が聞く。

「はい、間違いありません」

「う~む・・楠木班長か・・」

団長が少し考えていたかと思うと、パッと顔を上げて微笑む。

「いやね、かなりの剣の腕とは聞いていたのだよ。 まぁ素材班の方でも、ある程度の実力がないとね・・しかし、それほどの実力だったとは・・了解した。 ご苦労だったね、ありがとう」

団長はそう声をかけると、下がらせた。


団長の前から退出すると、河上と工藤は自分達のチームに戻って行く。

「工藤、改めてオーガキングかと問われれば、よくわからないものだな」

「えぇ!? 河上君、間違いなくオーガキングだよ。 でも、団長何か納得できなかったのかな?」

工藤が顎に人差し指を添えながら話す。

「どういうことだ?」

「う~ん・・何ていうのかなぁ、攻略組の私たちでも、オーガキングって単独で倒せるかと言われれば、難しいんじゃないかな?」

「何? 俺は倒せるぞ」

河上は少しムッとした顔つきになる。

「フフ・・河上君って可愛いね」

「な、なにぃ」

「そうムキにならないの。 河上君が強いのは知ってるわよ。 だからこそ私たちのチームがすぐに派遣されたんだし・・私たちならそれほど苦労せずにオーガキングは倒せると思うわよ。 まだ戦ったことないけどね。 でも、素材班の班長ってソロでしょ? そこが不思議なんじゃないかな、団長は」

工藤が河上を諭すように話す。

「た、確かに・・な。 俺もソロで戦えと言われれば戦うが、無傷で勝てるかと言われると、正直わからないな」

「う~ん♡ 素直な河上君は素敵よ」

「く、工藤、からかうな!」

河上と工藤はイチャイチャしながら歩いて行く。


<団長と呼ばれた男>


団長こと、坂口恭二さかぐちきょうじ

内閣調査隊に入隊し、素養検査でズバ抜けて戦闘能力が高かった。

誰も相手にならない。

ナンバーズ(実力的に上位5位内に入る人たち)を呼んできたが、それでも子供と大人くらいの差があった。

その上、キョウジは力量を抑えていたくらいだ。

すぐに攻略組の団長となり、運営を任されるようになる。

その運営も見事にこなし、実質ともに長としてふさわしい。

ナンバーワンのプライドも傷つけることなく、ナンバースリーくらいの位置で留まるようにしていた。

それはいい。


キョウジは思う。

素材班の楠木班長。

何度か組手をしたことがあるが、それほど潜在的な脅威を感じたことはない。

オーガジェネラル程度なら問題なく倒せるだろう。

だが、オーガキングだという。

それに腹部に爆発したような跡が残っていた。

写真でも確認したが、どうみても剣戟けんげきによるものではない。

僕が戦っているスタイルのような体術の雰囲気を受ける。

報告では、楠木班長の他に1人男の人がいたという。

まだ入隊したばかりで、演習も兼ねてダンジョンに向かったそうだ。

・・・

これは一度確認しておく方がいいかもしれない。

『キョウジ様、私もその方が良いかと思います』

「なるほど・・アストレアもそう思うかい」

『はい』

アストレア:キョウジのナビが進化したスキル。


キョウジ

レベル:28

HP :465/465

SP :460/460

力  :505    

耐久 :450  

敏捷 :520  

技能 :456   

運  :59   

スキル:アストレア2

    縮地☆

    神威4


キョウジはスッと席を立ち、早速素材班へ向かった。

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