第63話 オーガジェネラル


間もなく、真田助教が倒したオーガのところに、一回り大きなオーガが2体現れる。

!!

明らかに雰囲気が違う。

レベルは20。

・・・

本能だろうか。

真田助教が視線を外すことなく立ちつくしている。

身体がわずかに震えていた。

「く、楠木班長・・あれが・・噂に聞く、オーガキングでしょうか?」

「おそらく・・違うわね・・オーガジェネラルよ。 私も直接目の前で見るのは初めてだけど・・」

楠木班長がやや落ち着きのある感じで答える。


初見って、マジかよ!

俺はチラッと周りを見る。

俺以外の新人隊員は全員身体がカチコチといった感じだ。

ま、みんなレベル20になっていないし、オーガなんて見た目から鬼だからな。

迫力がある。

・・

って、班長たちも緊張してんのかよ!


「楠木班長・・どうします? 撤退しますか?」

真田助教がやや落ち着きを取り戻したのか、静かに問いかけていた。

「そうね・・背中を見せれば、一気に追いかけてくるわね。 私が前に出て時間を稼ぐから、隊員を連れて撤退してもらえる?」

「は、班長・・了解しました」

真田助教が俺達にまとまってゆっくりと後退するように指示を出す。

その時だった。

オーガジェネラルが吠えた。


グォォオオオオオオオ!!!!


空気が震えて、俺達の身体にビリビリと軽い電気刺激みたいなものが伝わる。

楠木班長がゆっくりと前に歩いて行く。

チラッと俺たちの方を見て、立ち止まっていた。

驚いているようだ。

俺もその視線の先を追う。

!!

マジか。

真田助教がどうにかリカバーできたらしく、大きく深呼吸をしていた。

どうやら咆哮受けて軽いスタン状態になっていたようだ。


「・・ック、カハッ! はぁ、はぁ、はぁ・・まさか痺れるとは・・」

そう口ずさみながら、新人隊員たちの介抱をする。

「おい! しっかりしろ・・」

肩をさすったり、背中を叩いてみたりする。

俺も一緒にみんなの介抱をした。

「村上さん、君は平気みたいだが、大丈夫か?」

真田助教が聞いてきた。

「あ、は、はい。 問題ありません」

「そうか・・僕は・・って、今はそれどころじゃないな。 せっかく班長が時間を確保してくれたんだ。 急いで後退しないと」

真田助教はよく動けない隊員たちを励ましながら、来た道を戻って行く。


だが、オーガジェネラルはそのタイミングを見逃さなかった。

楠木班長が一体を相手にしている間に、大きくジャンプして俺たちの方に向かってくる。

「真田君、早く!!」

楠木班長の声が飛んで来た。

真田助教は2人を連れて一気に駆け出した。

もう1人もヨロヨロとしながらも後を追う。

「村上さんも早く!」

真田助教が声を掛けてくれる。


俺はどうしようかと考えていた。

戦ってもいいが、どうもなぁ・・。

『ハヤト様、あの右上の岩場の部分に石を投げてください』

ベスタが俺に言う。

俺は疑いもせずに、足下にあったやや大きめの石を拾う。

握りこぶしよりも大きいだろうか。

それをベスタが指示した部分めがけて思いっきり投げた。

ビュュン!


投げた部分の岩場が脆かったのだろう。

すぐにバラバラと小さな岩の破片が落ちて来て、一気に岩が崩れだした。

ドォーーーン!!

・・・

真田助教たちは奥の通路の方へと非難できていた。

村上さーん・・と、真田助教の声が聞こえたような気がしたが、どうやら岩が通路を塞いでくれたらしい。

まぁ、この場所がたまたま岩場の間で良かったよ。

ベスタさんの計算の結果か?

オーガジェネラルがその大きな身体をユッサユッサと揺らしながら、俺の方へ歩いて来る。

楠木班長は危なげなく戦っていた。

間もなく倒せそうだ。


俺の前に来た、いかにもアホそうなオーガがニヤッ笑ったような感じがする。

そういえば、これくらいのレベルになると話せたっけ? なんて、俺は思っていたが、どうでもいい。

「ふぅ・・」

俺は軽く息を吐くと、遠慮なく右掌打をオーガジェネラルに叩き込んだ。

全力だ!

ドン!!

オーガジェネラルはニヤッと笑ったままだった。

お腹の半分は吹き飛んでいる。

オーガジェネラルがゆっくりと自分のお腹を見ようと、頭を下に向ける。

そのまま前に突っ伏していた。

ドーン・・。

楠木班長もオーガジェネラルを倒したようだ。

俺の方が早かったな。

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