第58話 来訪者
アメリカは大統領の下、各州がその指針に従っているがレベルのある世界になり、少し揺らいでいるのは気のせいではないだろう。
サラたち、事務方などのプチ行政を行うものたちは感じていた。
本当に、このまま国という大きな入れ物の方向を向いていて良いのかと。
サラは思う。
ジョーのところに
それにジョーの集団だけでも、もしかしたら本当に国の力に匹敵するかもしれない。
私だけに見せてくれた、ジョーの新しい力。
とてもじゃないが、人に言えるようなものじゃない。
左腕を失って得られた力だと、マイヒーローは言う。
3つあるスキルの1つだという、
ジョーのないはずの左腕に、光の腕が現れる。
その腕が触れた大きな岩が一瞬で無くなった。
一筋の光の柱が出来上がったかと思うと、光の粒になり拡散していく。
たったそれだけだったが、目の前から大きな岩が消えた。
「サラ、君にだけ見せておきたかったんだ。 これが僕の新しい能力の1つだよ。 今度、核爆弾が来ても、これでこの世から消滅させられる」
ジョーは笑顔で話していた。
私には神・・いや、悪魔の力に見えた。
人が使ってよい力なのか?
ジョーが言うには、何度も連続して使えるようなものではないらしい。
◇
事務所でサラの報告を聞いていたジョーは常に笑顔だ。
腕を失ってからは人に対して、更に優しさが増したかもしれない。
サラは笑顔で笑っているジョーを見つめていた。
その視線の端に人が近づいてくるのを確認。
目線を新たな人に向ける。
「こんにちは、えっと・・サラさんですね。 そして、ジョーさん」
微笑みながら握手を求めてくる、中年くらいの男だ。
「えぇ、サラです」
「ジョーだ」
ジョーは笑顔で握手を交わしていた。
「私は、この州の総務を担当しているハワードと言います。 よろしくお願いします。 さて、早速ですがお仕事のお話をさせてください・・」
ハワードが笑顔から真顔にパッと切り替わっていた。
・・・・
・・・
・・
治安出動の依頼らしい。
ハワードが言うには、自分たちのいる州に国が圧力をかけてきたそうだ。
ライフラインに対する費用負担や税率の変更など。
その原因がどうもジョーたちの集団の受け入れにあるらしいことなど。
そして、偶然にも州の端にあるダンジョンから魔物が溢れ出した。
その魔物の対処に行動してほしいということだ。
州内の上位レベルの者たちは住民の安全のために派遣している。
とてもじゃないが人が足りない。
それに魔物のレベルが高い。
レベル20前後の存在が確認されている。
普通のレベルたちでは、対戦できそうもない。
ジョーはハワードの話を聞きながら、広げられた地図の地点を確認する。
「ミスターハワード、この地域で出没したのだね?」
「はい」
ジョーがサラを見る。
「はい、マイヒーロー・・私も同意見です」
ハワードがジョーとサラの会話にキョトンとしていた。
「いったい何が同意見なのですか?」
ハワードの問いにジョーが答える。
「ミスターハワード、州に圧力がかかって来た時期とダンジョン付近での魔物の確認・・都合が良すぎるのだよ」
「いったいどういうことです? ・・まさか、国が意図的に行っていると・・」
ハワードが不安そうな顔をジョーに向ける。
サラがうなずくと説明する。
「いえ、断定はできません。 ですが、このダンジョンはそれほど深い階層でもない。 誰かがダンジョン管理者になったのかもしれません。 今、管理が確認されているダンジョンは、最高でも4階層程度です。 私くらいのレベルでもクリアできる程度です。 魔物もそれほど強いものはいません。 実際に、ハワードさんから聞くまでは、無関心な地点でした」
ハワードは理解したようだ。
「なるほど・・確かに、冷静に考えれば不思議なことです。 そもそもダンジョンから魔物が出てくることはない。 だが、管理者が意図したりすれば、わからないでもないですな」
ハワードが難しい顔をしてうなずく。
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