第48話 瞬殺?


♪パッパラパラッパパ~、パパラッパパパ・・♪

ん、なんだ?

いきなりラッパの音楽が聞こえる。

俺は少し驚いて身体を起こす。

窓を開けて外を見る。

・・・

特に何もない。

昨日は、隣の部屋の声を聞いていたら、そのまま眠っていたようだ。


すぐに宿舎内に放送が入った。

「皆様、おはようございます、鈴木です。 今のラッパは起床の合図でございまして、自衛官の時間を示すものです。 我々もこの時間に従って行動致します。 今から10分以内に宿舎の外に集合してください。 点呼を取ります」

なるほど・・ここは自衛隊の敷地内だったな。

俺は鈴木の指示通りに、すぐに着替えて部屋を出る。

口をすすぎ、顔だけは軽く洗った。

宿舎の外に出ると、みんな眠そうな顔で、あくびをしながらダラダラと集まっていた。

全員はそろっていないようだが。


そんな中、1人のおっさんが俺達の前に来てゆっくりと俺たちを見渡す。

一度息を吸い込むと、大きな声を出す。

「シャキッとせんか!! 君たちは、内閣調査隊の隊員になったのだ。 気持ちを引き締めろ! 甘い気持ちでいると、間違いなく死ぬ。 遊びじゃないんだ! 

ワシは田中という。 昨日、手渡された紙にある通りに検査を受けてもらう。 わかったか!!」

田中がしばらく俺たちを見渡している。

・・・

皆、正直何が起こっているのかわかっていないだろう。

何も反応がないとわかると、また大声が飛んで来る。

「返事をせんかぁ!! わかったのか! 今から5分で整列しろ・・サッサとせんか!!」

終始怒鳴りっぱなしだな。

俺って自衛隊に入ったのか?

確か内閣調査隊だったと思ったが・・なんで?


とにかく面倒事は御免なので、俺は指示通りに移動する。


ただ・・テンプレだな。

素直に従わない連中はどこにでもいるようだ。

昨日、自分たちは強いんだぞアピールした連中が不満をぶつけている。

「あのさぁ・・俺ら自分たちでレベルを上げてきたんだ。 そこそこ実戦も経験したつもりだ。 そりゃ内閣調査隊に入ったからには、そのルールには従う。 だけど・・こんな朝早くから整列させて怒鳴られたんじゃ、モチベーションが下がるよ」

「そうそう、おっさんも朝から血圧上げると寿命が縮むぜ。 それに俺たちは自衛隊に入ったわけじゃない」

うんうん、そこは俺も納得。

まだ文句は続くみたいだ。

「別にあんたたちに逆らうわけじゃない。 個人で入れないダンジョンに潜って俺たちはレベルが上がる。 あんたたちは素材が集まる。 これって、win-winじゃねーの?」

俺はその言葉を聞いていると、なるほどその通りだとも思わされる。

怒声を発していたおっさんはニヤッとして、その若者の方へ歩いて行った。

若者たちは3人だ。

おっさんが若者たちをゆっくりと見渡す。


「お前たち、いい覚悟だ。 自信があるようだな・・実力を見てやろう、かかって来い」

俺は驚いた。

言葉でさとすのかと思ったら、いきなりか。

このおっさん、ヤバい奴じゃないのか?

俺はすぐさまレベルチェック。

・・

なるほど、おっさんはレベル23。

若い奴等はレベル18・・無理だな。

「おいおい、このおっさん俺らとやる気だぜ。 どうする?」

若い奴等もニヤッとして仲間に声をかける。

「フフ・・いいぜ。 どうせ実力がなけりゃダメな世界だ」

「あぁ、俺達がどれだけ苦労してきたか・・見せてやるぜ」

「こんなおっさんにやられるわけがねぇ・・事実、何も感じねぇしな」

・・・

若い奴等もそれなりに頑張ったのだろうが、相手のレベルがわかるわけではないようだ。


おっさんと若い連中を囲むように空間が出来上がる。

若い連中に好意的な奴等はお祭り気分になって来たのだろうか。

片手を挙げて盛り上げようとしている。

少し騒がしそうな雰囲気になろうとしていた。

!!

瞬殺だった。

2秒・・いや、1秒かかってないんじゃないか?


若い連中が地面に転がっていた。

背中から叩きつけられて、明らかにダメージを負っている。

おっさんが投げ飛ばした。

手首を掴んで背負い投げのような感じだ。

騒がしくなろうとした瞬間、すぐに静かになった。

・・・

誰も言葉を出さない。

「お前たち、まずは俺達の指示に従ってもらう。 契約書にもそう書いていただろう? さて、みんな集合したかな? サッサと整列して食事に行くぞ!」

おっさんは何事もなかったかのように話す。

若い連中はまだ地面に転がっていた。

「鈴木さん、こいつらは朝食抜きということで・・後、集まって来ていない連中も同様の措置でお願いします」

「わかりました」

鈴木がうなずく。

俺達はこのおっさんに従って食堂へと移動。

その後はバイキング方式で朝食をいただき、次の時間まで身支度を指示された。

8時30分に宿舎前に集合のようだ。

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