第47話 少しの不安
鈴木が言うには、今日はゆっくりとしていいらしい。
他の地域からの人たちがまだ集まっていないそうだ。
明日の朝に全員が集まってミーティングを受けるという。
俺達には個室が与えられていた。
結構な身分だな。
俺は素直にそう思う。
何でも全員で200人近くになるらしい。
それだけ集まるのか?
それともそれだけしか集まらないのか?
中田は先行して訓練しているのだろうなと俺は考えていた。
◇
<中田>
中田はレベル23ということを隠すこともなく表明していた。
基礎訓練も10日ほどで終了し、既に実戦部隊で活動。
初めから人をまとめるのがうまく、今は小隊長としてダンジョンを攻略していた。
「中田小隊長、もう少しゆっくりと進めませんか?」
中田と同じくらいの年齢だろうか、ガタイの良い爽やかな笑顔を持つ男が言う。
「え、えぇ・・そうね・・私としたことが・・ごめんなさい、気が
中田が苦笑しながら答える。
「まぁ、我々と違い、皆レベルが20に届いていない連中ですからね。 その基礎レベルを上げようという訓練ですから」
「ううん・・違うの、秋山さん。 私が意味なく焦っているだけだわ。 みんなを巻き込んで危険な目に合わせるところだったわね。 ありがとう」
中田がペコリと頭を下げる。
「い、いえ・・私はただ、後ろの連中を見ているとそう思っただけで・・すみません。 ですが、もしよかったら小隊長が焦っているという訳を教えていただいてもよろしいですか?」
秋山は言った瞬間に後悔していた。
「す、すみません、余計なことを言ってしまって・・忘れてください」
「ううん・・いいの。 私のレベルをここまで上げてくれた人がいるの。 その人に追いつきたい、そして追い越したいとどこかで思っているのね。 決して追いつくことはない雲のような存在なのに・・」
中田が遠くを見つめるような目で話す。
秋山は少し驚いた表情を見せる。
「小隊長・・それは本当なのですか? まさか我々よりもレベルが高い人がいるなんて・・」
「えぇ・・私の知人なのだけれど、その人は個人で獲得したみたい。 凄いわね・・だからこそ私もって・・ごめんなさいね」
中田のはにかむような笑顔を見ると、秋山は苦笑いをした。
◇
<ハヤト>
俺達に与えられた個室はパーテーションで区切られている。
一応、個人の空間が確保はされているということか。
3畳ほどだろうか。
寝るベッドとロッカー、小さな机のスペースがあった。
俺的には十分だ。
風呂やトイレは共用らしい。
俺はベッドでゴロンと横になり、これからのことを少し考えていた。
自分でも信じられないが、まさか本当に内閣調査隊に入ってしまうとは思ってもみなかった。
後悔はしていないが、結構不安な感覚がある。
明日は全員の身体測定があるという。
レベルなどが測定されるそうだ。
「ナビ・・いやベスタさん、俺のレベルってバレるかな?」
俺は頭で会話する。
『どうでしょうか・・わかりません。 ただ、誤魔化すことは可能かと思います』
!!
「ほ、ほんとに?」
俺は思わず身体を起こしていた。
『はい』
「でも、どうやって?」
『おそらくですが、相手のレベルがわかるスキルを持っている人が行うのでしょう。 自分のレベル以上の人はunknownとして表示されます。 ですから、ハヤト様が相手のレベル辺りの数値を表明すれば問題ないと思われます』
「あ! そうか・・なるほど・・相手がレベル22ならレベル23と言うわけか・・それなら問題なさそうだな」
俺は少しホッとした気がした。
まさか、かけ離れたレベルだとは誰も思いもしないだろう。
俺はまたまたベッドの横になり、天井を見ながら目を閉じる。
・・・
横の部屋の声だろうか。
何かボソボソという言葉が聞こえる。
はっきりと言葉がわかるわけではない。
・・うん・・そう・・でさぁ・・
・・
細切れに言葉が聞こえる。
誰かと話しているのか?
まぁ、どうでもいい。
◇
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