第45話 いったい何者?
このおっさん・・相手のレベルがわかるのか?
『ハヤト様、そういうスキルを持っていると思われます。 ただ、自分よりも上位者の把握はできないようですが・・』
ナビさん・・もとい、ベスタが教えてくれた。
俺は黙って鈴木を見ている。
「村上さん、まぁ内閣調査隊といっても難しいことはないのですが、入隊した後、1年は余程のことがない限り除隊することはできません。 それでよろしければ、手続きに入りますが、いいですか?」
俺は鈴木の言葉を聞きながら、少し
まさか、こんな簡単に物事が進むんだな、と。
一応身分もできるし、入隊テストみたいなものがあると考えていた。
それがただの軽い面接で終わってしまうとは・・。
そんな俺の反応を見て、山本1尉が微笑みながら教えてくれた。
「村上君・・
山本1尉はそういうと、また席へと戻っていった。
鈴木が俺を見つめて話し出す。
「村上さん、話を進めてもよろしいですか?」
「は、はい」
・・・
・・
それからは特に問題もなく手続きが進められ、俺は内閣調査隊に入隊することとなった。
ただ、入隊すると、東京で2カ月くらい基礎教育があるそうだ。
出発までに2週間くらい余裕があるという。
ある程度の人数が集まらないと教育できないらしい。
俺はそんな説明を聞き、事務所を後にした。
◇
<山本1尉と鈴木のいる事務所>
ドアがきちっと閉まるまで、山本が村上の背中を見送っていた。
その山本の横で鈴木が息を吐く。
「ふぅ・・山本さん、正直相当疲れましたよ」
鈴木はびっしりと汗をかいていた。
山本はニヤッとしながら肩をすくめる。
「鈴木君・・私もだよ。 彼・・村上君だったっけ? いったい何者なんだろうね。 不思議というより不気味だね」
「はい・・こんな世界になり、誰でもレベルを上げようとしていると思います。 途中で命を落とすものも多くいます。 我々の組織でも効率よくある程度まではレベルをアップできるようにしているつもりです。 ですが・・レベル20を超えるのはなかなか骨が折れるのです」
鈴木が苦笑しながら言葉を出していた。
「鈴木君・・我々も同じだよ。 ダンジョンなどという訳のわからない空間を攻略しながら個人の能力を上げる。 それがそのまま国の武力につながる。 銃火器なども個人の能力で、とてつもなく強化できる。 小銃がまるで艦砲射撃だよ。 それでも隊員のレベルを上げるのは、やはり20過ぎで頭打ちなんだ。 それが・・彼はワシでも見ることができなかった・・詳細を聞きたがったが、こんな逸材に逃げられてももったいないしね・・」
「はい・・全くその通りです。 彼は既に内閣調査隊の一員になったので、少しすれば東京で教育が待っています」
鈴木が笑いもせずに淡々と語る。
山本がそんな鈴木を見て不思議そうな顔をする。
「どうした鈴木君・・やはり気になるのかね?」
「・・はい・・レベルが上がれば暴走しますからね。 そうならないことを祈りますよ・・他国では自国民に核を打ち放つのですから」
その言葉を聞き、山本は苦い顔をする。
「あぁ・・全く・・な。 本来なら自国民を守るための武力装置が、自国民を攻撃したんだ。 我々の国は、さすがにそこまでできなかったようだが、怪しいものだよ。 権力者の好き勝手にできない世界になってしまったからね。 いや、今までの権力者というべきか・・新たな権力者が出てくるかな? ま、ワシのやることは変わらんがね」
山本はニヤッとすると自分の席に戻る。
山本は席に着き目を閉じる。
村上君か・・あの年齢で・・いや、年齢は関係ないな。
ワシなどはレベル23になるのには相当苦労した。
この半年余り、毎日寝る間も惜しんでダンジョン攻略の繰り返しだ。
亡くなった隊員もいる。
運が良かったと言えばそれまでだが、レベル20を超える隊員たちは、佐官クラスの人数よりも遥かに少ない。
全部隊合わせても1000人はいないだろう。
鈴木君のところも同じようなものだろう。
しかし・・いったいどうやって、しかも個人でレベル上げをしたのだろうか。
・・・
考えてもわからないな。
さて、我々の組織も急いで戦備を整えねばなるまい。
諸外国も躍起になっている。
まさか人の能力が国の運営を左右するとは、妙な世界になったものだ。
だが、日本はまだいい。
おとなしい民族性なのだろう。
個人が暴走する事案は、今のところ発生していない。
だからこそ諸外国からの侵入も防げているようなものだ。
・・・
・・
山本は腕を組んでいろいろと考えていた。
◇
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