第44話 入隊希望です
とにかく、俺は1人でも活動できるようになったということだ。
死ぬことはない。
死にそうになってもナビさん、いやベスタさんが勝手にスキルを使って俺を回復させてくれる。
もしかしたら、リザレクションみたいなものもあるのかもしれない。
本当にナビゲーションシステムを選択して良かったと思ったものだ。
さて、俺はいろいろと考えていたが、中田と同じように内閣調査隊に入隊してみようかと思っていた。
別に国防などに目覚めたわけじゃない。
人って本当に一人では生きていられないのかもしれない。
孤高を崇拝していた俺だが、幻想だったのか?
・・・
まぁ小難しいことはいいとして、取りあえず行動だ。
俺は内閣調査隊、募集事務所の前に来ていた。
ここは、自衛隊の地方連絡所などという呼称がある事務所だ。
内閣調査隊の隊員も募集している。
入り口のドアを開けて俺は入ってみる。
「いらっしゃーい、こんにちは~」
男の人の声が飛んで来た。
・・
軽いな。
声に続いて、事務所の奥の人が笑顔で立ち上がる。
自衛官の制服だ。
「ようこそ、地方連絡事務所へ。 ん? 君は・・自衛官を希望・・じゃないね」
おっさんと呼んでいいだろう、男の人が近づきながら話しかけてきた。
「え、あ、はい・・その・・内閣調査隊のことで伺いました」
俺は取りあえず要件を伝える。
・・・
・・
声をかけてきた男の人はうなずきながら笑顔は絶やさない。
「ん~、それは残念・・見た目がワシの息子くらいなので、自衛官という年齢ではなさそうだと思っただけだ。 気を悪くしないでくれ。 内閣調査隊希望だったね・・鈴木君」
「はい」
鈴木と呼ばれた人が立ち上がり、俺の方へ近づいて来た。
「ようこそいらっしゃいました。 内閣調査隊所属の鈴木といいます。 どうぞこちらへ」
鈴木という人に案内されて俺は席につく。
初めに声をかけてきたおっさんは、既に自分の机に戻っていた。
鈴木が俺を見つめている。
・・・
「えっと、まずお名前を頂戴してもよろしいですか?」
鈴木が言う。
「あ、はい・・村上といいます。 よ、よろしくお願いします」
鈴木は笑うこともなく淡々と話を進めて行く。
「村上さん、ここに来られたということは、内閣調査隊という組織が大体どういうところかご存知だということで、話を進めさせていただいてもよろしいですか?」
「え、あ、はい・・その・・確かレベルによってダンジョンを攻略したり、持ち帰った素材などを加工しているとか・・それに準公務員扱いになって身分も安定していると聞きますが・・」
俺は知っている情報を話してみた。
鈴木はゆっくりとうなずく。
「はい、その認識で間違いありません。 ただ、命を落とす場合もありますが、それもご了承いただいておりますか?」
俺は少し返答に迷ってしまった。
実際に命という言葉を聞くと、わかっていてもドキッとしてしまう。
「・・はい、そのつもりです」
鈴木はうなずく。
「了解しました。 内閣調査隊に入隊するには年齢は問いません。 その能力によって活動していただきます。 それで・・村上さんのレベルはいくつなのでしょうか?」
鈴木がニコリともせずに俺を見つめる。
「え、えっと・・私のレベルは20を少し過ぎた程度です・・」
鈴木が俺を見つめたまま言う。
「村上さん・・物事ははっきりとおっしゃってください。 曖昧な言葉は命を落とします」
「す、すみません・・えっと・・レベル22です」
俺は嘘をついた。
鈴木がスッと後ろを振り向いて言葉を出す。
「山本1尉、どうですか?」
俺が事務所に入ってきたときに声をかけてきたおっさんが立ち上がる。
「う~ん・・よくわからんな。 だが、村上君は本当のことは言ってないな・・深く詮索されるのは誰も好まないが・・ワシよりもレベルが高いのは間違いない」
その言葉を聞き、初めて鈴木の表情が崩れた。
目を大きくして、少し驚いたような表情を見せる。
「なるほど・・ということは、少なくともレベル24だということですね・・脅威です」
・・・
いきなり俺の嘘がバレたな。
鈴木は話を続ける。
「村上さん、あまり自分を過小評価し過ぎるのは、虚偽とみなされますよ。 まぁ、今は詳しくお聞きしませんが、入隊されたらどこかで知られることとなると思います」
鈴木が言葉を出している間に、山本1尉が近づいてきた。
「まぁ・・そう警戒しなさんな。 別に取って食おうってわけじゃない。 それだけのレベルがあるのなら、自衛官にならないか? あ、年齢制限があるからダメかも・・アッハッハッハ・・」
山本1尉が笑いながら俺の肩をポンポンと叩く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます