第40話 それぞれの動き
しかし、あのおじさんの横顔・・正直怖かった。
何て言うのかわからないが、本当の恐怖ってあんな風に静かなものかもしれない。
俺はそんなことを考えながら、中田と歩いていく。
それにしてもダンジョンで倒した魔物って、時間が経てば消えているよな。
ダンジョンが吸収しているということだろうか?
◇
<
静かに弓を構え、集中していた。
遠くを見つめて矢を放つ。
放たれた矢は光の航跡を描きつつ飛んで行く。
途中、5本に分かれて5体の魔物の頭にヒット!
頭に矢を受けた魔物は、そのままゆっくりと倒れた。
「よ、よーし、今だ残りの魔物を倒せ!」
1人の男の声で20人程の軽武装した人たちが突進していく。
大和が倒した魔物はレベル17。
残りの魔物もレベル16、17といったところだ。
後方支援という名目で、ダンジョンの攻略に協力している。
大和はレベル23になっていた。
大和のところに歩いてくる人がいる。
歳は30歳くらいだろうか。
精悍な体つきだが、その笑顔は優しい。
微笑みながら言葉をかけてきた。
「
「ありがとうございます、小隊長・・」
大和は口数少なく答える。
小隊長は苦笑しながら言葉を出す。
「フッフッフ・・日置さん、弓術家の癖なんでしょうか? いつも冷静ですね」
「い、いえ・・そんなことは・・」
大和は少し照れていた。
「私の部下たちも日置さんと一緒だと安心して活動できています。 この場でお礼を申し上げます」
何の躊躇もなく高校生だった女の子に、小隊長は頭を下げている。
「しょ、小隊長、やめてください。 私は当たり前のことをしているだけです。 それにあんな矢は技ではありません。 私のスキルの為せる代物です」
大和は本当にそう思っていた。
自分の技ではない。
この妙なレベルシステムの恩恵なのだと。
「日置さん、それをあなたの技というのでは・・いえ、これは余計なことでしたな。 さて、少し休憩したら出発いたします。 よろしくお願いします」
小隊長はそう告げると一礼し、大和のところを去る。
「はぁ・・嫌になるわね。 私の実力って低下してるんじゃないかしら・・こんなスキルに頼ってしまって・・」
『ヤマト様、決してそんなことはありません。 ヤマト様の基礎がなければ発現しなかったスキルだと思われます』
ナビシステムが答えていた。
「ありがとう、ナビちゃん」
ヤマトは自分のステータスを確認する。
ヤマト
レベル:23
HP :390/390
SP :378/394
力 :261
耐久 :376
敏捷 :440
技能 :442
運 :63
スキル:ナビゲーション9
狩人9
◇
<坂口恭二>
キョウジところにも国の調査隊に勧誘する職員が来ていた。
勧誘といっても、実際は強制に近い。
おそらく国もなりふり構っていられないのだろう。
他国の状況もよくわからない。
それに国という組織から見ればならず者連中の勢力拡大が憂鬱だった。
最近では頻繁に小さな衝突がある。
国としては、今までの居心地の良かった世界が忘れられないのだろう。
凛が少し責任を感じているようだった。
自分が友達とかに兄の自慢したのが悪かったのだろうか。
キョウジは優しく凛を慰める。
遅かれ早かれこうなっていただろうと。
微笑みながら凛の頭をキョウジが撫でる。
「凛、心配しなくていいよ。 お前のせいじゃない。 マタギのおっちゃんたちから兄ちゃんのことを知ったのかもしれない。 それに・・どのみち兄ちゃんも今の現状では限界を感じていたしな・・」
キョウジは実際そう思っていた。
自分1人では限界がある。
それにダンジョンと言っても、個人が利用できるところだけを攻略しているに過ぎない。
国などの大きな組織なら、もっと詳細な情報も集まっているだろう。
やはり人は1人では生きていけない種族らしい。
キョウジはつくづくそう思う。
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