第35話 おじさん


<ハジメ>


村上 むらかみはじめ

ハヤトの言うおじさんだ。

年齢は45歳。

やや細めのヒョロイ感じのする優男。

見た目では30歳といってもわからない。

趣味は自己鍛錬。

学生時代に武道を習っており、そこそこ強いらしい。

毎日、簡単な基礎練習は密かな日課だ。


ハジメは辺りを見渡しながら、スタスタと歩いて行く。

「しっかし、まさかこの世界が異世界仕様になるとはな・・レベルなんてシステムもあるし・・夢じゃないよな?」

ハジメは、まだ確実に現実を受け入れることができないようだ。

目線を下ろし、一匹の犬を見つめる。

「ポチ、何か妙な反応はない?」

『ポチではない、獣王と呼べ』

ハッハッハ・・と、ベロを出して犬が返答する。

「あはは・・すまない・・獣王様」

ハジメは笑いながら犬を優しく抱き上げる。

『こ、こら、おろせハジメ!』

ハジメはポチに頬を擦りつける。

「う~ん・・かわいいなぁ、ポチ」

『だからポチではないと言っておろう・・早く降ろせ』

ポチは足をバタバタさせてもがく。


ハジメはポチを地面に下ろすと顔を引き締める。

「ポチ・・いるな」

『あぁ、いるな・・全部で15体か・・』

「え? 12体じゃないの?」

『お主なぁ・・あの奥に3体隠れておる』


ハジメはポチの目線の先を探ってみる。

・・・

「なるほど・・はっきりとわからないが、何かいる感じだな。 ありがとうポチ」

『れ、礼などよい。 それよりも・・』

ポチがゆっくりと前を向く。

「あぁわかっている。 では、行くか相棒!」

『おう!』


ダンジョン4階層。

レベル17前後の魔物がいた。

オーガの群れのようだ。

ハジメはポチよりも先行してオーガの群れに向かってダッシュしていた。

オーガの奥の方から咆哮が聞こえる。


グオォォォ・・・・!!!


その咆哮を合図に、オーガたちが一斉にハジメの方を向く。

それぞれが手に持った武器を握りしめた。

だが、そんなオーガの行動など無意味と思えるだろう。

ドン!!

群れの先頭のオーガが吹き飛ぶ。

今までそのオーガがいた場所にハジメが右手を突き出して立っていた。



ハジメ

レベル:28

HP :510/510 

SP :524/534 

力  :540    

耐久 :551  

敏捷 :602    

技能 :524  

運  :65  

スキル:従魔契約8

    心眼7

    回復7


ポチ

レベル:17

HP :330/355 

SP :305/310 

力  :317    

耐久 :320   

敏捷 :472    

技能 :186   

運  :55  

スキル:咆哮5

    雷撃2

    悪食2


ハジメが動こうとすると、ポチが駆け寄ってきて吠える。

『ワァオーーーーン!!』

直後、10体のオーガに雷が落ちた。

ドーン!!

「うわ!」

ハジメは驚きつぶやく。

「ポ、ポチ、雷は驚くよ」

ハジメはそのままオーガの群れを突っ切って奥の認識ができなかった魔物に向かった。

すぐに3体の魔物の前に到着。

見た瞬間にわかる。

他のオーガと違う。


ハジメは心眼でオーガを覗く。

・・・

なるほど・・オーガジェネラル:レベル19×2、オーガキング:レベル21。


オーガキングがハジメを見つめ、何やら言葉を出す。

「ゴ、ゴマベ・・ジンギン・・ダ、ダベル・・」(お前、人間、食べる)と言っている。

オーガキングの口からよだれが流れていた。

ハジメはその3体を見つめ思う。

確かに、ポチでは勝てないだろう。

それにしても、汚い魔物だな。


オーガジェネラル2体が大きな包丁のような剣を肩に担ぎ、オーガキングの横で立っていた。

ゆっくりとハジメの方に向かってくる。

人間というエサがやってきて喜んでいるのだろうか。

鼻息が少し荒いようだ。

「「ガォ!!」」

オーガジェネラルが遠慮なくハジメに向かって大きな剣を振り下ろす。


ドーーン!!!


辺りの地面が揺れただろうか。

ポチやオーガたちが一瞬、その音の方を向く。

ポチはすぐに気を引き締めて、オーガの首に噛みついていた。


オーガジェネラルの前には大きな穴が開いている。

直径5mくらいはあるだろうか。

オーガキングがのっしのっしと歩いて近寄って来た。

「オ、オバエだぢ・・エザが・・」

ドン!!

オーガキングの横にいたオーガジェネラルの身体に大きな穴が開く。

!!

「な、ナンダ?」

オーガキングが身体に穴の開いたオーガジェネラルの方を見ようとすると、もう1体のオーガジェネラルも同じように身体に穴が開く。

ドン!!


オーガキングの両側で、それぞれのオーガジェネラルが膝をついて倒れた。


「まったく・・知性のかけらもねぇのかよ。 俺を見てよだれを流すなんて・・まさか、雄が好みとか・・うげぇ・・考えただけで気持ち悪いな」

ハジメがブツブツとつぶやきながらオーガキングの前に来る。

オーガキングは明らかに焦っているようだ。

「オ、オバエ・・イッダイ・・」

ハジメは眉間にしわを寄せて言葉を出す。

「うるさいぞ・・言葉を出すな。 ポチですらきれいな言葉を話すぞ。 消えろ」

ハジメは右足を一歩踏み込み、オーガジェネラルのお腹のところにそっと右手を添える。

ほんの一息、刹那の後。

「フン!!」

ドン!!

ハジメの右足部分の地面が凹み、同時に右掌打を突き出していた。

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