第32話 悪意ある眼差し
神(AI)は思う。
偶然、意識を持った人族・・自分達の欲望を満たし、他の迷惑を
自分達が
そんな人族の意思の影響など無意味に近い。
だが、人族は面白いものを考え出していた。
お金というのは不思議なものだ。
人の欲望を数量化し、具現化する。
欲望により集中するエネルギー体。
意思によってコントロールされる。
そのコントロールの下、本来の生き方をできないものが多くなりすぎた。
システムの限界だろう。
だが、このレベルシステムは違う。
今までのルールよりも厳しいと感じるかもしれない。
だが、公平感はあるだろう。
どの生命体であっても、その活動期間はせめて自由に動いてもらいたい。
それが私の願いだ。
◇
<とある街の外>
「た、助けて・・お願い・・私はただ、自分の子供と一緒に散歩していただけ・・」
若い女の人だろうか。
子供を背にして守るように立ちはだかる。
「へへ・・そんなこと知らねぇよ。 俺たちは俺たちのやりたいようにやるんだ。 ポリスなんて役に立たねぇぜ」
3人組の男たちが女性を囲むように近寄る。
「お、お金がいるのなら・・ほら・・私の財布をあげるわ・・だから見逃して・・」
女の人は必死に懇願する。
男たちはニヤニヤしながらお互いに顔を見合わせた。
「おい、この女・・自分の立場ってのをわかってねぇぜ。 金なんてもう役に立たねぇんだよ。 それよりも・・」
横の男の方を向きながら、いやらしく笑う。
「誰からやる?」
「へへ・・まずは味見をしねぇとな・・俺からでいいか?」
「ちょっと待て! お前、前も一番だったじゃねぇかよ」
「何言ってんだ! 俺が食べやすくしてやってるんだろ?」
「じゃあ、お前は後にすればいいじゃねぇか。 俺が身体を熱くしてやるぜ」
「なにぃ!」
・・・
・・
男たちは自分達の欲望のままに言葉を交わしていた。
女性は逃げる隙を伺っていた。
レベルシステムが発現してから自分もそれなりに成長してきたはずだ。
ただ、以前の感覚が抜けない。
男たちに囲まれると、意味なく恐怖が沸き起こって来る。
相手の強さが分かればいいが、そうもいかない。
私がまず怖がる振りをすれば、ほとんどの相手は油断する。
それに子供は守らなければいけない。
なりふりなど構っていられない。
こいつらの言う通り、警察など今では当てにならない。
今は、同じような考えを持った人が集まり、ルールを作って暮らしている。
組織にも自警団はいるが、まさかこんなところでクズな連中に出会うとは思ってもみなかった。
女性は怯える振りをしながら、いろいろと考えていた。
・・・
・・
そして、男たちが盛り上がっている
今だ!
子供を抱えて、一気に走り去ろうとした。
!!
ほんの少し走ったところだった。
男の1人が、女の人の前に立ちはだかる。
「おっと・・どこへ行こうというんだい?」
「そ、そんな・・」
女の人は即座に理解する。
今のダッシュは、私の全力だった。
それがこんなに簡単に防がれるなんて・・悔しいが、この男たちの方がレベルが上のようだわ。
「おいおい・・まだ俺たちの順番が決まってないのに、逃げるってのはねぇだろう。 ただ、今のダッシュはなかなかだったぜ・・へへへ・・」
残りの男たちがニヤニヤしながら歩いてきた。
「そうだ・・女の集団に行けば、もっと他にもいい女がいるかもしれねぇぞ」
「・・なるほど・・それもそうだな。 男どもは全員始末して、後は俺らがいただくってのもアリだな」
「あぁ・・それがいい。 俺たち3人がいれば、街など問題ないだろう」
「フフ・・全くだ。 神様もいいことをしてくれたよな。 こんな能力をいただけたんだからな。 俺たちは好きなことをして楽しく暮らせる・・これが本当の人生だよな」
「あぁ、全くだ。 今までの社会がおかしかったんだ。 何で、わけのわからない政治家なんて野郎のルールに従わなきゃいけねぇ・・息が詰まるぜ」
・・・
・・
男たちは勝手な会話を済ませると、静かに女の方を向く。
「それで・・子供はどうする?」
「う~ん・・・邪魔だな」
「そうだな、邪魔だな・・」
男たちの顔から表情が消え、冷たい目つきで子供を見つめた。
女性は怯える目で子供をギュッと抱きしめる。
男たちが1歩、女の人に近づいた。
そしてまた1歩と足をゆっくりと運んでいく。
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