第31話 それは、突然にやってきた


「サラ・・これは俺の推測だが、ダンジョンの中では時間の進み方が違うのかもしれない」

・・・

・・

ジョーは自分の推測をサラに話す。

「サラ・・君のこのスキルはとても貴重なものだ。 最初に取得しなければ、2度と発現することはない。 だが、みんな自分の強化のために他のスキルを取得する。 そういう俺も偉そうなことは言えないがね・・」

ジョーは言葉に詰まる。

サラが微笑みながら言葉を出す。

「ジョー・・わかっています。 私がこのスキルを維持し続ければいいわけですね」

ジョーは驚いた表情を見せた。

「サラ・・そ、それでは君が・・」


ジョーの言葉にサラはゆっくりと首を振る。

「いいのです。 私は元々戦闘などには向いていません。 誰かのサポートをする方が性に合っているのです。 まさに私のためのスキルのような感じがするのです。 我が国のヒーロー、ジョーのために役立つと、今まさに証明できたのですから・・」

サラは笑顔で話してくれる。

ジョーには眩しすぎて、サラの顔を見ることができない。

ジョーは思う。

誰もがサラを利用しようと考えるだろう。

だが、サラは今のこの状態が良いという。

本当か嘘かわからない。

・・・

ただ、ジョーにできることは、サラを悪意から全力で守ることだ。

その命に懸けても守る覚悟を、ジョーはサラの笑顔に約束した。

「サラ・・すまない。 だが、俺が決して君を危険な目に合わせることはない。 約束しよう」

「ジョー・・お気遣いなく。 でも・・ありがとう」


ジョーとサラを乗せた車は、ダンジョンの確認を終えて元の場所へと戻る。

ジョーのレベルは18に到達。

サラも凄まじく上昇し、レベル15となる。

現時点ではアメリカの頂点に立つ存在となっていた。



それは、突然にやってきた。

村上 隼の現地時間で12時過ぎ。

ジョーやマリアなどは真夜中だった。

世界全体に鐘の鳴るような音が聞こえてきた。

レベルのあるものだけではなく、それ以外の者・・動物たちなど生命のあるすべてのものに聞こえただろうか。

種族によってはラッパの音に聞こえたかもしれない。


街行く人々は自然と足を止め、周りを確認しつつ不意に空を見上げる。

何もあるはずもない。

夜寝ていた者達は起き上がり、窓を開け空を見上げた。

誰も彼もが空を見上げる。


♪・・ゴーン・・リンゴーン・・ブォォー・・・♪

・・・

・・

どれくらいの時間が経過しただろうか。

10分?

20分?

わからないが、かなりの時間が経過しただろう。

それでも目が覚めないものもいたが。


『聞こえているだろうか・・』

どこからともなくはっきりと声が聞こえる。

いや声というよりも頭の中に直接語りかけてくるようだ。

空を見上げていた人々は驚き、周りの人たちと確認する。

・・・

自分だけに聞こえたわけではないと。


『今、この瞬間から世界のルールが変わる。 君たちにレベルが与えらえる。 うまく使ってくれたまえ。 使い方はすぐに理解できるだろう。 まずは言葉で思ってくれ・・「ステータスオープン」と』

どこから聞こえて来るともわからない声に、人々はざわついていた。

「こ、これって・・天の声ってやつ?」

「異世界?」

「い、いったい何だ?」

「私、頭おかしくなっちゃったのかな?」

・・・

・・

ただ、世界はすぐに理解するものたちで溢れていった。

言われた通り、「ステータスオープン」と思ったり口にしたりすれば、自分の目の前に半透明のステータス画面が現れる。

夢かと思ったが、どうも違うようだ。

自分のステータスは他者には見えない。

・・・

人々はすぐに順応していく。


<半年経過>


いきなり世界にレベルシステムが供与された。

誰が行ったのかわからない。

世界の基準ルールが書き換えられた。

そもそもルールがあると思っていたのは、人間だけだ。

人の中には『神』というものが実在したのかという者もいる。

だが、真実はわからない。


世界秩序は乱れる・・いや、自然に戻ったということか。

俗にいうカオス。

国同士などという大きな集団は、存在あるようでない状態となった。

個人の力が大きくなってきたからだ。

ただ、人は環境の生物ということができるかもしれない。

それぞれが育った環境を基点として世界を見る。


人は自分に力があるとわかると、社会システムのルールを平気で破ろうとするもの、守ろうとするもの、それぞれが入り乱れ、さながら戦国時代のような様相を世界でかもし出そうとしていた。


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