第30話 ジョーの葛藤
サラの情報の地点に来た。
何もない岩場のヒルバレーだ。
「サラ、本当にこんなところにダンジョンなんてあるのかい?」
ジョーが聞く。
「はい、私のナビゲーションシステムが言うには、この辺りに入り口があるとか・・」
サラがそう言って手を前に出すと同時に景色が一変した。
!!
サラは驚いて辺りを見渡す。
先程まで日の光が降り注いでいたはずだ。
それが薄暗く、見えないわけではないが、妙な場所にいた。
横を見ると、ジョーもいる。
ジョーも驚いていた。
「こ、これは・・いったい?」
ジョーがサラの方を向いて引きつった顔を見せる。
「サラ・・これがダンジョンなのか?」
サラは首を振りながら、「わからない」という。
それはそうだろう。
誰もわかるはずもない。
ジョーは瞬時に理解する。
「なるほど・・サラの言う通りだな。 ダンジョンか・・まるでゲームのようだ」
ジョーは笑っていただろうか。
「さて・・サラ、これからどうなるのかわからないが、俺から離れないように」
ジョーはせめてもの役目だと感じたのかもしれない。
サラに対しては気丈に振舞おうとしていた。
そんなジョーの服の裾をサラが軽く引っ張っていた。
!
「どうしたんだい、サラ?」
「うん・・あの・・このダンジョンは4階層あって、各階層をクリアしていくと地上へ戻れるそうです・・その・・ナビゲーションシステムがそう言ってます」
ジョーは改めてサラを見つめる。
まさかナビゲーションシステムにこんな機能がついているとは思ってもみなかった。
だが、やはり案内以外に使い物にならないのかもしれないとも。
ジョーとサラはそれほど問題もなく1階層をクリア。
2階層に進むもよし、元の場所に戻るのもありだった。
「サラ、俺たちのレベルでどこまで進むことができるだろうか」
もはやジョーは疑ってはいない。
ナビゲーションシステムは単なる案内などではない。
レベルのあるものを適正に導いてくれるシステム。
そう認識していた。
だが、スキル枠が2つも占有される。
誰かが犠牲にならなければならないシステムなのだろう。
サラはそのことに気づいているのだろうか。
いや、きっと気づいているに違いない。
周りの期待に応える喜びをサラは知っている。
特に俺のような存在からの期待には応えてくれるだろう。
だが・・。
ジョーはかなりの葛藤を感じていた。
「ジョー、私たちのレベルでは3階層くらいまでは問題ないそうです」
サラが答える。
「そ、そうか・・ならば俺たちは3階層をクリアして元の場所に戻るとしよう」
ジョーの言葉にサラはうなずく。
・・・
・・
問題なく3階層をクリア。
そして、ナビゲーションシステムの言う通り、4階層をカウントして元の場所へと戻って来た。
ジョーは辺りを見渡す。
・・・
元のヒルバレーだ。
かなり長い時間、ダンジョンにいたようだが、まだ太陽がある。
ジョーはそう思いながら車に向かう。
車に乗り込み、エンジンをかけた。
モニターに表示される時計を見て驚く。
!!
「な、何?」
言葉を出しながら、サラの方を見る。
サラが不思議そうな顔でジョーを見つめていた。
ジョーは笑いながら話す。
「フフ・・サラ、車の時計を見てごらん」
サラは言われるままに確認する。
・・
特に驚いた表情をするでもなくジョーを見る。
「どうかしましたか、ジョー」
「え? い、いや・・アハハ・・サラ・・俺たちがここについた時の時刻を知っているかい?」
「いえ、知りません」
「そうか・・では、俺たちがここに到着した時間だが、14時12分だった」
ジョーの言葉にサラはうなずく。
「それで俺たちはダンジョンに向かったはずだ。 だが、今の時間を見てごらん?」
ジョーの言葉に従い、サラは時計を見た。
!!
「え? こ、これって・・私たちは、かなりの時間ダンジョンに入っていたような感じがするのですが・・」
サラの言葉にジョーはうなずく。
「そうだ。 俺の感覚でも半日くらいは経過していたと思っていた。 だが、この車の時計が狂っていなければ、今は14時45分だ」
ジョーはサラを見てうなずく。
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