第29話 それぞれの攻略
「ナビさん・・取りあえず見切りはできるわけだから、俺が余計な色気を出さなければ問題ないのだろう?」
『はい、その通りです』
「それに、俺にはナビという素晴らしいパートナーがいるじゃないか」
俺は本気でそう思っていた。
『ハ、ハヤト様・・こんなシステムの私にそんなお言葉を・・ありがとうございます。 私のすべてはハヤト様のものです』
ナビの全力の言葉を受け取る。
まぁ、実体はないのだが。
はぁ・・現実の女で、これほど俺のために気を使ってくれた女がいたか?
いなかったな。
常に友達以上彼氏未満、便利な男だったのだろうな。
モテないこともないが、モテることもない。
そして今や社会的にニッチな場所にいる。
出会う機会すらない。
決して自虐的になっているわけじゃない。
優しい言葉に弱くなっているだけだろう。
俺はナビの言葉に1人感動していた。
さて、休憩も終わりだな。
そろそろボス部屋を開けるか。
俺はゆっくりと立ち上がり、ボス部屋の扉を開ける。
◇
<
大和はレベル10になっていた。
民族性なのだろうか。
ナビゲーションシステムを単なるチュートリアルに捉えることをしないようだ。
スイスのマリアなどはすぐにスキルを取得して、自己強化につなげていた。
「ふぅ・・まさか、日本・・いえ、この世界にダンジョンがあるなんて・・いくら私がラノベなどを読まないといっても、毎日周りから聞かされているから理解できるけど・・」
大和はブツブツと言いながらダンジョンを進んで行く。
スキルに狩人というのがあった。
直感的にこれはいいと判断。
ナビゲーションシステムと合わせてMaxだが、この狩人のスキルには狩るための技が詰まっていた。
先のスキル、『集中』は集約される。
『大和様、敵が迫ってきています』
「ありがとう、ナビさん・・さて・・」
大和は迫ってくるであろう敵を意識する。
すると、不思議と敵が見えるような感じがする。
相手には気づかれていない。
その敵を把握すると、ロックオンするような感覚がある。
同時に3体くらいなら確保できる。
その魔物、オークに意識が集中する。
大和は静かに弓を
「ふぅ・・」
矢を放つと同時に、矢が3本に分かれて標的に向かっていく。
そして確実にロックオンした感覚のところに命中する。
『大和様、見事です』
「うん、ありがとう。 でも、これは技とは呼べないわね」
大和は自嘲気味につぶやく。
「後はこの階層のボスを倒すだけね」
『はい』
大和はナビの案内の下、ダンジョンを攻略していく。
ヤマト
レベル:10
HP :146/156
SP :143/173
力 :153
耐久 :155
敏捷 :181
技能 :195
運 :63
スキル:ナビゲーション6
狩人3
◇
<アメリカ>
アメリカでもダンジョンの攻略が進んでいた。
ダンジョン攻略の少し前、ジョーのところに集められた人たちに政府の人たちが説明。
最初の契約通り、スキルが発現すればナビゲーションシステムを解除しても構わないという内容だった。
レベル5くらいになると、最初のスキルが大体発現する。
この時に、全員ではないが、ナビゲーションシステムが発現することがある。
5名いた。
自分の行動により発現したスキルを取得し、それで残り枠がある人たちに取得してもらう。
結果、残り2名となった。
その2名のうち1人はレベルが上がると、すぐに自分のスキルに変換する。
契約だから仕方ない。
だが、1名、サラと呼ばれる少女だけは自分のスキルが1つしか発現していない。
残りはナビゲーションシステムになっていた。
ジョーが気の毒に思ったのだろうか、サラに優しく接してくれる。
サラも兄のように懐いていった。
「サラ、あまり気にしなくてもいいよ。 誰でもスキルは取得できる」
「はい」
「フフ・・素直なのはいいことだ。 だが、もっと効率の良いレベル上げがないものかな・・」
このジョーの言葉が発端だった。
サラが同じことを頭で繰り返した時だ。
サラもレベル8になっていた。
だが、他の連中もそうだが、レベルの上昇がほとんどない。
そんな時だった。
ナビゲーションシステムが教えてくれた。
そしてその情報をサラはジョーに伝える。
ジョーは驚いた。
まさかそんなことがあるとは。
だが、それならば納得がいく。
ナビゲーションシステムとは、その人を案内するのではなく、世界を案内するものではないのかと。
「サラ、この情報は誰にも言ってないのかい?」
「はい」
ジョーはゆっくりとうなずくと、サラと信用のできる行政官と話をした。
・・・
・・
「・・なるほど・・ジョーの考えに私も賛成だね」
「あぁ、だがサラに注目が行くと、サラに危険が及ぶ。 それにサラ自身が潰れるかもしれない」
「うむ。 それは私の方で調整しよう。 早速だが、サラの情報通りにダンジョンに入れるのか確認してもらいたい」
行政官はジョーに言う。
「わかっている。 俺とサラの2人で行ってみる」
ジョーはそう言うと、サラと一緒に出発した。
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