第29話 それぞれの攻略


「ナビさん・・取りあえず見切りはできるわけだから、俺が余計な色気を出さなければ問題ないのだろう?」

『はい、その通りです』

「それに、俺にはナビという素晴らしいパートナーがいるじゃないか」

俺は本気でそう思っていた。

『ハ、ハヤト様・・こんなシステムの私にそんなお言葉を・・ありがとうございます。 私のすべてはハヤト様のものです』

ナビの全力の言葉を受け取る。

まぁ、実体はないのだが。

はぁ・・現実の女で、これほど俺のために気を使ってくれた女がいたか?

いなかったな。

常に友達以上彼氏未満、便利な男だったのだろうな。

モテないこともないが、モテることもない。

そして今や社会的にニッチな場所にいる。

出会う機会すらない。

決して自虐的になっているわけじゃない。

優しい言葉に弱くなっているだけだろう。

俺はナビの言葉に1人感動していた。


さて、休憩も終わりだな。

そろそろボス部屋を開けるか。

俺はゆっくりと立ち上がり、ボス部屋の扉を開ける。


日置大和へきやまと


大和はレベル10になっていた。

民族性なのだろうか。

ナビゲーションシステムを単なるチュートリアルに捉えることをしないようだ。

スイスのマリアなどはすぐにスキルを取得して、自己強化につなげていた。

「ふぅ・・まさか、日本・・いえ、この世界にダンジョンがあるなんて・・いくら私がラノベなどを読まないといっても、毎日周りから聞かされているから理解できるけど・・」

大和はブツブツと言いながらダンジョンを進んで行く。

スキルに狩人というのがあった。

直感的にこれはいいと判断。

ナビゲーションシステムと合わせてMaxだが、この狩人のスキルには狩るための技が詰まっていた。

先のスキル、『集中』は集約される。


『大和様、敵が迫ってきています』

「ありがとう、ナビさん・・さて・・」

大和は迫ってくるであろう敵を意識する。

すると、不思議と敵が見えるような感じがする。

相手には気づかれていない。

その敵を把握すると、ロックオンするような感覚がある。

同時に3体くらいなら確保できる。

その魔物、オークに意識が集中する。

大和は静かに弓をつがえる。

「ふぅ・・」

矢を放つと同時に、矢が3本に分かれて標的に向かっていく。

そして確実にロックオンした感覚のところに命中する。


『大和様、見事です』

「うん、ありがとう。 でも、これは技とは呼べないわね」

大和は自嘲気味につぶやく。

「後はこの階層のボスを倒すだけね」

『はい』

大和はナビの案内の下、ダンジョンを攻略していく。


ヤマト

レベル:10

HP :146/156 

SP :143/173 

力  :153    

耐久 :155    

敏捷 :181    

技能 :195    

運  :63  

スキル:ナビゲーション6

    狩人3


<アメリカ>


アメリカでもダンジョンの攻略が進んでいた。


ダンジョン攻略の少し前、ジョーのところに集められた人たちに政府の人たちが説明。

最初の契約通り、スキルが発現すればナビゲーションシステムを解除しても構わないという内容だった。

レベル5くらいになると、最初のスキルが大体発現する。

この時に、全員ではないが、ナビゲーションシステムが発現することがある。

5名いた。

自分の行動により発現したスキルを取得し、それで残り枠がある人たちに取得してもらう。

結果、残り2名となった。

その2名のうち1人はレベルが上がると、すぐに自分のスキルに変換する。

契約だから仕方ない。

だが、1名、サラと呼ばれる少女だけは自分のスキルが1つしか発現していない。

残りはナビゲーションシステムになっていた。


ジョーが気の毒に思ったのだろうか、サラに優しく接してくれる。

サラも兄のように懐いていった。

「サラ、あまり気にしなくてもいいよ。 誰でもスキルは取得できる」

「はい」

「フフ・・素直なのはいいことだ。 だが、もっと効率の良いレベル上げがないものかな・・」

このジョーの言葉が発端だった。

サラが同じことを頭で繰り返した時だ。

サラもレベル8になっていた。

だが、他の連中もそうだが、レベルの上昇がほとんどない。

そんな時だった。

ナビゲーションシステムが教えてくれた。

そしてその情報をサラはジョーに伝える。


ジョーは驚いた。

まさかそんなことがあるとは。

だが、それならば納得がいく。

ナビゲーションシステムとは、その人を案内するのではなく、世界を案内するものではないのかと。

「サラ、この情報は誰にも言ってないのかい?」

「はい」

ジョーはゆっくりとうなずくと、サラと信用のできる行政官と話をした。

・・・

・・

「・・なるほど・・ジョーの考えに私も賛成だね」

「あぁ、だがサラに注目が行くと、サラに危険が及ぶ。 それにサラ自身が潰れるかもしれない」

「うむ。 それは私の方で調整しよう。 早速だが、サラの情報通りにダンジョンに入れるのか確認してもらいたい」

行政官はジョーに言う。

「わかっている。 俺とサラの2人で行ってみる」

ジョーはそう言うと、サラと一緒に出発した。

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