第25話 進化


鉈でコボルトハンターを横薙ぎにした。

ドン!

コボルトハンターは回避する素振りすら見せずに、鉈の振るう方向へ飛んで行く。

俺はそのまま動く速度を緩めずに、オークを躱し、もう1体のコボルトハンターに向かう。

オークは俺の動きに反応できていないようだ。

レベルも俺の方が上だしな。

コボルトハンターが急いで俺に矢を向けるが、間に合うはずもない。

俺は遠慮なく鉈を振り下ろす。

ドン!

コボルトハンターはそのまま地面に突っ伏した。

動く気配はない。


さて、後はオークだが・・。

俺は一呼吸する。

ふぅ・・。

オークは大きな包丁のようなものを持っている。

俺を見つめて、また叫ぶ。

グォォォォオオオ!


耳が痛いな。

オークが大きな包丁を振りかぶった。

俺はその隙にオークに向かって踏み込む。

そのまま鉈を水平に振るう。

ズバン!!

オークのわき腹にズンと鉈がめり込んだ。

ゲッ!

嫌な感覚だ・・気持ち悪い・・。

一瞬俺の頭に浮かぶ。


「ガァァァ・・」

オークが大きな包丁を振り上げたまま唸る。

ガラン・・。

そのまま大きな包丁が地面に落下。

どうやらオークに大ダメージを与えたようだ。

この感覚・・気持ち悪いが、慣れて行くしかないな。

そう思いつつ俺は行動を続ける。

鉈を引き抜くと、やや前かがみになっているオークの頭付近を叩きつける。

ドバン!

鉈と一緒にオークが地面に倒れる。

もう1度、オークの頭に鉈を振り下ろす。

おそらくそのままでもオークは動かないだろうが、念のため。

ドン!

・・・

オークの頭は完全につぶれている。

・・・

見ないようにしよう。


しばらくすると、俺の頭の中に声が聞こえた。

『レベルが上がりました』


「おぉ・・ナビさんの言う通りだな」

『はい』

そんなことを思っていると、部屋の奥の方でポワッと光の魔法陣が見えた。

どうやら2階層クリアのようだ。

さて、3階層に行ってから今日は帰るかな。

俺が少しボォーッとしていると、ナビが語りかけてくる。

『ハヤト様、3階層に向かわれないのですか? おそらく大丈夫と思われますよ』

・・・

ナビさん、積極的だな。

「ほ、ほんとか?」

俺も思わず答えてしまう。

『はい、問題ありません』

「う~ん・・どうしようかな・・身体的にはそれほど疲れてないが、精神的にしんどい感じがするんだよなぁ」

俺はそうつぶやきながら、そういえばステータスを見てないなと思った。


ステータスオープン。

ハヤト

レベル:12

HP :176/190 

SP :165/193 

力  :221    

耐久 :213   

敏捷 :252    

技能 :216   

運  :63   

スキル:ナビ10

    見切り9


おぉ、ナビさんは10になってるよ。

レベルアップするって言ってたよな?

『はい、スキルのところタッチしてみてください』

俺はナビに言われるままタッチする。

[ナビゲーションシステムを進化させますか?] と表示されている。

そりゃこれだけ役立つスキルだ、当然だろう。

俺は迷わずyesをタッチ。

すると、ナビの項目が『パートナー』に変化していた。


「パ、パートナー? どういうこと?」

『ハヤト様、ありがとうございます。 これで私はあなたの奥さんになりましたね』

ナビ、いやパートナーが語りかけてくる。

「いやいやナビさん、いやパートナーさん、頭の中だけの婚姻関係ですか?」

俺も思わずつられて言ってしまった。

『はい、そうなりますね』

「あはは・・でも、これからどう呼べばいいのかな? ナビで慣れてるからな・・」

『ハヤト様、ナビのままで構いません。 どうせ名称ですので』

「そ、そうか・・では、これからもよろしく頼むよ、ナビさん」

『はい、お任せを』

ナビは元気よく答えてくれた。


「ところで・・いったいどういった変化があったの?」

俺は聞いてみる。

『はい、今までのスキルがより高度になったかと思われます。 そもそもナビゲーションシステムを持ち続ける方がおられませんし、最初から装備しないといけません。 それに、レベルアップまで到達しないのではと推察いたします』

「・・あ、そう・・」

なるほど、いろいろと制約があるんだ。

「と、とにかく、便利になったということだね」

俺は大雑把にまとめてみた。

『はい、その考察で問題ないかと思われます。 それと、スキル枠が1つになりましたので、ハヤト様はもう1つスキルを取得することができます』

「え? えぇ~!!」

俺はそのことの方に驚いた。

「マ、マジかよ・・スキルって3つしか持てなかったよな。 もうMaxだと思って気にもしなかったが・・まさか、こんな仕様になっていたとは・・」

俺は正直、嬉しさよりも驚きの方で困惑している。

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