第23話 蠢動


一瞬で景色が変わる。

俺の足元には魔法陣があった。

1歩踏み出して、辺りを見渡す。

先ほどいた場所のようだ。

・・・

何の気配もない。

俺はここでステータスを確認しようと思った。

外で確認するよりも、時間を無駄に使わずに済む。

違うか?


ステータスオープン。


ハヤト

レベル:10

HP :126/126 

SP :105/121 

力  :165    

耐久 :147   

敏捷 :172    

技能 :149   

運  :62   

スキル:ナビ8

    見切り7


おお、かなり上がっているな。

俺は妙に感心する。

ん?

「ナビさん・・ナビさんのレベルが8ってなってるけど、10になるとどうなるの?」

俺は素朴な疑問を投げかけてみる。

『はい、私のレベルが上がります』

「そ、そりゃそうだろうけど、レベルが上がるとどうなるの?」

『お答えできません』

「は? どういうこと?」

『はい、詳しくはお答えできませんが、便利になると思われます』

「な、なるほど・・」

俺も詳しくは聞かないようにしよう。

何せ、ナビには助けてもらってばかりだからな。


さて、2階層を進もう。


<世界情勢>


アメリカの超人、ジョーの映像以降、世界は確実に変化していた。

当初、何のCMなんだとみんな思っていた。

だが、リアルで存在していることが確認されると、たちまち自国の中で調査が始まった。

中国などが良い例だ。

ロシアなどの大国も大きく動いているようだ。

ただ、諸外国に対する軍事的な威圧は不思議と少なくなっていた。


レベルの存在。

どういった具合に発現するのか、様々な憶測がネットなどで垂れ流されている。

すぐにその道の専門家なるものが出て来て、あることないことの論評を繰り返す。

アメリカなどもジョーを基点として、レベルのある人間を集めていたりした。

国がVIP待遇で扱うという。

それぞれと面接し、そのスキルについて調査していた。


「・・なるほど・・いろんなスキルがあるものだな」

政府関係者だろうか、うなずきながらメモを取っている。

「ジョー、君にもこのナビゲーションシステムというのはあったのかい?」

ジョーはこのレベル集団の長として招かれていた。

「あぁ、僕にもあったよ。 ただね・・自分のレベルが上がるとスキルが提示されるんだ。 そうなると、自分の好きなスキルを選ぶことができる。 そんな時にナビゲーションシステムのスキル枠は幅を取り過ぎる。 それに慣れてくるとナビゲーションなんて必要ないしね」

ジョーが微笑みながら答える。

「確かに・・今のところ、報告を見るとスキルと呼ばれるものは例外なく3つまでとなっている。 そのスキルも成長するようだ。 皆、自分に有利なスキルに変更するだろうな。 だが、何か引っかかるのだよ」

行政官が難しそうな顔をして言う。

「何が引っかかるんだい?」

「何というか・・うまく言葉にできないが、スキル枠3つのうち、2つも占有するのだろ? 何か謎があるんじゃないだろうか?」

行政官の言葉にジョーが鼻で笑う。

「フフン・・おっと失礼。 僕の場合には特に何もなかったね。 気になるようなら、誰かにそのスキルを維持してもらえばいい。 僕にはもう取得不可能だから」

「え? どういうことだい、ジョー」

「うむ・・スキルの中には、1度解除すると再取得できないものがあるのだよ。 ナビゲーションシステムはそれだね。 ただね、初心者のためのチュートリアルスキルだと思うんだ。 無駄に余計なスキルを取得させないための安全装置か何かじゃないかと考えているのだがね」

「う~ん・・・」

ジョーの言葉に行政官は唸っていた。


確かにジョーの言う通りかもしれない。

だが、何か大事なものを見失っている気がするのは考え過ぎか。

誰かにこの役割を担ってもらうしか、確認することができない。

行政官はそう考え、この場に集まっている人たちに個別に面接を行っていく。

・・・

・・

行政官はレベル上げを政府がバックアップすると約束する。

そして、政府と協力してくれる人物たちには、それなりの待遇を保証するという。

ただ、レベルシステムがよくわからない。

だから、少しの制約も伴うとも説明。

スキルのところでナビゲーションシステムなるものが表示される人がいると思う。

その人にはそのスキルを維持してもらいたいという。

成長に伴って、どうしても解除したいのならば、その時に解除してもらっても構わない。

スキルの枠は3つあるが、その2つをナビゲーションシステムが占有するらしい。


行政官の提案に、とにかく使用者主体の形で何人かと約束を取り付けた。

ただ、サラというおとなしそうな女の子だけは素直に従ってくれた。

だが、保険は多くかけておくに越したことはない。

結局、面接では37名のレベル持ちが残ることになった。

残らなかった者たちは、政府から安全保障上のためと称して、位置把握できるリストバンドのようなものを手渡されていた。

強制ではない。

だが、なるべく装着しておいてほしいというものだ。

もし、他国の悪意あるものに狙われた場合、救出に向かうことができるなどの言葉を並べていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る