第22話 なるほど、こうなっているんだ。


ゴブリンキングはやや赤みがかった身体をしている。

鬼とまではいかないが、その雰囲気はある。

「ギッギッギ」

他のゴブリンと同じような声を出しながら近づいてくる。

ある程度の距離になると、いきなり飛びかかって来た。

「うぉ!」

一瞬、俺はその動きに驚いたが、どうということはなかった。

ただ、ゴブリンキングが持っている武器が短剣ではなく、長い剣なので脅威ではある。

ゴブリンキングが大振りで剣を振るう。

・・・

遅い、遅すぎる。


俺は確実に剣を躱し、ゴブリンキングに鉈を振るった。

ドン!

ゴブリンキングにまともにヒット。

ゴブリンキングは鉈の振るった方向へ転がって行く。

1撃では倒せなかったようだ。

というか、軽く振るっただけだからな。


その間にゴブリンキングの横にいた2体のゴブリンを倒す。

こちらは余裕で倒せた。

その様子を見ていたゴブリンキングが顔をキョロキョロと動かしながら、またも剣を振り上げて向かってきた。

・・

こいつってバカなのか?

なんか、少し可哀想な気がするが、俺は剣を躱し、今度は思いっきり鉈を叩きつける。

ドゴン!!

ゴブリンキングの両腕から剣が離れ、地面に落ちる。

カラーンと金属音が鳴ったと思うと、ゴブリンキングが突っ伏して動かない。

俺はゆっくりと近づき、もう1度ゴブリンキングに鉈を叩き落す。

ドン!!


どうやら完全に仕留めたようだ。

『レベルが上がりました』

俺の頭の中に天の声が響く。

「ふぅ・・何とかなったな」

『おめでとうございます、ハヤト様。 1階層クリアですね』

「ありがとう、ナビ・・ん?」

俺は部屋の奥の方にポワッと光る場所を見つけた。

「あれは・・」

『ハヤト様、あれは基点ポイントですね。 触れると次の階層に進むことができます。 それにダンジョンの外に戻ることも可能です』

ナビが教えてくれる。

「なるほど・・ということは、次にダンジョンに入ると、2階層から進むことができるのか?」

俺はナビに聞いてみる。

『はい、進んだ階層であれば、どの階層からでも進行が可能となります』

「それは便利だな・・じゃあ、2階層に行ってダンジョンの外に出てみようかな」

俺はそう思い、基点ポイントのところまで近寄って行く。


何やらわけのわからない魔方陣が描かれて光っている。

「ナビ・・これに触れればいいわけだな」

『はい』

俺は魔法陣の中に入った。

入った瞬間に景色が変わる。

下を見ると、魔法陣があった。

俺は一歩踏み出してみる。

「ここは・・2階層か?」

『はい、その通りです、ハヤト様』

「なるほど・・それで後ろの魔法陣に触れると、外に出られるわけだな」

俺も何となくわかってきた。

『はい、そうなります』

本当に2階層から始められるか確認してみよう。

「よし、1度出てみるよ」

俺は魔法陣に入ってみる。

!!

1瞬で神社のやしろの裏側、初めにダンジョンに入った場所にいた。


俺は辺りを見渡す。

なるほど・・こういうシステムなんだ。

俺は無意識に携帯を取り出してみた。

時間を確認する癖だな。

!!

時間を見て驚いた。

確か入った時には8時15分くらいだったと思う。

今の時間は8時25分を表示していた。

「ナ、ナビ・・俺ってかなりの時間、ダンジョンにいたよな? まだ10分しか経過してないけど・・」

『はい、ダンジョンの中では時間の進み方が違います』

・・・

なんか、情報が後だし小出しだな。

大丈夫かな?

俺は少し不安になる。


『ハヤト様、主の不利になるようなことはいたしません』

ナビが勝手に答えてくれる。

・・・

俺に言葉はない。

だが、これなら安心というと変かもしれないが、時間を気にせずに行動できそうだ。

おっと、そういえばレベルが上がっていたんだ。

その前に、ナビに確認だ。

「ナビさん、俺のレベルでダンジョンを進むと、どれくらいの階層まで安全に行けそう?」

『そうですね・・3階層くらいまでは問題なく進めるかと思われます。 ただ油断は禁物ですが』

油断・・ね。

「ありがとう。 じゃあ、もう1度ダンジョンに入ってもらっていい?」

『はい、問題ありません。 では、手を前に出してください』

俺はナビの言われるままに手を出した。

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