第11話 マリア


俺はナビの言葉通り、イノシシに向かってダッシュ。

そのまま鉈を先ほどの刺さった部分に叩き込む。

ズバン!

イノシシの首の2/3位が斬れ、そのままゆっくりと倒れる。

「ブヒ、ブヒ、ブヒ」

残りのイノシシたちが明らかにざわついていた。

俺は遠慮なく残りのイノシシの1頭に斬りかかる。

イノシシは避ける感じがない。

というか、俺のスキルのおかげなのだろう。

俺以外の時間がゆっくりと流れているような感覚だ。


ドバン!!

1匹のイノシシの耳の後ろ辺りに鉈がヒット!

「ブヒィィ・・」

イノシシが声を上げるが、最後の方は弱々しい感じになる。

そのままヨロヨロと歩きながら、3mくらい進むと横倒しに倒れた。

俺は、最後の大きなイノシシに向かおうとしたが、どうやら逃げるようだ。

ウリボウも尻尾をフリフリしながら後をついて行っている。


俺は次の一歩を踏み出すのに戸惑ってしまった。

さすがにウリボウは気が引ける。

とりあえず、先程倒れたイノシシの方を向く。

足がビクビクとなりながら横たわっている。

イノシシに近づいて行き、そのまま鉈を振り下ろす。

ドバン!

イノシシは叫ぶでもなく、そのまま静かになって動かなくなった。


『レベルが上がりました』


頭の中に声が響く。

「あ・・」

俺は後ろを振り返る。

ウリボウを引き連れていたイノシシはいなくなっていた。


「ふぅ・・とにかく何とかなったな・・今日はもう帰ろう」

俺はそうつぶやくと、またも穴を掘る。

少し大きめに掘ると、イノシシを2頭、穴に放り込む。

これまた土を被せて、草と枯れ葉などをで覆っておく。

見た目には、周りの景色と変わらない。


さてと・・ステータスを確認。

いや、安全なところまで行ってからにしよう。

何が起こるかわからない。

俺はゆっくりと移動。

先程、腰かけた岩のところに到着。

岩の上に座り、ステータスを確認。


ハヤト

レベル:6

HP :75/90 

SP :59/87 

力  :92     

耐久 :78    

敏捷 :95     

技能 :94   

運  :62   

スキル:ナビ4

    見切り2


なるほど・・やはりレベルが1つアップするにしたがって、基礎能力が20くらい上がるようだ。

また明日もイノシシを倒すといいのだろうか。

俺がそう考えていると、ナビが語りかけてくる。

『ハヤト様、今度イノシシでレベルアップされようとしますと、おそらく7体くらいは必要かと思われます』

な、7体か・・多いな。

というか、遭遇できるかどうか・・それよりも誰かに気づかれる可能性もあるよな。

時間は15時30分。

・・・

俺は少し考えていたが、答えも浮かばないので取りあえず帰宅する。


<スイス>


スラリとした身体を地面に密着させ、顔を前方に向けライフルを構える。

長い髪を束ねたポニーテールが微動だにしない。

・・・

パン!

ライフルを構えたまま動いていない。

そして、またライフルの発射音が聞こえる。

パン!

「ふぅ・・」

ライフルを構えた人物が小さく息を吐く。

その背中に向けて声が飛ぶ。

「マリア・・さすがだな。 シュッツェンケーニッヒは伊達じゃないな」

双眼鏡を外しながら、マリアと呼ばれる女の子を見る。


女の子はゆっくりと立ち上がり、髪をサッと背中へと流す。

声をかけてきた男の人に微笑むと、ライフルを持ったまま立ち去って行く。

男は肩をすくめて苦笑いする。

「マリアはほんとにしゃべらないな。 ま、それが彼女たる所以ゆえんでもあるかな・・それにしても、また腕が上がったんじゃないか?」

男はそうつぶやくと、射撃場を後にした。

マリアが撃った標的。

黒点にほとんど重なるようにして3つの穴が開いていた。

400m離れた的に対する寝撃ち。

ほとんど神業に近い所業だ。


<マリア>


自宅に帰って来ていた。

ライフルを置き、ラフな格好に着替える。

冷蔵庫からミルクを取り出してコップに注ぐ。

ゆっくりと口に運び飲む。

「ふぅ・・」

椅子に座りコップをテーブルに置く。


ステータスオープン。

マリアがつぶやく。


マリア

レベル:3

HP :41/43 

SP :38/38 

力  :40     

耐久 :35     

敏捷 :42     

技能 :52    

運  :58  

スキル:索敵1

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