第10話 ブヒ?


「なぁナビ、どのスキルがいいのだろう?」

俺は素直に問いかけてみる。

『そうですね、詳しくはお答えできませんが、どのスキルも再取得は可能です』

なるほど・・神様も言っていたが、やってみなければわからないしな。

『隠蔽』は・・いや、今は基本の力が強くなりたい。

すると、『見切り』と『身体強化』だが・・。

『身体強化』のことを考えると、あのアメリカ人のような脳筋の映像が浮かぶ。

う~ん・・確かに人間を超えた強さを感じる。

だが、これを選ぶと後追いになる。

何か、悔しさじゃないが、妙なもやもや感がぬぐい切れない。

『見切り』

これは響きがいい。

日本人向けって感じがする。

俺の勝手な妄想だが。


当たらなければ、どうということはない!

誰かの台詞だったよな?

・・・

よし、『見切り』にしよう。

再取得も可能だとナビも言っているしな。

俺は『見切り』を取得。


見切り1と表示された。

なるほど。


時間は14時10分。


まだ暗くなるには時間もある。

普通に働いている社会人たちも帰宅時間には早すぎる。

軽く携帯食料と飲み物を飲む。

「ふぅ・・イノシシを後2匹くらいは倒しておきたいな。 ナビが言うにはレベルがもう1つ上がるそうだし・・」

俺はそう思うと、ゆっくりと移動を開始。


あ!

そういえば、ナビが探索スキルと重なるものがあると言っていたよな?

「ナビ、他のイノシシとかの居場所とかわかる?」

俺は安直に聞いてみる。

『はい、この周辺にはおりませんが、少し移動すれば遭遇できます』

「おぉ・・これは便利だな。 ナビって凄いな」

『はい、当然です』

なんか、神様のノリと同じような感じがするが・・放っておこう。


俺はナビの誘導に従って移動。

10分くらい移動しただろうか。

確かにイノシシと遭遇できた。

だが、何だこれ?

3頭のイノシシの背中が見える。

「ナビ・・3頭もいるけど、ヤバくね?」

『ハヤト様、問題ありません。 見切りスキルも取得されておりますし、楽勝です』

・・・

このナビ・・言葉が軽いぞ。

その軽さゆえに、逆に不安指数が上がるのだが。


俺はイノシシに気づかれないように様子を伺っている。

周囲を見渡してみたが、何本か登れそうな木がある。

今までの成功事例がある。

上からの攻撃が無難だろう。

!!

「ブヒ?」

「え?」

俺の足元にウリボウが尻尾をフリフリさせながら歩いている。

5匹いた。


ウリボウがブヒ、ブヒと言いながら大きなイノシシの方へ駆けて行く。

・・・

3匹の大きなイノシシのうちの1匹が俺の方に向く。

!!

目が合った!

こ、これって・・。

確か、イノシシに遭遇した時は後ろを向かずにゆっくりとあとずさればいいはずだ。

俺はそう思い、ゆっくりと後退する。

イノシシが後ろ足で土を蹴っている。

すると、いきなり俺に向かって突進してきた。

!!

「バ、バカか!」


俺は急いで周りを確認し、避けようと考えたが、目を逸らすことができない。

「こ、このぉ・・」

俺はイノシシを見つめている。

・・・

ん?

確か、突進してきていたはずだが。

初めの勢いに驚いたが、イノシシの動きがよく見える。

スローモーションとまではいかないが、時間がゆっくりと流れている感じがする。


これって死ぬ間際の・・そう思ったが、どうもそうではないようだ。

イノシシが俺の前に来た。

とにかく避けよう。

俺はイノシシをしっかりと見つめて、かわす。

!!

簡単にできたぞ。

『ハヤト様、それが見切りスキルです』

ナビが答えてくれる。


「なるほど」

俺は突進してきたイノシシを見ながら、右手でなたを掴む。

イノシシは機敏に方向を変え、またも俺に突っ込んでくる。

闘牛か!

そんな言葉が浮かぶが、俺は覚悟を決める。

イノシシを直前まで迎えると、サッと右へ避けた。

同時に鉈をイノシシの耳辺りに叩き込む。


ドン!


え?

イノシシに鉈が当たるが、そのまま鉈がイノシシにめり込んだ。

俺は慌てて鉈を引き抜く。

「ブヒィィィ・・」

イノシシが叫び声を上げながら、ヨロヨロと仲間の方へ歩いて行く。

『ハヤト様、とどめです』

・・

ナビが遠慮なく語りかけてくる。

怖いよ、ナビさん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る