第5話 レベル上げ
俺はこの1週間の間に考えていた。
自己鍛錬でも微妙にレベルは上がるが、俺よりも生命力がありそうな対象を倒せばいいのではないかと。
簡単に言葉を並べてみるが、そう簡単ではない。
まず人は対象にできないし、するつもりもない。
出た結論が、野生動物だ。
猿やイノシシ、鹿などだ。
俺の住んでいる地域には、害獣被害が多数上がっている。
狩猟するには免許が必要だが、山へ散歩程度に入るのは、特に許可が必要ということはない。
人が普段行かないような山を俺はいろいろ探していた。
動物の被害を良く聞き、散歩コースにもなっていないようなエリア。
ホームセンターで
弓かクロスボウが欲しいところだが、許可制になっていたと思う。
足がつくようなことはやめよう。
これからのことを考えるとなるべく目立ちたくない。
スリングショットは特に大きな規制はないようなので、ネットで購入。
俺は楽観的に考えていた。
◇
<山を散策中>
時間は8時40分。
俺は山の中を歩いている。
それほど深い山ではない。
しかし、この山のふもとでは、猿やイノシシの被害が頻繁に報告されている。
農家の人も、畑の周りにはそれなりに防御をしているようだが、それでもやられるという。
選んだのは近場の山だ。
冬はたまに山頂まで散歩したりもする。
200mくらいの山で、人もほとんど遭遇しない。
冬に登るのは、
自分のステータスを上げたい実験なので、完全装備で山の中を歩いている。
一向に動物と遭遇する気配がない。
まぁ、遭遇しても怖いし、あまり深く中へ入って行くのも遭難するかもしれない。
この辺りをウロウロするのがいいだろう。
ただ、遠くで猿の鳴き声だろう、キィ、キィという声が聞こえる。
その声を聞きながら、コケの生えた大きな岩の影から出ようとした。
!!
心臓がドキンとする。
少しだが痛みも感じたかもしれない。
イノシシだ。
目の端で捉える。
しかもでかい。
俺は一瞬身体が硬直したような感じがした。
声を出さず、息も殺してゆっくりと岩陰に引き返す。
岩を背に動かずにいた。
ま、まさか・・本当に出くわすとは。
スリングショットで石を当てれば何とかなるんじゃないか?
鉈で思いっ切り殴れば、何とかなるんじゃないか?
軽く考えていた。
・・・
無理だ。
この威圧感・・半端でない。
子供のイノシシなら何とかなったかもしれない。
だが、完全に親だろう。
2mくらいはあるんじゃないか?
ブヒブヒと鼻を鳴らしながら、地面を探っている。
風は特に吹いていない。
もし、こちらが風上だったなら、即アウトだっただろう。
・・・
俺が甘かった。
だが、今は動くことができない。
俺はただジッとして、イノシシが行き過ぎるのを待っていた。
なんて長い時間なんだ。
まだ1分も経過していない。
どうする?
移動するか?
いや、勘づかれたら逃げれない。
どこかイノシシが登れないようなところはないだろうか。
・・
やはり木に登るのが一番だな。
漫画なんかであるような、木に突進などはしないだろう。
俺は岩陰をゆっくりと移動し、近くの木に登る。
ロープを木に回し、両手で掴む。
自分の体重を後ろにかけて、ロープを張り合わせて、木こりが木を登るようにして登って行く。
子供の時に、こうやってよく遊んでいたので簡単に登ることができた。
枝のところに腰を下ろす。
プルルル・・・。
携帯が鳴った。
!!
俺はドキッとした。
電話のようだ。
急いで電話に出る。
『あ、もしもし・・坂本さんの電話ですか?』
『い、いえ、違いますが・・』
『あ、すみません、間違えました・・プツ』
・・・
こ、殺すぞ!
携帯を収納すると下を見る。
イノシシがブヒブヒと言いながら、ウロウロしている。
完全に俺に気づいているのだろう。
とにかく、このままやり過ごすしかない。
この高さならば、飛んでくることもないだろう。
安心はできないが、もしこの木が攻撃されれば、隣の木の枝に移ればいい。
何本かは同じような太さの木がある。
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