第3話 創られた世界


!!

『おめでとうございます』

すぐに頭の中に声が響く。

え?

俺は思わず辺りを見渡す。

テレビ画面を見た。

テレビはついていない。

な、なんだ?

『やぁ、やっと決めてくれたんだね』

・・・

俺は思わず自分のほっぺを張り飛ばしてみた。


パン!!


い、痛ったぁ・・痛いぞ。

なんだ、俺っておかしくなったのか?

妙な声が聞こえる。

『・・あのね・・君、何しているの?』

やはり頭の中に声が聞こえる。

「い、いや・・なんだ、これは・・声が・・聞こえるというか・・頭の中で響く・・」

俺は思わず言葉を出していた。

『うん。 当たり前だよ。 だって僕が話かけているんだもの』

「え?」

『あ、そうそう、声に出さなくても頭で思ってくれるだけで通じるから』

俺は改めて周囲を確認する。

・・・

俺の部屋だよな。

「異世界転移・・じゃないよな・・」

『フフフ・・あのね、そんな簡単に他世界へ行ってもらっては困るよ』

俺はふぅぅと息を吐き、取りあえず気持ちを落ち着かせようとした。


『なるほど・・君は順応性が早いんだね。 パニックにならなくて良かったよ』

「あ、あの・・もうやけくそなんですが・・この声って、神様ですか?」

俺は思わず聞いていた。

『うん、そうなるね。 まぁ正確には違うけど・・いや、違わないか・・う~ん・・説明してもいいものかどうか・・』


自称神様が説明してくれることには、この世界は創られた世界だという。

それは俺も驚かなかった。


簡単に言えば、神様も自分は何故生まれたのかわからないが、どうもこの世界を管理させられている、意思を持ったAIみたいなものらしい。

また、地球などのある宇宙エリアを担当している存在に過ぎないともいう。

たまに世界のバグを修正するために『天啓』と称して、管理下の人たちに話しかけるそうだ。

・・・・

・・・

・・

『・・とまぁ、そんな感じだね。 たまに君たちの中から話しかけてくることもあるけどね』

「え? こちらからの声も届くのですか?」

『無論だよ。 いろんな信号が届くよ。 全部情報になるけど、望みを叶えるなんてことは・・ないかな?』

・・

え?

今一瞬、間があったような。

つっこまない方がいいよな。


「あ、それよりも、どうして俺なんかが選ばれたのですか?」

俺は聞いてみた。

『偶然だね。 まぁ運が良かったのか悪かったのか・・そういうめぐり合わせとしか言えないね』

「な、なるほど・・それで、俺に使命なんてあるのですか?」

『ないよ。 さっきも言ったけど、ただ君は今のこの世界のルールから外れるだけなんだ。 他世界のシステムの導入実験みたいなものだよ』

自称神様ははっきりという。

「あの・・レベルって、まるで異世界のシステムじゃないですか」

『うん・・もし、その方が都合が良いようなら、システムを変更しようかと考えてもいるんだ』

「・・神様・・失礼ですが、軽いノリですね」

『いやぁ・・それほどでもないよ。 だって、物事なんてやってみなきゃ、わからないだろ』

確かにその通りです。

「神様・・本当に俺以外にいないんですか?』

『さ、さぁ・・まぁ、取りあえず生きてみてよ。 じゃあ、またね』

・・・

いるんだ・・俺の他にも。


取りあえず、自分の状態を見てみるか。

ステータスオープン。


ハヤト

レベル:2

HP :25/25 

SP :20/20 

力  :25     

耐久 :15     

敏捷 :18     

技能 :17    

運  :61   

スキル:未取得


う~ん・・レベル2って、完全に雑魚キャラだろうな。

SPって…あ、スキルポイントって言ってたな。

それにスキルって上限が3つだとか。

どんなスキルがあるのだろうか。

また、レベルアップするには、他の生命力を奪うか自己修練があるらしいが、基本ゲームのような仕様と理解した。

それに人を倒しても、それほどレベルが上がることはないみたいだし。

まぁ、人のレベルがそれほどでもないのだろう。

いろんな考えが浮かんでは消えて行った。

・・・

・・

さて、こんな面白い機能をもらったんだ。

目立たずに、人などが及びもしない領域に行きたい。


俺には元々、出世欲などはない。

世界征服なんて全く興味もない。

ただ、自分が強烈に強くなるのはうれしい感じがする。

人を見下すなんてことも気持ちのいいものではないしな。

どうせどこかで恨まれて、余計な事案が発生する。

逆に人助けなんてのも、あまり好きじゃない。

関わると、ロクなことにならないだろう。

・・・

・・

俺はいろいろと今後の進む方向を考えてみたが、はっきりとは決めれないし、定まらない。

ただ、自分を強くしようとだけは思っていた。


よし!

まずは寝よう。

明日から空いている時間は自己鍛錬だな。



<自称神様視点>


君が選ばれたのは偶然だが、偶然もでたらめじゃないんだ。

この世界のルールの中で発現する事象。

君はこの世界が仮想現実だと思うだけでなく、理解していた。

そして、それを何の抵抗もなく受け入れていた。

自分の命さえも、その流れの中にゆだねている。

そうかといって投げ出しているわけでもない。

このルールの中でしっかりと生きている。

・・・

それに、かつてこの世界は魔法で溢れていた。

どちらが良いのか、それとも共存か。

それは僕にもわからない。

人の時間は短い。

新しいルールシステムを人はどう受け取るのだろうか。


自称神様は眠っているハヤトを見つめると、フッと意識から消えて行く。


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