第12話……衛星アトラス
「あの辺りの地形がいいですかな?」
「へぇ、勉強になります」
山師の方に授業料を払い、鉱山として良さそうな地形を教えてもらう。コンピュータにあるデータだけでは物足らなかったためだ。
鉱山の総売り上げの3割を蛮王様に収めるために、全く儲けが出ない予想の開発計画。さらには、この惑星の方々は機械化を嫌うのだ。
頭でわかっても感情が付いて行かないのはだれにでもある。しばらく収益化には時間がかかるだろう。
ここは緑が美しい星だった。工業化もされておらず、小川の水は澄み、空気もきれいで夜の空は星のシャワーが降り注ぐ。いつかこんなところに別荘が欲しいな、と身分違いの夢を抱いてみた。
☆★☆★☆
……再び宇宙空間
――ドドドーン
「すごいポコ!」
「凄いですわ!」
何を褒めて貰っているかというと、射撃。
美味しいリンゴを見分けられるようになった眼力で、小惑星の脆いところを確実に認知。効率よく射撃することで、エネルギー効率の良い小惑星破壊の任務達成が可能になっていたのだ。
……セコくてすまん。
現在、惑星リーリヤの鉱山開発の為に、星間ギルドで大量の借金をしている。
儲かると思ったのが、そうはいかない現実、というかゲームの中……!?
苦手なシェリオ伯爵対策を蛮王様に頼んでいるとはいえ、コツコツ小惑星を壊さないと借入利息の返済が滞る今の現状は不味かった。
そうブツブツと一人事を言いながら、惑星リーリヤに帰還する途中。
「あれはなんでできているポコ?」
タヌキ軍曹殿が指さしたのは、惑星リーリヤの【衛星アトラス】だった。
「あっ、そうか」
衛星は惑星が分離した状態の物も多かったため、惑星に似た性質の衛星が多かった。
すぐに着陸し、簡易な地質を調査すると。
ビンゴ!!
空気も無く、氷に閉ざされた岩石衛星だったが、ミスリル鉱石などの含有率は惑星リーリヤのそれだった。
蛮王様に衛星を譲り受けたい旨を申し出ると、二つ返事でもう一つの【衛星ガリア】まで貰えることになった。わが【ハンニバル開発公社】の財政が悪いことに、申し訳ないと思ってくれているようだ。有難い。
早速、惑星リーリヤで従業員募集。
役所の入り口の横の路肩でのんびり待っていると、20名くらい来ていただけたので雇用契約した。
賃金は多め、何しろ何もない未知の衛星アトラスで働くのだ。
普通だったら嫌じゃないかな?
彼らの気持ちはさておき、皆を乗せてアトラスへ飛び立った。
☆★☆★☆
岩石衛星アトラス。
ここから見える惑星リーリヤは蒼く美しい星だが、アトラス自体は極寒の岩石でできた天体。現在、ここに生物はいない。
ここには氷は若干あるが、空気がない。生物には宇宙服が必要だった。
「じゃあ、ここに建てるポコ!」
タヌキ軍曹ことポコリーヌが、アトラスに建設予定の宇宙港予定地の真横の超一等地を指さす。
(指ではなく肉球かもしれないが……)。
彼との雇用契約には、私が私有地をもったら最初に彼の家の土地を確保する約束があったのだ。故郷に錦を飾るというやつだ。良い夢だ。まだ何もない土地だけどね。
☆★☆★☆
惑星リーリヤと違い、機械化に反対する住民もいなかったので、開発にどんどん機材を投入した。もちろん星間ギルドからの追加の借金にて……。
「食料生産プラントも欲しいですわね」
「工場プラントも欲しいポコ」
みんなで楽しく開発、箱庭状態。
てか、……借金が凄い額になってきたぞ。
そんなころ、一隻の壊れかけた宇宙船が、我がアトラスの小さな宇宙港に不時着しようとしていた。
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