第11話……目薬のプレゼント
ニコッと笑う老婆に尋ねる。
「あの、なんの御用ですか?」
「いや何、占ってやろうかと……」
自分の名前をどこで調べてきたのかは知らないが、大した用ではなさそうなのでどっと疲れがでた。
「いえ、間にあっています」
「まぁ、そういうな。何か望みはないかね?」
「えっと……じゃあ眼が良くなりたいかな!?」
私は小さいころから目が悪いのでそう答えた。
そして時間がかかりそうなので、テーブルに置いてあった紙幣をいくらか渡してその場は帰ってもらった。
☆★☆★☆
リアルの世界で目を覚ましたら、既に昼だった。
既に陽が高い。
うぇ……、飲みすぎで気持ちが悪い。
ゲームの中の二日酔いが、現実世界の体にも波及したようだ。
これって一種のVR酔いなのかな……。
風呂に入って、コンビニに行きシャケ弁当を買って家に戻る。
机の上で弁当を開けようとすると、
――ピンポーン
インターホンが鳴った。
……宅配便だった。
宅配便のお兄さんにお礼を言い、別れを告げた後に差出人を見る。
『VR・AVS』様。
聞き覚えがないと思ったら、いま遊んでいるゲーム会社からだった。
『当選おめでとうございます』
そう書かれた封を開けると、小さな目薬が入っていた。
確かにゲーム三昧で目が疲れていたところだ。
ご飯を食べた後に目薬を差すととても心地よかった。
ゲーム会社って案外気が利くのですね。
目薬を差した後、すぐにカプセルに入ってゲームに戻ることにした。
ぇ?……戻ることにした!?
なんか違う気がする。
でもまぁ……いっか、そろそろタヌキ軍曹殿とクリームヒルトさんが戻るころだった。
☆★☆★☆
惑星リーリヤの役所で、新しい資源会社設立の手続きをする。
いろいろと面倒くさいが、他にやってくれる人もいない。
しかも間違うのが怖い。
失敗しても、五月蠅くもフォローしてくれる上司はここにはいなかった。
皆を束ねる支店長ってやっぱり結構頑張っていたのだな、って今になって思う。
ちなみに会社名は『ハンニバル開発公社』とした。
この星の王様にも出資してもらう計画なので、きっと公社でいいだろう。
その後、港に戻り、海に浮かぶハンニバルの艦橋でのんびりしていると、二人が戻ってきた。
正直とても嬉しかった。
「ただいまです」
「帰ったポコ!」
二人はとても元気そうだった。
クリームヒルトさんは若干日に焼け、タヌキ軍曹殿は毛並みが良くなっているように見えた。
「お帰りなさい」
クリームヒルトさんは旅行先で、毛皮のコートをお土産に買ってきてくれた。
今被っている通訳用のマタギ熊帽子に毛皮のコートって、本当の雪国の狩猟の人みたいだよね。
「似合いますわ!」
「熊みたいポコ~」
この二人が喜んでくれるなら、もうなんでもいい気がした。
実際リアルでも、服なんて着られればなんでもいいしね。
「お土産ポコ、母上が新しい上司にキチンとゴマをすりなさいって」
正直なことで……。
タヌキ軍曹がくれた箱には沢山のリンゴが入っていた。
そう言えば彼の郷里は山の中とか言っていたよね。
「ひとつ剥きますね~」
「それはまだダメぇぇぇええ!!」
私はクリームヒルトさんの手をとって制し、違うリンゴを手渡した。
「こっちが美味しい気がする」
……まさしく眼がとても良くなった瞬間だった。
――天賦スキル
【羅針眼】を手に入れました。
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