第16話


「ん…」


 琴美の意識は、小さな息と共に覚醒を迎えた。

 それがなんでか日常の一コマであるように思えて、琴美は無意識に朝の習慣をなぞるため、普段目覚まし時計が置いてある方向に手を伸ばそうとする。


「え、あれ…」


 しかしそれも束の間、琴美は今、自分が日常とは縁もゆかりもない、ただならぬ状況に置かれていることを身に纏わりつく違和感によって察する。

 

(―――何も、見えない。それにこれは…拘束されてる?)


 まだ寝惚けていた頭も、危険な状況に晒されていると分かれば、事態を把握するために急速に回転を始める。

 眼は開いている筈だが、視界は闇に染まっている。恐らく、目元を布か何かで覆われているのだろう。そこに光が差し込む余地は一切ない。完全遮断だ。

 両腕は椅子の肘掛に、足元も頑丈な拘束器具によって固定され、全く自由が利かない状態。半ば反射的に身体を揺らし、拘束器具が外れないか試みるが、そんな生易しい奇跡が起きるはずもない。


(なんで―――)


 何故、このような状況に陥っているのか。そんな疑問が琴美の脳裏を掠めるが、その答えを見つけるまでにそう時間は掛からなかった。

 

(そうだ…私は、あいつに…透真に、嵌められて…)


 拘束されるに至った経緯を全て思い出した琴美は、ギッと強く歯を食いしばる。そこにあったのは、自分を騙した透真への恨みも勿論そうだが、それ以上に自身に対する怒りによるものが大きかった。極上の餌を目の前に吊り下げられ、まんまと相手の思惑通りに動かされた結果がこのざまだ。あまりにも情けない。

 きっと、あのカフェに立ち入った時点で何もかもが手遅れだったのだろう。そして透真は、反抗心を剥き出しにして無駄に足掻いていた琴美を、滑稽だと内心嘲弄していたに違いない。だって、今の琴美がそう感じるのだから。

 だが、今更何を悔やんだとて現状が変わるはずもない。一先ず、打てる手は打たなければ。


「―――あのっ、誰か! 誰かいませんか! お願いしますっ、助けて下さい! 誰か…」


 幸い、何故か口と耳と鼻に関しては制限されていなかったため、琴美は恥も外聞も捨てて精一杯の声量で叫んでみる。しかし残念なことに、元々大声を出すのが不得手な琴美の珍しい全力も虚しく、彼女の声は朝露のような儚さで霧散した。

 とは言え、その行動に全く意味がなかったわけではない。望んだ返事はなかったが、少なくとも新たな情報は手に入れられた。


(…小さい部屋だ)


 ―――琴美が囚われている場所。それを、声の反響具合から密閉された個室であると断ずる。厳密には小さい隙間があったりするのかも知れないが、大事なのは開けた場所ではないと言う点だ。

 これがもし、どこかの森奥にひっそりと佇む廃屋であったりするのであれば、可能性は薄いが救助が見込めた。だが、小さい個室となれば相手が計画的に用意した部屋である可能性が高い。そうだとすれば、外部の人間が琴美の存在に気付けるような場所や構造にはなっていないだろう。

 更に、あのカフェで琴美が最後に見た光景と照らし合わせれば、これは何らかの組織による犯行の可能性が高いと考えられる。であれば、万が一にこの部屋から抜け出せたとしても、直ぐに捕まるだろう。


 ―――詰み。

 

 そんな、逃げ場のない絶望を端的に表した言葉が琴美の脳裏を過ぎった。現状で拾える情報を全て拾い切って行き着いた先は、行き止まり、もしくは断崖絶壁と言ってもいいだろうか。


(私…これからどうなるんだろう)


 できることが何もないと悟った以上、琴美がやるべきは最早思考を巡らすことくらいしか残されていない。だが、一言に思考と言っても、琴美の頭には現況を打破する方法の模索ではなく、今後の憂いだとか、自己嫌悪に陥ったりだとか、そういう生産性の無い考えがばかりが浮かんでいた。

 しかし不思議と心が恐怖で満たされることはなかった。勿論、微塵も恐怖を感じていないと言えばそれは嘘になるが、それが発汗や身震などの症状として体外に現れたりはなかったのだ。意外にも肝が据わっていた自分に、最初こそ驚いていた琴美だったが、後にこれが人生に対する諦観や現実感の希薄さに由来するものだと気付くと、乾いた笑みを顔に貼り付けることしかできなくなった。


 それから体感で一時間が経過した頃だろうか。無意義な時間を過ごしていた琴美の耳がピクリと動き、何かの音を捉える。微音で聞き取りにくいが、視界が塞がれている分、聴覚はいつもより敏感だ。更に注意深く耳を澄ませてみると、この部屋のある方向に向かう靴音であると分かった。


「……」


 どうするべきか、琴美は一瞬逡巡したが、明確な答えが見つかる筈もなく、結局ただ待つことを選択した。下手に叫びでもして相手の機嫌を損ねると何か罰を食らうかもしれない。それは、嫌だった。

 そして、どんどん足音が近づきいよいよこの部屋の前を通過するというタイミングで、音はピタリと止まった。なんとなく予感していた通り、用があるのはこの部屋らしい。様子でも見に来たのだろうか。


「……」


 暗い視線を音のする方角に向け、更なる変化が訪れるのを固唾を飲んで待つ。

 自分をこんな場所に誘拐し、拘束した元凶が壁一枚を隔てた先に立っている。そう思うと、額に冷や汗がじわりと滲んだ。

 そんな琴美の心境を知る由もなく、ギィと甲高い金属音を立てながら、目の前にあるであろう鉄扉が開かれる。


「お早う御座います、天柊琴美さん」

「えっ…」


 琴美の耳に飛び込んできたのは、知らない女性の堅い挨拶だった。20代、もしくは30代辺りの若さが感じられる柔らかい声だ。来るなら透真だろうと勝手に思い込んでいた琴美は、意識外からの来訪者に虚を突かれ、間抜けな声を漏らす。


「あ、あの…貴方は?」

「私はただの記録係ですので琴美さんはお気になさらなくて結構です。そろそろボスがお見えになりますので、窮屈だとは思いますがこのままお待ち下さい」

「ボスって…月城透真のこと…? あ、いやそんなことより! この拘束は何なんですか! 私はこれから―――」

「お待ち下さい」

「…はい」


 静かな口調ではあったが、2度目のその言葉には強い威圧感が宿っていたように思えた。軽々しく名前を口に出したことが気に食わなかったのだろうか。情報収集の仕方があからさま過ぎたか。なんにせよ、彼女の態度から見るにこれ以上言葉を交わしてくれないと悟った琴美は、口を閉ざす他なかった。


(それにしても、記録…か)


 小さい個室で記録係がいる、と言われると、以前密かに見ていた刑事ドラマの取り調べの場面が思い出される。それぞれの立場に当て嵌めるなら、琴美は犯人側ということになるのだろうが、てんで納得出来ない。取り調べされるような事をした覚えなんて当然無いし、ここまで頑丈な拘束も意味不明だ。ならば、これから行われるのは一体────?


 ────ガチャリ。


 そこまで考えていると、再度扉が開かれる音が聞こえた。そしてそれと同時、琴美はかつて感じたことのない悪寒に襲われ、その身を震わせる。

 視界を潰された琴美にも伝わってくる程の悍ましい何かが、そこに佇んでいるような気がして。


「籠の中の鳥はお目覚めのようだな。よぉ琴美、気分はどうだ? 悪くないといいんだが」

「―――! 月城…透真…ッ!」


 眼前にいる人物が声を発した途端、琴美は極限まで高めた敵愾心を露わにする。その声質は、初めて会った時の気弱さを感じさせるものでは無く、琴美を貶めた時の底知れない闇を抱えていた透真のそれだった。


「やっぱり…貴方なんですね。こんなところに閉じ込めて、私をどうするつもりなんですか!?」

「朝っぱらからうるさいな。まずは落ち着けよ。でないと話もできん。取り敢えずコーヒーでも飲むか? あの後マスターが一杯だけでもいいから飲んで欲しかったってぼやいてたぞ」

「…ッ。誰が! 誰が貴方の仲間が淹れたコーヒーなんて…!」

「…そうか。実に残念だ。俺の知る限りじゃ、あいつが一番美味く作るんだがな」


 『仲間』と言う部分を否定も肯定もせず、透真は申し出を断られたことの方がさも重要であるかのように落胆の声を落とした。恐らく、琴美がその真実に気が付いたところで、どうにもできないと踏んでいるのだろう。そしてその琴美の無力さは、残酷なまでの事実だ。


「ボス、無駄話は大幅なタイムロスです。不測の事態に陥る前に、早く診察を始めた方がよろしいかと」

「おいおい口が過ぎるなぁ記録係。お前の仕事は俺に提言することだったか? もしそうなら俺の人選ミスだ。直ぐに別の人を呼ぶから帰っていいぞ」

「い、いえ、決してそのようなつもりは…! も、申し訳ございませんでした! 私如きが出過ぎた真似を…! ボスから賜った役割、この命に代えてでも果たさせて頂きます!」

「はっ。生まれたての子供でも出来る仕事に命賭けか、笑えるな。別に俺としてはお前らの命になぞ露程も興味はないが…。まぁいい、やりたいなら好きにしろ」

「は、はい…っ」


 何が行われるか分からない不安に怯える琴美をそっちのけに、透真は仲間であるはずの女性を粗暴な言葉で足蹴にする。

 透真よりも明らかに年上と思われる彼女が、彼に恐れ戦き、敬服している。耳で捉えたその情報だけでも、透真の異常性を理解するには十分だった。


 ―――こいつは、生半可な優しさなど持っていない、と。


「あぁそれと記録係。一つ訂正させろ。―――お前にとっては不測の事態だったとしても、俺にとっては全て予測の範囲内だ。分かったら無駄な心配に思考力を割くな」

「た、大変申し訳ございませんでした…!」

「ふん。―――じゃあ始めるぞ」


 ―――始める。透真が口にしたその合図の一言で、背筋が凍った。

 散々、訳の分からない状況が続いてきた。良く知りもしない男に話しかけられ、連れられたカフェにて毒に倒れ伏し、目が覚めれば幽囚の身になっていて。一体私は何に巻き込まれてしまったのだろう。彼女は『診察』と言っていたが、今から始まるのは本当にただの診察なのだろうか。いや、診察とは名ばかりの危害を加えられるに違いない。

 あぁもう嫌だ。なんで私ばっかり。怖い。誰か、助けて。誰か、お願い。誰か、誰か、誰か―――!


「通常バイタル―――脈拍、血圧、体温、呼吸、全て正常値。異種バイタルの方は…ふむ。不安と焦燥による波長の乱れ有り、数値は72まで上昇。剥離率5%。魂崩壊こんほうかい進行度ステージⅠ―――」

「あ、あの、一体何を―――」

「うるせぇ喋んな。診察って言ったのが聞こえなかったか? お前は病院で医者に診てもらう時、一々口を挟むのか? ノイズだからお前は患者として大人しく座ってればいいんだよ」

「……っ」


 源によって羅列される、何かしらの専門用語と思われる単語が琴美の恐怖心を煽り、思わず口を滑らせる。琴美は今この状況を把握することが最優先事項だが、それは彼らにとって知ったことではない。結局、この診察とやらが行われている間、透真の目的も、何が行われているのかすらも濁流に飲まれ、掴むことは叶わなかった。


「―――よし、診察はこれで終了」

「えっ…?」


 手を擦るようにして叩き合わせ、透真が仕事の区切りを伝える。その透真の仕草に意表を突かれたのは、琴美だった。


(終わった…?)


 直前まで透真が行っていた診察。そこで琴美に直接的な危害を加えるどころか、一切身体への接触が無かったことが、琴美には信じ難かった。これだけ厳重な拘束をしておいて、本当に『診られた』だけだったのだ。


「今、終わったと思って安心したな?」

「えっ、あっ…」

「ははっ。感情隠すが下手だな。まぁ別に隠しても意味は無いが。それと、そのまま安心もしてていい」

「何を…」


 透真の真意の底が見えない言葉に、琴美は泥沼に浸かったような気にされる。彼の言うことに惑わされてはいけない。直近の経験を通して、それは痛いほど味わってきた。だが、底なし沼とは無闇にもがいて脱出できるものではない。琴美は、余計彼の言葉に落ちている。


「―――おい、記録係」

「は、はいっ!」

「天柊琴美のバイタルサインは通常、異種ともに問題なしだ。計画はそのまま進めるとさっさと連中に報告してこい」

「イエス、ボス!」


 透真の命を受けた彼女は、高らかに返事をすると急ぎ足で部屋を飛び出した。扉が勢い良く開く音と閉じる音が間隔を開けて聞こえ、琴美は密室に透真と二人取り残されたという事実を認識する。


「さて、折角二人きりになれたが、やることも無いな。暇だし、質問コーナーでも開催するか。気になることは山ほどあるだろうから、何でも訊いてみてくれ。正し、内容は何であれ構わんが、時間制限は設けさせてもらう。そうだな…次に扉が開くまで、にするとしよう」

「…そんなこと言って、また適当にはぐらかすつもりでは無いんですか」

「はいはい、疑うのは勝手だけどその間にも時間が無くなってること忘れんなよ」

「そんなこと分かっています!」


 透真のペースには乗せられまいとして、琴美はささやかな抵抗を試みるが、彼の余裕ある態度を崩すには至らない。


「…強情だな。疲れないのかそれ。まぁなんでもいいが。…それで、質問はあるのか? ないのか?」

「────」


 聞きたい事の数は、それほど多くは無い。寧ろ情報が極端に限られた状況の中では、琴美の知るべきは最早1つしかないと言っても過言ではなかった。

 しかし、それでも琴美の口が即座に開かれなかったのは躊躇いが頭の中を駆け巡ったからだ。透真の口車に乗せられて質問をしてしまえば、それこそ相手の思う壷では無いのか。屈した事にならないか。いや、そもそもこうして悩んでいることさえ───。


(あぁ、もうどうしたらいいの!)


 両手が縛られていなければ、もしくは足が自由ならば、琴美はきっと頭を掻きむしるか地団駄を踏んでいただろう。透真の思惑通りにはなるのは腹の虫がおさまらない。だが、何をしても透真の掌の上のような気がしてならないこの状況下で、彼の虚を突くには、彼の深淵にも思える心の底を知る必要がある。だが、琴美にそれが出来ないのは、火を見るより明らかだ。

 だから琴美は、素直になる選択肢を取った。


「…私をここに連れてきた目的は?」

「当然、そう来るよな。だが折角勇気を出してくれたとこ申し訳ない。その質問に答えるのは今は時間の無駄だから控えさせてらう」

「…ほら、やっぱり。最初から何も答える気なんて―――」

「馬鹿過ぎて言葉も聞き取れないのか?俺は時間の無駄だって言ったんだ。裏を返せば条件が揃えばその質問の答えは自ずと出るってことだろ」

「そうですか。ならもうどうでもいいです。貴方の口先だけの言葉なんてもう信じてませんし。会話もこれで終わりです」


 思い返せば、透真は琴美の質問に一度も真面目に答えていない。鈴音の琴美に対する心の内を聞き出そうとした時だって、質問で返しては回答を先送りにされて、何も情報は得られなかった。そんな男に今更期待することなんてない。

 ────なんて言うのは、ただの虚勢だ。

 外面を虚飾で満たした琴美の内心は、今やたった一つの感情に押し潰されようとしていた。


「情報を集める絶好の機会だぞ?」

「……」

「本当に会話をする気はないか…。強情さもここまでくると一つの個性だな。いや、それとも案外…あぁ、やはりそうか。ははっ」


 何を思ったのか、唐突に透真が言葉を区切ったことで、部屋に刹那の静寂が訪れる。だが、琴美が静けさに気を休めることはなく、寧ろその胸裏にはより一層の緊張感が走った。その理由は、見えるはずのない視界の奥で、透真が狂気的な笑みを浮かべていたことだけがはっきりと感じられたからだ。


「────お前、俺が怖いんだな」

「なんで―――! …あっ」


 気付かれた。―――気付かれて、しまった。


「おぉ、今回は随分と素直だったじゃないか」


 自分は透真の心を知れないのに、彼は無遠慮にも琴美の中に入り、急所を抉ってくる。その理不尽さが、琴美の焦りを誘引し、口を滑らせた。

 恐怖は、感じてはいなかった。しかしそれは、この男が現れるまでの話だ。

 両手が縛られていなければ、もしくは足が自由ならば、琴美の全身は恐怖に戦き、その震えはやがて身体の芯まで凍らせていたに違いない。皮肉にも、琴美がここまで恐怖を隠し通せていたのは、自身を縛る忌々しいこの拘束器具のお陰であったのだ。

 だが、見破られてしまった。透真にそれを悟られると大変なことになる。その予感だけがあったから琴美はここまで必死に感情を押し殺していたのに。


「そうかそうか。お前が恐れてたのはこの状況そのものじゃなくて俺だったんだな。はは、可愛い所もあるじゃないか。やっぱ素の方がお似合いだぞ」

「やめて…下さい」

「さて、じゃあ涙ぐましい努力で隠そうとした心を見透かされてしまった哀れさに免じて、何でも一つ疑問を解消してあげよう。なに、授業料の心配は要らない。俺はお得意様に対するサービス精神は忘れないからな」

「お願い…お願いします。もうこれ以上…私の心に、入ってこないで…」


 極限状態の中、人は自分を騙すことでしか自分を助けることはできない。それなのに、打つ手なしの琴美に唯一残されていた自衛の手段はあっさりと砕かれてしまった。無理矢理心を剥き出しにされるのは、精神的な凌辱とも言える行いだ。それを受けた人間の限界なんて、たかが知れている。


「あ? おい。おいおいおい泣くなよ。俺、泣いた人間が口にする言葉全部嫌いなんだ。意思薄弱な発言を聞く時間程無駄なものはないからな。ほら、いいからさっさと疑問に思っていることを言え」

「疑問なんて…私には、何も…」

「いいや、あるはずだ。お前が言わないなら俺が言ってやろう。────例えば『何故こんなにも心が読まれるのか』とかな」

「────。どうせ、私が態度に出し過ぎているだけでしょう…」

「ふむ。客観的に自己分析できているのは良いことだ。確かにお前は必死に感情を隠そうとはするが、それを意識し過ぎるせいで表情を強張らせている節がある。それは自覚しているな?」

「…そうですね」


 透真の嫌味を含んだ言い方が鬱陶しいが、琴美にはもう不服を申し立てる程の心の余裕は無い。仮に、彼と正面切って対話をすることが恐怖を和らげることに繋がるのであれば、喜んでそうしていただろう。しかし、それがただの幻想に過ぎないのは、琴美にも分かりきっていることだ。


「だが、俺が視ているのはお前の表面では無い。どこか分かるか?」

「…分かりません」


 どこであろうと、もうどうでもいい。今更何を知ったところで―――


「―――魂だ」

「……は?」

「人が意識的に制御できない人体の最奥。不可侵の領域に鎖されている他人の魂を、俺は知覚することができる」


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めぐる世界のその先で みたらし男子 @mitarashidanshi

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