長崎はいつも雨②

  カンナ「中華街ってどう言ったものなんですの?」

 光音「多分、説明するより見てもらったほうがいいかも。」

 陸唯「わっしょーい!」

 光隆・信之「わっしょーい…?」

 陸唯「さぁて俺たちがどこに来てるかと申しますと、長崎県は長崎市、新地中華街に来ております!」


ーまた何か始まったー


 陸唯以外の頭にそんなテロップが浮かんだのも束の間、雨天の平日なのに思いの外賑やかな中華街の街中を彼らは歩く。


 陸唯「光隆!あれを見てみろ!」

 光隆「…」

 カンナ「ええええ⁉️」


 そこで彼らが目にしたものとは!?


 光隆「角煮まんじゅう?」

 陸唯「そうさ!世界で一番美味い饅頭はこの「角煮まんじゅう」だ!」

 カンナ「知っていますの陸唯?」

 陸唯「いや俺食った事ない」

 カンナ「」

 陸唯「雰囲気で言ってるけどこまけー事は良いんだよ」


 陸唯は最大限に気を配っていた。光隆をどうにか立ち直らせようと、到着前に調べていたのだ。

 その屋台へと光隆と光音は足を進める。人が多い為か、自然と光隆が傘をさす形になっていた。


 光音「角煮まんじゅう5個ください、聞いてますか?」

 店員「…」

 光隆「なに怒ってんだ?5つ下さい」

 店員A「あいよ!」

 光音「あ、ありがとう…」


 陸唯「買えたか?」

 光隆「あぁ、これで良かったか?」

 陸唯「早速食べよう、お前から取っていいぞ」

 光隆「分かった」


 陸唯は状況を察した。光隆が気を使うのは当の本人がナイーブになっている状態を示す、更に言えばナイーブになっている人間がもう1人身内に居る事も示していた。


 店員A「(何か、空気が饅頭食ってる)」

 店員B「(あれ、能力者なんじゃないの?)」

 店員A「(まじか…“ウニ様”に報告だな)」


 陸唯「なぁ、二人とも何か飲むか?」

 光隆「俺は能力があるし…」

 光音「陸唯の奢りなら、私は緑茶で」

 陸唯「お前には…うーん、分かった。信之とカンナはどうすんだ?」

 信之「奢らせるのは良くない、僕も買うよ。麦茶で」

 カンナ「お紅茶はありません事?」

 光隆「なら俺も緑茶」

 陸唯「わかった、後で興一さんに付けとくか」


 しかしながら、今回ばかりは難問だなとコンビニで物を選んでる最中に陸唯は悩んでいた。ここは思い切って、もっと光隆が楽しむような何かを考えるべきであると陸唯は思っていたがそれが何かは分からなかった。

 そんな最中、信之に話しかけられる。


 信之「坂の街、そこまで坂ですかね?」

 陸唯「山の斜面に作られた街よりは坂じゃなさそうだな…いや、待てよ」


 何かを思い付いたのか、会計を信之に押しつけて陸唯はとっとと光隆の元へと駆け寄る。

 

…………

 

 陸唯「ビルの上を全力疾走して先にグラバー園に着いた奴が勝ち、勝った奴にゃチーリンアイストリプルサイズ。一番遅かった奴チーリンアイス奢りな?」

 光隆・光音「?」

 陸唯「ほーらぼーっとしてると全員分奢りだぞ?」


グラバー杯

レース場:長崎市街地・諏訪神社~グラバー園・屋根上2500メートル(直線距離)

馬場:稍重

特別出場:相浦光隆・松浦光音・諫早陸唯

一等有償:チーリンアイストリプルサイズ


開始早々飛び出したのは諫早陸唯、その後ろを光隆が進む。

光音は少々出遅れる、おっと光隆が滑落!されど水流噴進で一気に飛んだ!

陸唯後ろを伺ってるおーっと光隆が五階楼の壁を蹴り勝負に出る

光音は出島の上空を通過


光隆と陸唯の熾烈なデットヒート、残り1000!


ここから一気にレースが動きます、路面電車で傍観していたカンナと信之がこれは…遭難に備えて買っていた防寒用アルミシートを魔法の絨毯にして空を飛ぶ⁉️これはどういう事でしょう

魔法を使ったショートカット、2人の脚質に合っています。


先頭集団、光隆と陸唯はグラバー園へと続く坂に居た。

残り400、陸唯一気に飛翔!


「これで決めてやる!!」


陸唯吼える!陸唯吼える!一気に空を飛んだ!!


「負けるかぁぁぁ!!」


空いた先頭、恐ろしい末脚で光隆が詰める


「チェストォォォォォ!!」


おーっとここで光音が山手大外一気に迫ってくるぞ!!


熾烈なデットヒート、制したのは…


噴水に追突、光隆がグラバー杯を制しました‼️


グラバー杯を制したのは相浦光隆、これは凄いレースでした。

しかし光隆、彼は大丈夫ですかね?

そこに心配して光音が舞い降りる、陸唯も息を荒げながらもめり込んでる光隆を救出


後ろからアルミシートで信之とカンナが

ここでカンナの治癒魔法


………


 こういち「君たち何してんだよ」

 5人「すみません…」


 下手をしたら大事故確定の3人の行動に先生として本気で怒らねばならなかった。故に5人に平等に拳骨を振り下ろしたのだ。

 しかし光隆と光音の表情は少し明るくなっていた。


 陸唯「こいつを励まそうと思って」

 光隆「ありがとう、楽しかったぜ」

 光音「光隆と陸唯に勝てなきゃ、姉さんにも勝てないだろうなって思って…」

 信之「僕は止めたんですからね」

 カンナ「完全に巻き込まれましたわ…」


 頭にたんこぶをつくる5人、呆れ果てる興一。されどそこに、全員分のチーリンアイスを持って掛瑠と有理が現れた。


 掛瑠「興一さん、持ってきまし…あ、お帰りなさい」

 有理「なーんでこんなに早く買いに行かせたかって、こういう事だったのね。さ、溶けないうちにどうぞ」


 長崎港を見渡せる庭園、五月雨と深まる緑のこの季節、まだ風鈴がなる事はないものの来たる夏を先に感じられた。


……………

……


  光隆「ごちそうさまでした!」


 フロアに元気な声が響く。ここは五階楼、ちゃんぽんの起源とされる名店だ。

 彼は入学以降、とりわけ5月に入ってから幾度かそれを食べているが、起源となった店で食べるのはさぞかし美味であろう。


 こういち「明日には出港できそうだな…」


 端末を見ながら彼らの師、弓張興一は零す。


 こういち「もう暫くはこの町に帰って来れない、みんな…最後に何を見たい?」

 カンナ「長崎…長崎といえば」

 光音「あぁ、あれ!稲佐山からの夜景ね?」

 カンナ「何万ドルの夜景とか言われているそれ、実際にその価値があるのかこの私が直々に査定してやりますの」

 光隆「いいな、行こうぜ!」

 こういち「わかった、すぐに車を手配しよう」


 端末から誰かと話している様子が伺える。その間に興一から預かったカードでここの会計を行なった。


 メイド長「ご機嫌麗しゅうございます、興一おぼっちゃま。」

 こういち「何で君が?」

 メイド長「都姫様からの御使いで、新地中華街の調査を行っておりました。買い出しも担当しておりまして…」

 こういち「何を買ったんだい?」

 メイド長「こちら、国産キクラゲでございます。都姫様がどうしてもちゃんぽんに入れて食べたいと仰られたので。おぼっちゃま、そして皆様…舌を噛まないよう心掛け下さいまし。」

 こういち「おいまさか…みんな何かに掴まれ!」


 言った瞬間には遅かった。長崎の大型客船の桟橋から長崎駅へ向かう、メインストリートを車が走る。雨の日にも関わらず急発進と急ブレーキを繰り返す運転の荒さは、可憐な面相に反していると言うしかない。

 さらに車は橋を渡り、稲佐山の登り道へと急ぐ。


 こういち「現メイド長、峠を攻める人なんだ!ヤバい」

 陸唯「うわぁぁぁぁ!」

 カンナ「何なんですの何なんですの!」

 チョウナ「外国の!要人!載せてるのに!」

 掛瑠「それ自分で…アイテッ!!」

 有理「」アワアワ


 車内は峠に入った途端、阿鼻叫喚と化した。全力で峠を攻め、ドリフトや急ブレーキなど多彩なテクニックで最高速で彼らを稲佐山へと誘った。


 光音「すごい!」

 光隆「たーのしー!」

 陸唯「何でお前らそんな余裕があるんだよ!」

 信之「…」←無我の境地

 陸唯「お前勝手に悟りを開こうとするな!」


 山育ちだからか、信之は苦手ながらも独自の回避法を見出していた様だ。いつの間にか雲が近い。車は稲佐山のライブステージのある8合目の広場に迫っていた。

 

 光隆「ついたぞ!!」

 光音「ここが稲佐山…」

 こういち「ここからスロープカーで山頂まで行けるんだ。」


 8合目から山頂に至るスロープカーが出ていて、約7分の天空の旅ではあるが長崎の絶景を楽しむことが出来る。

 スロープカーはあたり一面の絶景を楽しめる様に窓が広く撮られており、眼窩に広がる長崎の夜景を楽しめる。


 光隆「こいつ、動くぞ!」


 歩くよりも少し早い速度で、空の旅が始まった。濃い霧の中、森の上をゆっくりと。


 森を抜け、稜線に入る。カーブの直前からその眼窩に“1万ドルの夜景”とも称される長崎の夜景か姿を現す。


 有理「わぁ…!」

 光音「まるで宝石みたい」


 煌びやかな夜景、濃ゆい霧がその神秘性を高めているように思える。幻想的な風景が、彼らの前に広がっている。


………


 山頂、スロープカー乗り場から降りて少し歩くと3本の電波塔と1本の円筒形の展望台が見える。一面霧に包まれているその姿、そして展望台から見えるその夜景は神々の領域に来てしまったのかと錯覚させる。


 カンナ「見くびっていましたわ。1万ドルは安すぎます…この街を1000万ドルで買いたいですの」

 チョウナ「いやうちそんな総資産ないから」

 こういち「うちでも長崎市一帯を買うだけの余裕はないかなぁ…」

 掛瑠「次元が違う、リッチ過ぎる話するの辞めてくれません…?」

 陸唯「(掛瑠がツッコミを…?俺の負担減るかな)」


 掛瑠「得るまでが美しく感じるけど、得たらその特別さを感じなくなるような気がするんです。」

 陸唯「(こいつ…明後日の方向にマジレスしよった!!)」

 掛瑠「…釈迦に説法でしたか?」

 こういち「いいや、その通りだと思うよ」


 そんな哲学的な問いを行ってる最中、信之は凍えていた。幾ら雪国育ちの彼とは言え、厚着をしていたから耐えられたのだがこの日は一応初夏。なのにここまでの強風と雨と霧には、流石に薄手の服しか着てこなかった信之は根をあげた。


 信之「流石に…冷えないかな?」

 掛瑠「ですね、兄さん達先行っちゃいましたし展望塔に入りましょう。」

 有理「私カフェラテ飲みたい!」


………


  光隆「にしてもすげぇよな、海で発生した湿った風が稲佐山にぶつかってこんなすげぇ霧が出来るんだぜ。」

 光音「なるほど…」


 母の形見の白い白衣の中に、光隆のシャツを着た光音は全然寒いとも思っていない光隆の、稲佐山の小噺を聞いていた。


 光隆「にしても光音、冷えてないか?」

 光音「(こういう時に限って…)少し、寒いかな。でも抹茶スコーン、美味しそう…」

 光隆「ミルクティーも買うから、一緒に食べようぜ」


 二人は先に展望塔の中に入り、売店でお茶とスイーツを購入した。お茶にお茶、割ととんちきな組み合わせであるが思いの外美味であった。


 店員A→ロベール・シモレ「(例の子供だ…)店長、俺ら」

 店員B→フレーべ・ヒズナマス「休憩入って良いですか?」

 「つたっく、2人揃って?しゃーなしだな、時間も時間だし行ってこい」


 光音「そんな…」


 この世には、知らなかった方が良い事も思いの外あるのだろうか。ともあれ、少年少女らに危険が迫っているのは変わりなかった。


 光音「掛瑠、」

 掛瑠「何ですか?」

 光音「光隆が危険になった時、貴方も居てくれたら助かる」

 掛瑠「何ですか藪から棒に…?」


 光音は有無も言わせず掛瑠に圧縮空間筒からあるものを取り出し、掛瑠に手渡す。


 掛瑠「これは…」


………


 馬鹿と煙は高いところが好き、そう言う諺かある通り雨と強風の中光隆は展望塔の頂上を制覇していた。


 光隆「あーなーたーはーそーこーにーいーまーすーかー!!」

 光音「長崎市民同化してどうするの…?」

 光隆「いや、ただ叫んでみただけだ!」

 光音「う、うん。でも登頂は成功したね。もう戻ろう?」

 光隆「んにゃ、まだここにいたい。この霧は、海から運ばれて来たからな。光音は戻ってなよ」


 光隆の気遣いが身に染みた。だがそれと同時にここまで海が好きな光隆にいつもの事とは言え、少し困惑していた。


………


 光音「光隆遅い…」


 再び光音は屋上への扉を開ける。するとそこには、キマイラマトンに乗せられてゆく光隆の姿があった。


 ロベール「…と言う事でね、光隆くん。お父さんを助ける為に君の力が必要なのだよ。」

 フレーべ「だから、私たちと来てくれる?」


 光音「光隆…?」

 光隆「ちょっと、父さんの所行って来るよ」

 光音「光隆!?」


 光隆が攫われてゆく。だがここで能力を使ったら重要な社会インフラである電波塔すらも破壊しかねない。


 光音「どうしよう、光隆が拉致された…」


 だが光音の行動は焦りながらも的確であった。先に興一に事態を連絡、次に屋上に掛瑠を呼びつける。


 掛瑠「なるほど、1番執念深いと思われてたか…。兄さんを必ず助ける、だから興一さんやみんなを連れてオーバーカムに戻って。後は…」

 光音「分かったよ、ここでLA15を使う訳にも行かないから。」


 展望台屋内の螺旋スロープを駆け降りる光音。興一らを見つけた瞬間、光隆が攫われた事を説明する。直後に目の前で轟音を轟かせて何かが飛んでいった。


 こういち「キマイラオート…!」

 陸唯「何処に隠し持ってた、てか誰が犯人だ?」

 光音「ここの売店の店員、光隆を追ってたみたい。国防軍の黒服だって偽って、お父さんのピンチだって騙されて行っちゃった。」

 こういち「なぜ交戦しなかった?」

 光音「電波塔を壊しちゃうから」


 こういち「愚直か君も…姉に負担を掛けたくないからだな。こんな事もあろうかとメイド長に車をすぐそこまで運んで貰ってる。」

 陸唯「また坂を降りるんですか?掛瑠が居たって間に合わない」

 こういち「直で山麓の桟橋に向かう、後は分かるな?」


 霧と強風の稲佐山頂、それでも車へと飛び乗る。友の、教え子のピンチに行くしかないのだ。


 陸唯「直で桟橋行くって、飛び降りるのかよぉぉぉぉ!!」


 興一の能力を持ってすれば、事故とも見えるショートカットを五体満足に成し得る。長らく東京のランドマークを務める紅色の電波塔の頂点に匹敵する高さから海面へと、時速200km超えの速度で踏み切り台を超えた。


………


 掛瑠「キマイラオート…可哀想に、家畜とは言え愛情を以って育てられた先でこんな事になるなんて。」


 掛瑠は先刻、光音から渡され両腕に付けた武器を構える。44式腕部拡張機動防楯、スイギョーザと言う開発コードで進められた海護財団の海兵向け装備だ。

 

 掛瑠「ただ犯罪に使われるよりも、人の為になったほうが…否、よそうか。」


 口調は至って冷静、されど最愛の兄に危害を加える存在への敵意は留まることを知らない。


 掛瑠「行け」


 ロケットパンチ、男の子が一度はハマるロボットアニメの装備である。それが遷音速で飛ぶキマイラオートを捕らえた。


 掛瑠「借ります、貴方の身体」


 ロケットパンチが刺さったその場所から、ツララが伸びてロケットパンチを覆う。繋がれたワイヤーが伸び、掛瑠が巻き上げられる勢いで空を飛んだ。

 

 掛瑠「…ッ!」


 フレーべ「え、一つ乗っ取られた」

 ロベール「何だと?」


 ロケットパンチからエアバックが作動、衝突の衝撃を緩和して切り離される。掛瑠がキマイラオートの背中にしがみつくと、すぐにそのコントロールを受け入れた。


 掛瑠「兄さんを返せぇぇぇ!!」


 キマイラオートを同化した掛瑠は猛スピードでロベールらを追う。本来動体視力が悪いはずの彼が追随できているのは、単に同化により感覚神経が繋がっており掛瑠の乗るキマイラオートが見ているものと同じものを見れるからだ。


 ロベール「ちょこざいな…」

 フレーべ「迎撃する、みんなお願い!」


 光隆を拉致したキマイラマトンの周囲に居たキマイラオートが9k114対戦車ミサイルを発射、掛瑠は周囲に氷の盾を展開しそれら全てを回避。


 掛瑠「とぉりゃぁぁぁ!」


 掛瑠も負けじと対戦車ミサイルを投射、キマイラオートの飛行ユニットを破壊して長崎湾入り口の橋の近く、モアイ像の側の海上に叩き落とす。


 フレーべ「どうしよう…」

 光隆「何で掛瑠は攻撃して…あれ、そう言えば護衛艦なら長崎港のドックに泊まって…お前ら自衛官じゃねぇな騙し上がってこんにゃろ!!」

 ロベール「バレたら仕方ない、キマイラオートに乗ってるガキンチョがどうなってもいいのか?」


 光隆「掛瑠は死なねえ、沈んでも蘇るぞ!」

 掛瑠「兄さん俺は天空の城じゃない!!」

 フレーべ「何で彼聞こえてるの?」

 光隆「掛瑠の耳の良さは段違いだ、ナメクジ食らえ!」


 キマイラマトンを操縦しているロベールに展望塔で見つけて戻ったら藪に戻そうと思っていたナメクジをぶん投げた。


 ロベール「な、何をする!フレーべこれ取って」

 フレーべ「でも今キマイラオート私が魔法で…それにこの子を拘束してるのも…」

 光隆「掛瑠聞いたか?」


 掛瑠「全部落とせば同じだ!!」


 9k114対戦車ミサイルを取り巻きのキマイラオートにぶつけ、更に氷のつぶてをもう一体にぶつけて沈める。


 フレーべ「全部やられちゃった!?」

 ロベール「(やっと取れた)こいつめやりよる…この光隆少年がどうなってもいいのか?」


 掛瑠「この野郎…!あれ、ミサイル出ない」

 フレーべ「あの子バカなの?」

 光隆「テメェ…俺の弟バカにしあがって」

 フレーべ「でも君私の拘束魔法解除出来てないでしょ?」

 光隆「ぐぬぬ…」


 掛瑠「だがこちとらキマイラオートの防楯と、特殊能力があるんだ!!」

 ロベール「だが意味が無ければどうと言う事もない!!」

 フレーべ「小○構文!?」

 光隆「外れたぁ!?」


 掛瑠のキマイラオートに9k114対戦車ミサイルが直撃。そのまま落下する。更に光隆もフレーべが謎のツッコミを加えたところで気が緩んだのか、拘束魔法が取れて宙に投げ出された。


 ロベール「何やってんの!?」

 フレーべ「だって…」


 上空400メートルから墜ちる二人、このまま死を待つべきなのか。光隆も今日一日長崎を冒険して体力ももう持たない、掛瑠も能力の使い過ぎで気を失っている。生存は絶望的だった。


 そう、あの船が来るまでは。


 光音「オーバーカム、突き進め!」


 エンジェル・ハイロゥを戴くオーバーカム、艦橋の屋上で光音が叫ぶ。操縦を信之に任せて有理とチョウナと共に二人を救出に来たのだ。


 光音「有理、貴方の視力だとこれ使えるかも」

 有理「なぁにそれ?」

 チョウナ「第二次大祖国戦争で使われた…」


 FGM148ジャベリン対戦車ミサイル。第三次世界大戦寸前にまで陥った第二次大祖国戦争序盤にて多用された高性能対戦車ミサイル。

 光音は海賊に対して先制攻撃する為に、景治に持たされていた。


 フレーべ「増援!?」

 ロベール「降下する!」


 有理「堕ちろ!」


 強烈なバックブラスト、有理の横に居た光音とチョウナも思わず片手で顔を覆う。

 放たれたFGM148ジャベリン対戦車ミサイルはどうにか振り切ろうとするキマイラマトンを適切に捉え、その片翼をへし折った。


 ロベール「この野郎!」

 フレーべ「まずいですよ!」


 海面へと不時着するロベールとフレーべ。それよりも上空から墜ちる光隆と掛瑠には興一がすっ飛んで行った。


 こういち「二人とも、よく無事で…!」

 光隆「すげぇな、掛瑠!」

 掛瑠「…いいえ、兄さんが草津でやった事を真似しただけです。」

 こういち「さぁ出ようか、風雨はじきに止む。」


 三人はオーバーカムへと戻る。その後長崎沖合のリゾートホテル、アイランド・ハピナスにてタクシー代を興一が払いメイド長の車を返却した。


 船は薄雲の夜空を駆け、一路沖縄を目指す。

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