海蛇-2
真澄「あれ…おかしいな。」
チョウナ「どうしたんですか?」
真澄「自動操縦装置が誤作動を起こしたのか、別の方向に行こうとしてるんだ。」
映美「チョウナ!この方角で行くと何処に辿り着く?」
チョウナ「えっと…き、鬼界カルデラ…❓」
真澄「」
映美「」
信之「それはマズイ、鬼界カルデラは噴火すれば日本を壊滅させれるレベルのカルデラだ。」
泰郎「何やと⁉️」
真澄「しかも、擬似機関は原発以上の莫大なエネルギーを吐き出せる。」
チョウナ「つまり、この潜水艇自体が核弾頭という事…?」
信之「そんなのぶつけたら、鬼界カルデラが吹っ飛ぶ。そしたら日本壊滅は免れない、そして気候変動などが全世界に及ぶかも」
信之「でも誰が何の目的で?」
映美「海護財団は、元からかなり顰蹙を買ってる組織。しかも若輩者な景治率いる体制に不満を持ってる人間も多い。不穏分子は探せば沢山いる。でも…」
光隆「どうしたら止めれるんだ?」
真澄「今確認したら、アルゴリズムが鬼界カルデラへ誘導する様に設定されていた。どうにか減速させるか、メーンコンピュータから操作権限を切る。それしかない」
映美「みんな、やってくれるね?」
一先ずチョウナはソナーの応用を以って周囲に居る潜水救難艦にモールスで状況を伝える。
………
里帆「私たちが休んでる間に?」
茜「ゆうべはおたのしみだったんなら今すぐに仕事入って、今大変な事になってるの。」
要「いったいどう言う事ですか?」
畝刈学「吉野秀喜三佐が憑依されてノーザンプトン級を乗っ取って暴走、更に試作潜水艇が暴走して鬼界カルデラに衝突するコースをとっている。」
潜水救難艦からの情報を伝えるも、潜水救難艦もその場で見ていることしかできない。更に昨日から様子の分からない秀喜とノーザンプトンに現場は焦りを強めていた。
里帆「嘘…姿を隠していたクライトゥスが試作潜水艇“アバディーン”の航路上に出現!」
要「潜水救難艦からの報告によれば多用途発射管から出される迫撃砲が異常な速射を見せているとのこと!」
里帆「観測班から追連絡、空間魔力の増大を確認。」
海護財団を裏切った…と言うより隠れ蓑として潜伏していた謎の勢力、寿圭一派の再来はある種危険な状態と言える。
寿圭「あのガキがあの潜水艇には乗ってるんザマスね?」
コラタレ「そうです。アレを地獄に送る事が出来たのならば、寿圭様の名声も高まりましょうぞ」
一隻の潜水艇に対して、寿圭率いる大量の多用途支援艦を改修した対地モニター艦が襲いかかる。
興一「不味いな、樒果も朝から顔を出していない。」
掛瑠「カリブディスのメンテナンスは終わってます、ルートは分かっていますし追いかけましょう。」
興一「…だな、全艦両舷前進」
…………
……
光隆「そーれ‼️」
光隆は猫耳状の抵抗翼を押し上げる。リニアモーターカーでも使われたある意味伝統的なブレーキ法だが、大気中より水中の方が抵抗は大きく効力も拡大する。
一方信之と泰郎、真澄はアバディーンの1両目の車両に向かっていた。内部構造は列車と言うより、電気機関車に近い様に感じた。
泰郎「あれやな。」
真澄「そう。これまで通常用のコントロールを使っていたが、あれが本来のコントロール室だ。」
信之「にしても、ここだけ通路低くないですか?」
真澄「スラスターなどを収めるにはこうするしか無かった」
そんな低い通路を抜け内部に入っていくと、多少鈍いが青色の結晶体が見える。これが擬似機関の正体、トレンシウム鉱石の燃えカスだった。
泰郎「燃えカスだけでこんなにエネルギーを生むんか?」
真澄「うん、LA15や総旗艦「セイファート」に乗ってる本機関、つまり元となる存在には到底及ばないのだけどね。」
信之「これですか?」
光音「これで5つ。マザーコンピュータとの導線多過ぎない?」
映美「多分、参謀総会財務課が予算ケチったせいで良いケーブルを買えなかったんでしょう。もしくは余り物を回されたか…」
光音「意外と世知辛い…」
………
真澄「この酸素生成装置とマザーコンピュータの接続線を切れば、ここからコントロールが出来る。これだ」
信之「了解、うわぁ‼️」
光隆「何だ?」
カトル「6号車左舷バラストタンクに雷撃も浸水認められず」
映美「雷撃!?となると…」
真澄「偶然じゃない、最悪のパターンが来てしまったようだ!」
泰郎「信之?大丈夫か?」
信之「ん…ん?」
泰郎「アンタ、突然倒れたからビビった。」
信之「ごめん。でもサイコメトリーで犯人がわかったよ。」
泰郎「何やと?」
信之「真澄さん、4年前に突然貴方の部署に入ってきた人が居なかった?」
真澄「…まさか!」
………
……
その頃本部でもアバディーンの暴走の件は伝わっており、その原因も明らかになってきていた。
景治「成る程。暴走したアバディーンを雷撃で沈め、マッチポンプとする事により自分達をヒーローと認識させ、海護財団を堂々と乗っ取る。それが国際派の狙いか…」
在斗「はい。朝職場に来たら部下2名の机にメモが置いてあって…」
景治「見たんだね。」
在斗「はい。そしたら彼らはシンパだった様で…ついさっきまで問いただしてた所です」
茜「(奴さん雑過ぎない?)」
イズナ「どうします?」
景治「寿桂率いる第9艦隊を極秘裏に壊滅させる。一番近い艦隊は…」
澪「それなら、科学技術本部の艦隊かと…いやでも、超長距離雷撃なら第3艦隊のあの艦の方がいいかもしれません。」
景治「ならば、どちらも向かわせるまでだ。アバディーン実験緊急救命隊は作戦維持、SNSなどにはカバーストーリーを流布。急げ!」
………
コラタレ「科学技術本部に潜らせたシンパが吐いたそうですぞ」
寿桂「…早かったわね。ならば雷撃で怪物を沈めるまで、やっておしまい」
攻撃命令を出したその時、近海に秀喜のノーザンプトンが増援として浮上する。
秀喜「加勢スル!魚雷斉射、ヤッタレ!」
その頃、海護財団科学技術本部の囚人実験室にて琴子は例のスパイに対する尋問を行なっていた。
吉野琴子「何なんですかお二方、私の兄が財団を裏切ったとでも…?」
関宿理板「じゃあ今どの艦隊に君の兄ちゃん居るか調べてみ?」
川路蓮檸「そうそう、」
琴子「…嘘でしょ」
琴子がそう言った瞬間、取り調べを受けていた二人の体が吹き飛ぶ。
琴子「え…え…えぇぇぇぇ⁉️」
………
コラタレ「裏切り者は始末しました。奴らは…?」
寿桂「何故だ、何故奴は沈まないんだ?」
光隆「能力展開、アクアウォール‼️」
チョウナ「幾ら雷撃でも、壁を前にしたら爆発せざるをえない。」
光音「次は私ね。アクアウォール、展開」
映美「今3人は時間稼ぎに集中して、カトルはソナー。プログラムを真澄が書き換え、信之と泰郎はハードの面でマザーコンピュータから物理的にコントロールを全て奪う。そして私が安定翼を上方に向けれる様に…ハンドルを…回し…」
チョウナ「いや、無理しないで。私も手伝うってばよ」
真澄「いいか、二人とも「慌てず急いで正確に」だからな」
信之・泰郎「はい…!」
映美「左舷より魚雷5本、高速接近!」
一同は死を覚悟した。だが、光隆と光音が必死に防壁を使って防いだお陰で全く被害を受けていなかった。
信之「交わしたぁ!」
映美「まだ、波状攻撃。あと8本!」
光隆「ぐぬぬ…!」
光音「流石に…厳しい」
─ その時、不思議な事が起きた ─
チョウナ「光隆の腕時計が…!」
映美「あれは本機関の光!?」
光隆「何だか…力がみなぎって!!」
光音「あの時と同じ…!!」
光隆の腕時計が突如発光、そして特殊能力出力が格段と上がる。それは本機関…即ちトレンシウム鉱石の光芒だった。
光隆「とおぉぉぉぉぉぉ!!」
チョウナ「凄い、全部耐えた!!」
信之「真澄さん!」
泰郎「接続を切ったで、酸素供給を船内とバラストへ移る様になった!」
真澄「よくやった!!」
映美「ソナーに新たな艦影、双胴型。認証、海護財団科学技術本部実験艦「たいほう」」
真澄「どっちだ?」
映美「下舷前方、浮上してくる!!」
真澄「車輪展開!」
ズガアァァァン
朋美「何かぶつかったっぽいけど?」
樒果「電磁キャプチャー起動、上げ舵そのまま。」
朋美「ヨーソロー」
真澄「怪我は?」
光隆「大丈夫だ、光音や皆んなは?」
光音「私は大丈夫」
映美「浸水箇所無し」
樒果「聞こえる?今貴方たちは寿圭一派に追われていたの。でも、もう大丈夫。あとは私達が始末するから。」
光隆「樒果さん?」
光音「助けに来てくれたのね?」
朋美「始末するってどうやんのさ?」
樒果「ヘリ甲板から砲戦甲板へ回転シフト、総員安全区画へ退避!」
朋美「でも水中での陽電子砲はパワーが落ちまくる、良いの?」
樒果「相手との距離は20km。水中最大射程は理論上30km、本艦にはこれしか無いの。」
樒果の号令から約20秒、たいほうの甲板の一部が回転し15.5サンチ六連装陽電子砲のボックスランチャーが出現する。
樒果「撃て!!」
一瞬、水中に眩いものが発生すると反乱艦隊へと飛んでゆく。
オペa「フリゲート2隻、轟沈!」
コラタレ「いきなり何が起きたのです?」
オペa「分かりません」
コラタレ「奴は兵装を積んでいないはずですが、もしや」
オペb「更に3隻、爆沈!」
コラタレ「ここは一時引いた方が…」
寿桂「ならん!」
コラタレ「え?」
寿桂「歴史とは、犠牲の上に成り立つ。(最後にはアテクシさえ生き残ってれば良い)」
艦が次々と沈められる中、必死に水中に対しアスロックを投射する。だが、光隆を筆頭に特殊能力者らが抵抗し1発1億5000万円の「潜水艦殺しの大銛」もナマクラと化す。
寿桂「…ッ何故沈められない?お前を恨む気持ちが足りなかったとでも言うのか?」
オペa「間も無く、アスロックが尽きます。」
寿桂「ええぃ!かくなる上は…秀喜、お前潜ってアバディーン獲って来い」
秀喜「フフ…ハッハッハッハッハ!」
寿圭「何がおかしいんザマス!」
秀喜「お前なんぞ、俺は元から上司となんざ認めてねぇんだよ!」
秀喜が率いるのはノーザンプトン級13番艦「うんしょう」。かの小早川秀秋の実母の名を冠した艦が今川義元の母の名を僭称する存在へと反旗を翻す。
映美「敵艦一隻が反乱艦隊で内ゲバを発生、当該艦はジュピター擬似機関搭載型と推定。」
樒果「了解、内ゲバ艦を援護し反乱艦を沈める。擬似機関、フルパワー!!」
秀喜「絶対に許すな、ぶちまけろ!!」
寿桂「価値観をアップデート出来てないクソオス如きに負けるか、殺れ」
秀喜「全砲門、一斉射!!」
単艦だがその戦闘力は融合炉や通常動力の艦艇が多い第九遠征打撃群に於いては強大で、尚且つ水中からの見えない援護攻撃を受け艦隊は次第に壊滅していく。
秀喜「お前で最期だ、クソババア。2番荷電粒子砲、艦橋を狙え。」
寿桂「まさか、このワタクシが…寿桂が、クソオスに負けるなんて…」
秀喜「撃て」
秀喜の冷酷とも取れる艦橋への陽電子砲発射と同時に、その他の荷電粒子砲も自由射撃で寿桂の艦に砲撃を加えた。
秀喜「ふう…。海中に居る謎の艦にソナーでモールスを打て、貴艦の援護に感謝する。だ」
映美「反乱艦隊、壊滅。内ゲバ艦よりソナー音。キカンノエンゴニカンシャスル。です」
樒果「返信、給与分の仕事をしたまで。と」
………
……
パイロットA「こちら第3機動艦隊航空隊長、当該水域に艦影一隻しか認められず。」
第3艦隊オペ「当該艦うんしょうより入電。我、反乱軍を鎮圧す。乗組員救助の協力求む」
賢三「…どうなってあがる?」
澪「追討命令は無し。うんしょうと共に遭難者の救助を優先して」
賢三「事が片付いたって事か。分かった、海域まで20分で着く。全艦速力30!」
興一「賢三先輩、たいほうは?」
賢三「分からない。興一が知ってるんじゃないのか?」
………
……
その頃、たいほうは予定よりも早く佐世保へと到着していた。と言っても佐世保より少し北にあり、平戸に近い江迎に財団の軍港があった。
光隆「着いた!!久々の佐世保だぁ!!」
光音「光隆と出会ったのも、この佐世保での事だっけ?」
光隆「え、そうだっけ?」
光音「うん。2歳の頃、遊覧船でうっかり足を滑らせた私を助けてくれたでしょう?」
隆元「全くだ。あの頃から特殊能力があったとは言え心配させすぎだ、お前は」
光隆「父さん!?」
隆元「元気そうで良かった。」
チョウナ「その制服…もしや」
隆元「そう、艦長の任を授かった。」
光隆「良かったじゃん父さん、おめでとう!!」
………
夕刻。漸くゆうぐもに乗った掛瑠達が合流、本格的な泰郎母捜索が始まった。
興一「そろそろ空を飛んで対象を探してくる」
真澄「まて興一、お前だけが背負う必要はない。フィールドエージェントたちを、信じよう」
樒果「興一くん。あの事をここで引き摺ってるとするならば、今すぐ司令に言って解任してもらうよ?」
興一「…!」
樒果「過去を抱くのと引き摺るのは違う、貴方じゃあの子たちの未来を示すことは出来ない。私なら少なくともそう判断する」
興一「泰郎くん、良いのか?」
泰郎「ええねん、ここまでやってくれる何て思ってなかったからな。それにアンタが各地からこんなに良い奴ら連れて来てくれたから、ワイはそれが嬉しいんや。」
興一「そうか…分かった。みんな、長崎を楽しんでこい!」
光隆「分かった!」
光音「ちゃんぽん発祥の店行きましょう!」
カンナ「いや、グラバー邸が先よ!」
陸唯「ちょっと待て、港の側だから腹拵えしてからで丁度いい!」
樒果「興一くん、」
興一「何?」
樒果「一皮脱げたね、貴方は本当にロールキャベツなんだから…」
興一「一体何のことだ?ロールキャベツなら食べれば良いじゃ無いか。」
真澄「多分違うと思うぞ」
………
樒果「さて、今は財団の地上観測衛星を以って長崎県全域を監視中、それに海上にも哨戒艦を多数展開している。この包囲網、ネズミ1匹も逃がさないわ!」
朋美「いや、ネズミ一匹は逃げるっしょ」
樒果「モノの例えよ、それに防犯カメラがあるし県境に検問も配置した。今の所取れる最強の包囲網、これで日本を牛耳る巨悪の尻尾を掴めるかもって話だからね」
樒果「と言ってから2日も経った…いつ見つかるのかしら?」
朋美「もう地に潜ったか天に登ったか…しかなくね?」
興一「それとも、何処かしらに籠ってるかだ…捜査権限を以て長崎市内をエージェントに探させるしかない」
その頃、光隆達はちょうど長崎市内に居た。
カンナ「ここがかつてご先祖さまが居た場所、とても綺麗!」
光音「そうでしょうそうでしょう、長崎は100万石の夜景だから」
光隆「あれ、掛瑠の言うには100万ドルの夜景だった様な?」
陸唯「まぁどっちでも良いだろうよ」
泰郎「叔父ちゃんが言うには、あの山でライブをやる歌手が居るそうやねん。」
進矢「ほなマシャやろ」
泰郎「でもなぁ、どうも山じゃなくてちゃんとしたステージでライブしとるらしいんねん」
進矢「ほなマシャちゃうか…」
掛瑠「(稲佐山とマシャをどう思ってるんだこいつら)」
有理「まぁまぁ、後でシェイク奢ってあげるから気を戻して」
都姫「あらあら、持っていたわよ。」
光隆「都姫さん久しぶりです!」
都姫「みんな集まったわね、それでは極秘司令を言い渡す。それは…」
一同「えぇぇぇぇ⁉️」
──そこで光隆たちが耳にしたものとは!?──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます