Potential

 ゆうぐもは海を走り始めた。先行する艦隊は水平線に近く、レトキシラーデは火炎放射を放ち艦隊を焼き払っている。


 要「主砲、撃て!」

 無人艦は統制をどうにか取りながら15.2サンチ主砲を足の付け根に撃ち込む。だが外骨格を貫くには火力が足りなかった。そしてとうとう…


 要「ロゼア輸出型、壊滅!」

 澪「やはり最後に頼るはヒトの手か…」


 巨大コウロギが羽ばたき、波立ち艦艇の残骸もありカオスな海原から奴は敷島へと猪突する。


 澪「しまった、後詰めを正面突破するつもりだ。武器使用は無制限、何としても止めろ!」


 レトキシラーデに対して対空ミサイルが艦隊から放たれるが殆ど意に介してなかった。それもそのはず、熱源探知型のミサイルは奴の後部に熱源を捉えたが予想以上に硬い羽根に阻まれ有効打にはなってなかった。

 各艦の荷電粒子砲も命中するも、命中箇所が生命活動の上でそこまで重要な部分では無いからと多少よろめくだけで進撃を止めれない。


 興一「チョウナ、陽電子砲を土手っ腹に当てられるか?」

 チョウナ「一応行ける。でも先頭の以外片方にパルス砲付いてるけど?」

 興一「そういう仕様だ。でも射線かぶってる他の武装と重複して打てない仕掛けになってる。安心して撃て。」


 まだ動き始めて少ししか経っていないゆうぐもは、レトキシラーデに対して丁字有利を取っていた。その為後部の砲塔も撃ち込むことが出来る。


 チョウナ「副砲1.3.5番、撃て‼️」


 陽電子砲から堰を切ったようにエネルギーの奔流が向かう。そして、狙い通り敵の土手っ腹に命中させた。


 興一「上手いよチョウナ!」

 光隆「す、すげぇ。興一さん、俺にも何か出来ないか?」

 興一「そうだな…アレの生体パーツを取りたい。何か良い案ないかな?」

 光隆『殴って倒す‼️』

 陸唯「おいコラ脳筋かよ?」

 光音「光隆らしいっちゃらしいけど…」


 そうこう話していたらレトキシラーデがビームを撃ちながら肉薄、その複数発がゆうぐもに直撃する。


 カンナ「きゃぁぁ!」

 興一「怯むな、この程度でゆうぐもは沈まない!」

 更に不運は続き、巨大コウロギが甲板におぶさる様に乗っかってきた。この船を取り込むつもりだ

 掛瑠「甲板に!」

 有理「もう退艦しなきゃあぶなくない?」

 光音「LA15で緊急脱出…」

 光隆『いや、これで俺たちの土俵で戦える。お前ら行くぞ‼️』


 信之「ちょ、光隆?」

 陸唯「オラ、お前も行くんだあくしろよ」

 光隆「喰らえ!」


 早速光隆は足の付け根に向かって水圧砲を発射、更に水榴弾で一点突破を図る。


 光音「それじゃあ効率悪いわ《マルチロックアクアプレッサー》」


 対する光音は一度に多数に水圧砲の強化版を展開、ここで気付いている人が居ると思うが現状では光隆より光音の方が実力はあるのだ。


 掛瑠「(思った通り、兄さんは猛将タイプだったか…)」

 有理「なに考え込んでるの?やると決まったらやり抜きましょう?」


 掛瑠と有理も到着し氷のつぶてや凍結による攻撃、更に触手によって押し返す。


 信之「…」チーン

 進矢「ありゃりゃ…」

 陸唯「案の定失神しちまったか。カンナ、お前興一さんから機関砲何基か借りてただろ?」

 カンナ「何なら今奴の足に向けて撃ってる」

 陸唯「1本貸せ!」

 カンナ「構いませんが、何をしますの?」

 陸唯「まぁ見てなって」

 陸唯「信之、ざーこ。このまま腐れ死んじまえ」


 進矢「少し言い過ぎでは?」

 信之「グォラァァァァァ‼️」

 陸唯「ってあの怪物が言ってたぜ?」


 信之は突然目覚めたと思ったら、借りたブローニング機関砲をレトキシラーデの喉元にぶっ放しまくっていた。


 信之「死ィィィィィねェェェェェ‼️」

 こうして一同が頑張っては居るが、艦砲でも取れなかった足がヒトの手で折れる訳でも引き抜けるわけもなく…

 興一「樒果、増幅器はまだか?」

 樒果「あと1分持たせて!」


………


 要「先輩を…離せ‼️」

 要は更に新型エンジン搭載の無人艦を用いてゆうぐもに取り憑いているレトキシラーデに肉薄。そして大型の銛を多用途ランチャーで治癒したての柔らかい外骨格に撃ち込み、引き剥がしを試みた。


 興一「要⁉️ダメじゃないか、コンデンサ試作型艦を無人運用しては…」

 要「先輩を守る為ですから。」

 樒果「増幅器、行ける‼️」

 興一『特波増幅器、発動‼️』


 その時、不思議なことが起こった。

 船体がオレンジ色の光に包まれ、一同の身体に力がみなぎってくる。


 陸唯「何だ?」

 進矢「わからない」

 光音「でも、何か力が湧いて…うわぁ!」


 光音の《マルチロックアクアプレッサー》の威力が突然上がり、光音が担当していた4本の足を破壊する。


 光隆「うぉっしゃぁぁぁ‼️コアぶち抜いてやらぁ‼️」


 光隆も自分の担当していた足から水圧砲の向きをコアに向けた。


 陸唯「加勢するぜ!」

 カンナ「おチェーンソーですわ!」


 陸唯も熱波を展開し、カンナは何処かから持ってきたチェーンソーを神通力で飛ばして巨大コウロギを帝王切開しようと試みる。


 進矢「信之くん、加勢して。僕も鎖鎌でどうにかしてるから」

 信之「さん付けろこのデコ野郎‼️」ズドド

 進矢「」←進矢のやる気が70下がった

 光隆「お前ら…うぉっしゃぁぁぁぁ‼️」


 光隆は雄叫びと共に水圧をどんどん強める。そして遂に外骨格を破壊。それと同時に要の無人艦が開けた穴の亀裂が広がり、外骨格が真っ二つに折れてしまう。


 興一「今だ、コアを引き抜け‼️」

 進矢「鎖鎌!」

 光隆「行くぞ、持てねぇ奴は援護で頼む」

 掛瑠「こっちは奴の固定をしておきます《樹氷刺し。》」

 一同「うぉりゃぁぁぁ‼️」


 そして、光隆たちはレトキシラーデのコアを引き抜く事に成功した。


 光隆「おっしゃぁぁ!勝ったぞ‼️」

 光音「にしても何でいきなりこんなみなぎって?」


 そこに興一が艦内放送で呼びかける。


 興一「みんな、ありがとう。基礎的な知力とみんなの発想が無かったらこの船の真の力、能力波増幅装置は効果を発しなかった。今奴の標本を取りに本部からフリゲートが来るだろう。応対するから休んでおいてほしい。」


 光隆「何か、分からないけど…」

 陸唯「勝ち鬨、上げるか?」

 光隆「だな」

 一同「えい!えい!おぉ‼️」


 こうして、前代未聞の特殊能力者対レトキシラーデの格闘戦は幕を降ろしたのであった。


 樒果「興一くん「擬似機関を舐めるなよ」とか言ってた癖に、即刻取り憑かれちゃって。情けないねぇ…」

 興一「くっ…全くタイミングさえ良ければ。」

 樒果「タイミングが良ければ他の擬似機関搭載型でも殺せるわよ、あんなの。元機動艦隊司令なら知ってるでしょうけど。」

 興一「ぐうの音も出ないからやめて…」

 樒果「後それと、本機関の増設は佐世保でやるから。いいね?」

 興一「分かった、それでコアの利用法は?」

 樒果「コアの特性は実験船含めて理解したけど、研究の為に切り分けた結果枯渇した。だから大元のコアが欲しくなったの。」


………


 あれは2年半ほど前の事だった。


 莉央「お疲れ様、樒果さん。」

 樒果「嬉しそうですね。何か進展でも?」


 歌浦莉央。

 海護財団本部元2代副司令。イズナの母で現在は変わり者の巣窟と化している科学技術本部を纏めている他、現副司令彼杵茜の補佐も務めている。


 莉央「うん、レトキシラーデが世界を救うかもしれないって事ね」

 福江朋美「ちょっとそれはあり得ないっしょ。奴らは世界中を襲って無茶苦茶にしてんのに」


 福江朋美

 海護財団の生物学者。ギャルっぽい自由人だが、その実東京大学生物学部の博士号を取得した実力者。


 莉央「それならこれを見ると良いわ。」

 莉央は端末を叩くと、レトキシラーデのコア情報をモニターへと映す。

 樒果「レトキシラーデは、自分の身体に受けたエネルギーをある程度自分の活動エネルギーに変換でき、コアの中でそのエネルギーを増幅させれると?」

 朋美「え、だからなの?あんなデッカい身体を維持しつつ、レーザービームなんて撃てるの。生物学としてはそりゃあり得ない…と言いたいけど、目の前でアレ見せられるとマジ無理。信じるしかないしー」

 莉央「流石はあの人が集めた優秀な学者ね、理解が早い。


 樒果「あれ?体内でエネルギーを増幅させれるって事は、コアをどうにか増殖させて積んで、エンジンに組み込めば相当燃費良くなるってコト?」

 朋美「え、マジ?それじゃあ世界を救うって?」

 莉央「そういうコト。でもあともう一つ、奴の体内に流れているエネルギーは生命エネルギーって訳で、それを用いる兵器と言えば?」

 樒果「…まさか‼️」

 莉央「ふふ、」

 朋美「それよりもーキラフォペンのケーキ、終わった後勝ってきたんですけど食べます?」

 莉央「そうね、ティータイムとしましょうか。」


………


 樒果「と言うことがあってね。いやぁ懐かしいなぁ、あの時興一くんは今度は父さんと宇宙に行ってたんだっけ?」

 興一「ここから僕の左遷案件言おうとするのやめてよ…(´・ω・`)」


 コアを部下に回収してもらってふと一息ついたところで、猛スピードで自転車がゆうぐもへと駆け寄って来た。


 陸唯「ありゃ泰郎じゃねえか」

 光隆「おーい、どうしたんだ?」

 泰郎はとても汗だくで、とても焦っているように思えた。自転車を固定すると、光隆たちに向かい叫ぶ。

 泰郎「母ちゃんが、3日前からいねぇんだ!」

 一同が困惑する中、樒果が彼をゆうぐもに入れる判断をした。


………


 興一「なるほど、3日もぶっ続けで探したけど見当たらないと。」

 泰郎「そうなんや…もう何処行ったんやろ、いつまでに戻るかっていつもいつも書き置きはして行くのに。」

 掛瑠「いつもはどの位家を開けるのですか?」

 泰郎「あんたは?」

 掛瑠「相浦掛瑠、光隆兄さんから話は聞いています。」

 泰郎「あぁあの天才レーサー【相模のスターター】はんか。お会いできて嬉しいわ。」

 掛瑠「それはもう過去の話です、それよりも質問に答えて下さい。」


 興一「そりゃないんじゃないか?折角嬉しそうにしてるのに」

 掛瑠「すみません。こう言う時の返しをどうすれば良いのか、俺は知らなくて。」

 興一「それはこれから学んでいけば良い。」

 泰郎「そろそろ答えるが、正直マチマチや。何かの講演聞きに行くために沖縄行ったり、平和を守るために軍隊に反対したり。あの日も海護財団へのデモへ行ってたな。」


 樒果「朋美、あの子の親らしき人を拿捕もしくは撃破してるかをデータベースから頼む」

 朋美「確認した、そいつ確認できない」

 興一「いや早いって」


 樒果は泰郎にその検察結果について話す。


 泰郎「となると、あの崩落事故に巻き込まれなくて済んだんやね。取り敢えず良かったわ」


 樒果「君の母さんの捜索に私たちも協力する。」

 泰郎「ホンマですか?」

 興一「肉親を失うのは、何よりも辛い事だ。僕だって…」

 樒果「再会させれる様に、力を尽くすよ。」

 

………


 その後樒果はゆうぐもの応接室にて、興一にこれからの方針を伝える。

 樒果「あの子の母親はうちのAiによる防犯カメラのハッキングでどうにかする。」

 興一「分かった、進展あれば連絡おねがい」


 樒果「それと景治総司令はどうやら彼らを我々の切り札にしたいらしい。だからゆうぐもと内蔵してるLA15を用いた演習航海に出て欲しいとの事よ。」

 興一「そう来るだろうだろつなって、弾薬は積んであるよ。」

 樒果「それと要くんの弟を君の学校に入れたい。気難しい性格だそうだけど御せそう?」

 興一「彼の性格を見極めると…もう少し後がいいかな」

 樒果「分かった、手続きはゆっくりでいいね。取り敢えず今日はもう遅いから、泊まっていくわね」

 興一「え、ちょっと待って!」

 樒果「ふふふ、ここからはオフレコだよ」

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