放棄された戦場、身動きも取れず死にかけている兵士ふたりの、無線越しのやりとりの物語。
戦争もののドラマです。
対話劇、あるいは一種のソリッドシチュエーションともいうべきお話。
わりとこの状況そのものが好きだったりして、とても楽しく読めました。
無線越し、というあからさまに限定的な、いろいろなものが伏せられたままの状況。
まずそのままストレートには終わらなさそうというか、少なくとも〝何かある〟のは間違いなくて、なんでもないところにさえハラハラさせられる感覚がとても好きです。
その〝何か〟、つまりは結末に関しては具体的には触れませんが(ネタバレになるので)、戦場の凄惨な光景が目に浮かぶかのようでした。
無情というか無常というか、誰にもどうしてみようもない分だけ悲しい物語。
読後にずっとあと引く余韻がたまらない作品でした。