vs宇宙大将軍ジェバダイア(前)

【エリア7-1:マッドシティ】



「逃げずによく真正面から来たな。歓迎しよう」


 ジェバダイア・アウグストゥス・ロスコム。

 かつてはセントラル行政委員会のメンバーであり、創始者の一人でもあった男。白いローブ姿からは凄まじい威圧感が放たれていた。その手に握るのは柄が長い十字架のような形をした剣、虹天剣。


「来たか、魔なる者よ」


 その隣、佐前天山の巨体が妖魔アルに向かう。彼の周囲に浮かぶ三明剣からはどれも凄まじい力を感じる。あやかはその内の一つ、『禍時剣』に意識を注ぐ。自然回復力を『増幅』させることによって不死身の如き耐久力を発揮する彼女にとっては、回復不能の呪いはまさに天敵とも呼べる。


「ジェバダイアさん、本当に手は取り合えない?」

「くどい。これは征服だ。愚民に駆逐されるセントラルを、この私が救ってやるのだ」


 周囲に広がる『完全者』。その数は四。見るものが見れば精鋭ばかりなのが見てとれる。

 彼らは自身の拠点のすぐ前で遥加たちを待っていた。建物の中では被害が甚大になるのは分かりきっている。そして、室外で猛威を振るうのはバッドデイの改造車両だ。ウィッシュと白埜を乗せたバッドデイが挑発的な笑みをジェバダイアに向ける。


「おい、ツナギ男! ⋯⋯白埜を傷つけたらぶっ殺すぞ」

「合点、過保護さん」


 『悲哀』の軍勢に破壊された愛車はようやく復活した。彼は今ベストコンディションだ。


「君の厄介さは身に染みている。『浄化』と『悲哀』、その二人に足りないものを君が十全に補っている。その優秀さは惜しいな。私の元に下りはしないか?」

「アホか。ついでみたいに言ってんじゃねえ。俺はセントラルやハンターに引っ張りダコの男だぜ? 専属にしたきゃ、土下座するか人柄で惚れさせてみろよ」


 ジェバダイアが右手を上げた。四人の『完全者』たちが動く。速い。先を読んでアクセルをベタ踏みするバッドデイに離されていない。

 そして、誰もその後を追わなかった。

 追えるはずもない――――同時に、佐前天山の姿が消えたのだから。


(((いる)))


 全容に気付いたのは、アル、シュライティア、あやかの三人。遥加は動かないあやかを見て事態を察し、マルシャンスは慌てるエレミアを手で制しながらジェバダイアから一切目を離さなかった。彼は最初から宇宙大将軍以外を見ていない。


「天山、『浄化』は奪ってくれるなよ? それと、『悲哀』とあの娘を潰せ。他は好きに持っていくといい」

「マルシャンスさん、あやかちゃん! 二人はジェバダイアさんから離れちゃダメだよ!」

「⋯⋯もう遅い」


 バニッシュジャッジメント。虹の分身が一斉にあやかを襲った。天山に意識が向いていたあやかは反応がワンテンポ遅れる。虹の剣の連撃は身のこなしで捌くが、その首に不可視の刃が迫った。


「ぐぬぅ!?」

「我が弾丸、食らえばその身貫かれるぞ」


 風刃竜の鱗が姿を消した天山に殺到した。風の動きを読める彼にとってはこれくらいお手のものだ。攻撃を受けた天山は隠形の術が解けるが、その身には傷一つない。


「は! 人気者はつらいぜ!」


 あやかの反撃、膝と手刀。天敵となる禍時剣の刃を砕こうとするも、虹のレーザーに手刀が弾かれた。虹天剣を放った直後の硬直を劫焦炎剣レーヴァテインが襲うが、虹の分身を盾に防がれる。


「マルシャンスさん、分かってるならどうして⋯⋯!」

「連携のテンポが速い。あの速度域はアタシや貴女では対応できない。あの三人だけが「おいぃ、シュライティア!!」


 アルが怒号を張り上げる。


「コイツの方が楽しそうだぜえ!!?」

「そのようですな、アル殿」

「くっく、戦士の目をしてやがる――――いいぞ、来い」


 大きく飛び退いた天山を、アルとシュライティアが追う。三明剣に追いやられるあやかも一緒に着いて来させられるが、その表情に焦りはない。


「おい、叶!」


 代わりに、叫んだ。


「この戦い、俺様を頼るな! ソイツらと自力で乗り切れ!」


 光の大弓をそちらに向ける遥加を、マルシャンスは止めた。


「動かないで。逆よ。彼女があの剣を引き付けているからアタシはここに立てるの」


 そして、見上げる先。

 ジェバダイアは悠然と立ちはだかっていた。その表情に笑みはない。彼の持ちうる攻撃手段に、あやかを殺し切るものは無かった。そして、その策謀に匹敵するのは『悲哀』のみだと分かっていた。だからその二人さえ排除すれば限りなく勝利に近付く。


「お互い、ままならないものだ」

「私は、だからこそ面白いと思うけどね」


 遥加も、大きく深呼吸して気持ちを切り替える。


「ジェバダイアさん」

「今さら対話は不要だよ」

、セントラルへの侵略は止められませんか?」


 遥加は、エレミアの姿を盗み見た。リア様ディバインソードの切先をジェバダイアに向ける彼女は、その信仰心に微塵の揺らぎはない。最初から異端の親玉を討つことしか考えていなかった。


「女神リアぁ?」


 ジェバダイアの言葉には、皮肉たっぷりの侮蔑が込められていた。


を、君は本気で信仰しているというのか?」


 マルシャンスが大弓を構え、遥加が力強く頷いた。その反応に、ジェバダイアの表情に呆れが浮かぶ。

 そして、同時。



「きっさままああああああああ今なんと言ったああああああああああ――――――!!!!!!」


「異端の輩め! この世の癌め! 塵も残さず消し去ってやるッ!!」


「必殺! リア様ファイナルブレイクーーーーーーーッ!!」



 凄まじい極太レーザーがジェバダイアを飲み込んだ。




_________________


ソルト様


随分とお待たせしてしまい申し訳ないです。

南木様の近況ノートにてお願いしておりました、天山戦をよろしくお願いします!

アル、シュライティア、高月あやかが戦闘メンバーです。

何かご質問あればコメントいただければと思います。


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