稀代の大作曲家サリエリと、その弟子たるベートーヴェンとの、おやつタイムの雑談の物語。
近世ヨーロッパの偉大な作曲家を主人公にした、ライトでポップなショートショート調グルメ小説です。
あるいは伝記の超・超訳的な物語。
登場人物たちのコミカルな掛け合いが楽しく、またおいしそうな洋菓子の描写などもあり、大変ほっこりした気持ちにさせてくれます。
魅力はなんといってもやはり彼らのキャラクター性。
主人公のサリエリさん、気のいいおじいちゃん先生的な印象なんですけど、でもそれはそれとして読者の目線から見ると、実は結構とんでもないことしてる側面もあったりするのがたまりません。
単純に時代的なものもあり、彼自身が悪いとは決していえないのですけれど、でも結果的に周囲にえらい迷惑かけちゃってるところが……なによりその無自覚性というか、ツッコミ不在のまま爆進していくところが、お話としてとても好きです。
弟子のベートーヴェンさんも大好き。
なんだかわんぱく小僧みたいな性格で、でも師匠に対してすらデリカシーのかけらもないようなところとか、もう可愛いのなんのって……。
作曲家としての彼らの偉大な印象と、明るく軽快な掛け合いとのギャップが楽しい作品でした。