第11話

次の日の朝。

アンバー家に行く朝。

借りた寝巻きを着替え、質素だが朝ごはんをいただく。

日本にいるときは朝ごはん食べなかったけど、いつ食べれるかわからないなと思ったら食べれるものは食べとけ!って思って。今日はタダだし。


朝ごはんを終え、職業斡旋所印入りの書類を受け取り、ネムツパさんと一緒にアンバー家へ向かう。通常は相手方に連絡が取れたら書類だけ貰い1人で向かうそうだが、私は地理もわからなければ文字も読めないのでネムツパさんがアンバー家まで一緒に行ってくれることになった。

乗り合い馬車に一緒に乗り込む。

「馬車で3駅乗ってあとは少し歩くよ」


大きいホロ付きの馬車に町の人達と一緒に乗り込む。人とは言ったが人族だけでなく、獣人族、エルフ、ホビットなどの種族が入り混じっている。アバターのように肌の色が青い種族もいた。本当に色々な種族がいるなあ。


街中に進んでいくと周りから人の声や他の馬の鳴き声が聞こえて騒がしくなってきた。

3つめの停留所で馬車を降り、馬車や人が行き交う大きい道を進む。5分ほど歩いて、馬車が通っていた道からすこし外れた道に面したお屋敷に着いた。ここがアンバー家か、すごく大きいし門が立派。金属の柵には細かい細工が施してあるし、屋敷の玄関までの花壇にも綺麗な花が咲いていて世話が行き届いていた。


ネムツパさんが玄関の扉についてる金属製の輪を動かし重いノックをする。ドアノッカー、初めて使ってるところ見たな…


中からメイドさんが扉を開けた。

「すみません、私職業斡旋所のネムツパと申します」

「お話は伺っております、中へどうぞ」


大きくて重そうな扉から中へ入る。

屋敷の中は明るく広い。窓から採光されていて天井のシャンデリアがキラキラと輝いていた。赤い絨毯が敷いてある廊下を案内され一つの部屋に入った。

中には趣味の良い調度品があり、重厚感のある机とソファが真ん中に鎮座していた。

ソファにはビシッとノリの効いたスーツを着ているおじさんがいた。見た目はイケオジだ、人族っぽいな。勧められるままソファに座る。

「職業斡旋所から来ましたネムツパと申します。こちらの女性が“鈴木めい“です」

「紹介に預かりました鈴木めいです。これからよろしくお願いします」

「私はアンバー家の執事長をしているモルダンと申します。よろしく鈴木めいさん、早速仕事内容の確認ですが————」


仕事としては、経理担当者の計算のダブルチェックが主な仕事となった。驚いたことにこの世界には計算機がなく、そろばんなどの類もなかった。私はそろばんも使えるため、そこまで桁が多くなければ暗算でもいける。あとは自分で簡易的にそろばんを作るか、スマホの存在を初めから話してしまうか。

一緒に働く人を見てから決めよう。


ネムツパさんは、私が元異世界人で文字が読めない、こっちの世界での常識と考え方が違うかもしれない旨を説明してくれた。

文字はおいおい勉強していって、任せられるようになったら書類整理や、証書作成をやってもらうということになった。


また住み込みのため、今は執事長の部屋にいるが、自分の部屋は屋敷の隣に従業員専用の建物があるらしい。

部屋は二人部屋であとで案内してくれるらしい。というか、従業員専用の建物ってどれだけ従業員いるんだ。


ここで仕事しつつ、文字も読める様に勉強して、時空のおじさんも探さなきゃならないし、忙しいな?!

時空のおじさんって神様なのかな?ということは神殿に行って神託を貰ったら帰れたりしないかな?


一通りの仕事の説明を受け、お互いに納得し書類に判子。私は持っていないのでサイン。


従業員と一緒に昼を食べ午後から仕事となった。

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