第5話

「とまあ、こんな感じですかね…」

ご飯をありがたくいただいてから軽く3時間は話してたぞ…

飛ばされる前の世界の日常とか社会とか、仕事とか、国について、etc、etc…


驚いたのはこの世界は神様が明確にいるということ、神殿でご神託があったりするそうだ。以前には違う世界から飛ばされてきた巫女やら魔術師が居たらしい。神殿にいる司教様から予言があって、その予言通りに泉から現れて世界を発展させたり、強い魔術が使えて流行病を撲滅させたりと伝説の方達が何人かいるらしい。

私そういうの全くないんですけど。気がついたら山の中だったんですけど。

魔法がいきなり使えたりするのかな、とワクワクしたけど、ケミさんから握手されて首を横に振られた。なんでも魔法を使うには魔素?というのを体に流して使うらしくそれが私には全く感じられないらしい。

え、本当に私何しにここに来たの?間違いか何かなの?


「私はこれからどうやって生きていけばいいんですかね…」

「いやまあ、今日は泊まっていくといい、だがこの辺の仕事は力仕事しかないからな…、君には辛いだろう、持っているものもそれなりに珍しいし売って元手にすれば街で暮らすことも可能だとは思うけど…」

「俺このすまーとふぉん?ってやつ欲しい!光るし絵も描けるし面白え!」


この世界は2人の話からすると昭和くらいの科学は発展してそうだった。2人がエルフという事もあり、ここでは牧歌的な暮らしをしているが、街に行けば魔法が使えない人も多く、魔法を貯めて使う明かりや持っている人は限定されるが電話みたいな物、また火や水の魔法を石や札に貯めて料理に使う事もあるらしい。通貨や近隣の国や民族の話も一通り聞いたが、私の常識とは異なるものだった。わからないことだらけなのでケミさんの申し出は本当にありがたい。

「とりあえず神殿にご神託が無いかどうか確認してはどうだろうか、迎えの者が間に合わなかっただけで実は何か力が与えられてる可能性もあるぞ」

「でも魔素はないんだろ、魔法も使えねーしご神託も受けれねーじゃん」


私も異世界に来たんだったら魔法使ってみたかったな。

「そういえばケミさんは水系統の魔法って言ってましたけどハイロさんは何が使えるんですか?」

「俺?俺は土系統と身体強化が得意」

「あの、やって見せていただいても…?」

「え〜、じゃあこれと交換は?!」

手に持っていたスマホを指差して笑うハイロさん。

「ダメですダメです!今日一日なら良いですけど、あげるのはダメです!」

あれから何回確認してもスマホの充電は86%から減らなかった。壊れたわけでは無いみたいだし、ファンタジーの力かな?と無理やり自分を納得させた。だって考えてもわからないし。

しょーがねーなー、とイスから立ち上がったハイロさんは入り口から地面へ飛び降りると行くぞーと言って地面に両手をつけた。

ゴゴゴゴという低い地鳴りと共に土が何本も柱状に隆起していく。

その柱の一本が窓からのぞいている私の目の前に伸びてきたかと思うと、その上にハイロさんがジャンプしてきた。

「こんな感じかなっ」

「うわーー!すごいですー!!」

パチパチと拍手をしてまたIQ3になってしまった…

「今日はもうヤギも牛も戻して酒でも開けるか、明日は街まで行くなら早めに寝た方がいいだろうし」

ケミさんの提案でまだ日はあるものの、早めの夕食を取った。エルフは酒も飲むし肉も食べるが私はまだ巫女として呼び出された可能性があるからと酒も肉も禁止された。緑の葉っぱをモシャモシャ食べている前で、2人だけでめっちゃ美味しそうなステーキ食べてた…。いや、ご飯もらってる立場なんで文句言うつもりはないけど…。


寝る時はケミさんが水魔法でベットを作ってくれた、正真正銘のウォーターベットである。上に敷いたシーツを濡れないように油が染み込んだ紙を敷いてから布を敷く。パジャマ代わりにハイロさんからオーバーサイズのTシャツを借りた。

わーーーすごーーーい!乗れる乗れる!一通りはしゃいでから布団を被ると疲れていたのかすぐに睡魔が襲ってきた。窓の外には2つの月が光り、虫の鳴き声や鳥の羽音が聞こえてくる。最高のヒーリングミュージックを聴きながら夢の国へ旅立った。

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