第2話

会社で寝て起きたら何故か見知らぬ土地にいて、しかも私の世界とは違うところっぽい。ぽい、というのは、空に月が二つあって、龍らしきものが飛んでいたからである。

そして私は時空のおじさんと出会ったら元の世界に戻れるかもしれない。



山の中で遭難した場合は下るんだっけ?川を見つけたら川に沿って下るって聞いたことあるような…?

周りを見渡し、木が少ないような、空が広く見える方を目指して歩き始めた。緩やかに下っているしとりあえず傾斜が下っている方に歩いてみる。

山の中なのに木がまばらに生えている、と思ったらいくつかの切り株を見つけた。切り株の表面は乾燥していて切ってからだいぶ時間が経っていることがわかる。

人がいるかもしれない事実に期待と、不安。不安の方が大きいかもしれない。人を見つけたとして、不審者だと思われないだろうか、一番初めに出会う人は良い人だろうか、というか、言語は通じるのだろうか。人の痕跡だけでどんどんとよくない想像が浮かんでくる。そうだよな、異世界かもしれなくて、人とはまた違う種族かもしれない。会っていきなり襲われるとか奴隷になるとかそういうのは嫌なんですけど?!こわい、慎重に行こう。

少し行くと開けた場所に出た。辺り一面草が生えてる牧場のようなところだ。もしかしたら山を切り開いて牧場にしているのかもしれない。腿あたりまでの長めの草が大量に生い茂っているが、身を隠すような木がどこにもないので、開けた場所をいくよりかはその周りの木に身を隠しつつ少しずつ下りて行ってみよう。

慎重に、ゆっくりと進んでいると人の声が聞こえてきた。咄嗟に体を隠そうとしゃがむ。


「午後からは牛をこっちの牧草地に連れてかればいいんだっけ?ヤギは?」

「牛もヤギもこっちでいいだろ、今日は雨が降らないだろうから少しくらい遅くなってもいいだろうし、連れてきたらコルルでも拾いに行くか」


なんとなく若者っぽい声が二人分、普通に日本語に聞こえる。牛とかヤギってことはやっぱりここは牧草地なのか、話してる内容も世紀末のような感じはない。むしろ平和そう。

今は昼だけど時空のおじさんに出会えなかったらこのまま野宿ってことになりそうだし…話しかけて、みようかな…


意を決してその場に立ち上がり、ゆっくりと声のした方に向かっていく。

「あのー、すみませーん」

人?の影が小さく見えるくらいから声をかける。

少しずつ近づきながら、声をかける。

いきなり攻撃されたらどうしよう、いや、いい人だと願うしかない!

「あのーーー!すみませーーーん!」

人の影がこちらを向き、視線が交わるのを感じた。

「あの、すみません、ええと」

しまった、なんで話しかけるか決めてない、異世界から来たんですけど時空のおじさん知りませんか?…不審者決定だ、そんなこと言ったら!

「えーと、あの、怪しいものでは無いのですけど、ここはどこですか?」

筋肉質な二人は少し驚いたような顔をしているが質問に答えてくれた。

「ここはマルド地区のパル村のはずれだ、それよりも人族の役人さんが従者もつけずになんでこんなところに?迷ったのか?」

人族ってことは、この2人は種族が違うのか!確かに金髪より白にちかい髪の毛は人では珍しい。

「あの、私は確かに人ですが、役人ではなくてですね、迷っているといえば迷っているんですが…」

話してみても良いんだろうか、下手に嘘をついてあとで食い違ったりすると困るな、ええいままよ!

私はかくかくしかじか話したみた。


「はあ、そうなんですね?」


やっぱり早まったかもしれない。

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