一年五組
美香の心は、ドキドキと跳ねていた。ピュウと吹いた風が、美香の髪を揺らす。
(せっかく綺麗に編んだのに。崩れちゃう)
たしかに、冷たい二月の風が通り抜けた髪は左右に編み込みが作られた、綺麗なポニーテールだった。髪を高く括ると幼く見えてしまうが美香の長く、癖っ毛なふわりとした髪はむしろ、美香を綺麗に見せてていた。二月の寒空の下。彼女の頬は、驚くほど赤かった。
「
美香が呼び鈴を鳴らして呼んだ彼女は、不思議そうに聞いた。
「そう…友達が、美結雨なら知ってる!って」
再び疑問顔になった美結雨はしかし、美香が歌之斗を訪ねたい理由を察したようだ。一人納得したような美結雨を見て、美香は顔を赤らめる。
「あっちの道曲がったところの先の青い屋根の家」
「へ?」
「いや、だから」
美結雨は同じことを繰り返した後に付け加えた。
「歌之斗の家だよ。知らないけど、上手くいくといいね」
美香がポカンとする間に、バイバイと美結雨は家に入ってしまった。残された美香は、意を決して歩き始める。
(美結雨ちゃん、優しいなあ)
わずか数分で、青い屋根の家にはたどり着いた。しかし途端に怖気付いてしまい、呼び鈴まで手が伸びない。ゆっくり息を吸って、落ち着こうとする。その時。
「あれ?美香じゃん。どしたの?」
出て来たのは、歌之斗だった。
今年、初めて中学校に足を踏み入れて。その教室で美香の隣だったのが、歌之斗。明るく溌剌とした歌之斗に、美香は惹かれていた。
(バレンタインでチョコを渡す!)
四月から、美香はずっとそう決めていたのだ。
それからしばらくして。
「美香!」
「か、歌之斗くん」
美香はあの日、返事をもらえていなかった。そしてそのまま、1ヶ月が経ったのだ。
『少し、考えさせて』
この日、歌之斗の後ろには彼と仲のいい男子がニヤニヤと笑っていた。それに対して歌之斗は、どっか行ってろ!お前ら!と追い払ってしまった。
歌之斗はゴソゴソとカバンをあさっている。美香は、いけないと分かりながら期待してしまった。だって今日は、二月一四日から一ヶ月なわけで。果たして、その予感が当たったのかと言うと。
その日、美香は満面の笑みで、チョコを片手に歌之斗と帰ったそうだ。これが、1-2の物語。
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