第2話 (2)クラスメイト

 さて、そんな木下の話はこのぐらいで終わりにしよう。

 次はお待ちかね、女子の話だ。


 おれの隣の席に座る女子は、石倉いしくらさなえというショートカットが良く似合う女子だった。


 席は出席番号順で割り振られているため、花岡という苗字のおれと石倉さなえが隣同士になるというのは少々奇妙ではあるが、これにはちゃんとした理由があった。


 最初、おれの隣の席には樋口よしみという女子が座っていた。樋口は肩まである髪を後ろで二つに結った童顔の女子だったが、彼女は頭に「ど」がつくほどの近眼だった。


 彼女の話だと、いま座っている後ろの席では眼鏡を掛けていても黒板の文字がよく見えない時があるそうで、彼女はそのことをホームルームで担任の菅原先生へと訴えた。


 話し合いの結果、一番前の席に座っていた石倉さなえと樋口よしみが席を替わることなった。これは石倉が自ら申し出たことだった。


 石倉によると、両目とも視力は二・五という驚異的な視力なので席が後ろの方でも問題はないそうだ。


 こうして、おれの隣の席は石倉さなえとなったのだった。


 なぜわざわざ、隣の席が樋口ではなく石倉になったのかという理由を説明したのかといえば、それはおれの名誉を守るためだ。


 もしかしたら、おれが樋口に毛嫌いされて、樋口が菅原先生に席を替えて欲しいと訴えでたなどといった根も葉もない噂が広まってしまうかもしれない。

 もしそんなことになったら、おれは困る。おれも思春期を迎えたの高校生なので、そこらへんはわかってもらいたい。


 さて、話を隣の席に座る石倉さなえに戻そう。


 彼女はスポーツ万能な少女であり、中学時代はバスケットボール部のキャプテンを務めていたそうだ。

 しかも、勉強もかなりできる。噂ではS高校入学試験でトップの成績を収めて入学してきたとか。なぜ、そんな彼女がおれと同じS高校にいるのかは疑問だが、とにかく彼女は文武両道というわけだ。


 そんな石倉さなえは、さっそく担任である菅原先生に気に入られたらしく、クラスの委員長をやって欲しいとホームルームで頼まれた。


 石倉は最初は嫌がる素振りを見せていたものの、次第に満更でもない顔つきになり、最終的には委員長になることを引き受けて、ホームルームの司会をするなど、クラスのまとめ役となっていた。


 彼女は男女関係なく受けがよく、すぐにクラスの人気者になっていた。休み時間になれば、ようやく打ち解けてきたクラスメイトたちが男女関係なく石倉の周りに集まってきて、楽しげに話をしたりしている。


 おれは彼女たちが楽しげに話している姿を遠巻きに見つめながら、持っていたシャープペンシルを器用に指の上で回していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る