第2話 ラグナロク編 アリスVSロック
製作者サイドからの開戦の通知が送られて来たのはあれから一ヶ月後だった。バトルフィールドのラグナロク=終末の日は、北欧神話から取られた言葉でその名の通り背景は世界の終焉を思わせるほど荒れ果てていた。
この何処までも続く荒れ地で一体どのプレイヤーが勝ち抜くことが出来るのかーー。
東方ーー枯れ果てた木々の元でバトルはもう始まっていた。
『無双天地』ランキング高天原編三位のアリスと天竺編二位のロックが鞍馬大天狗と雷霆神インドラで闘っていた。アリスの鞍馬大天狗は愛用キャラで有名だ。別名、鬼天狗のアリスと陰口を叩かれているらしいが本人は全く気にしていない。
対してロックの愛用キャラも雷霆神インドラでよく知られている。互いのサブキャラは悪鬼酒呑童子と竜宮主乙姫に破壊神シヴァと猿神ハヌマーンだ。
「あら、天竺の神様のお出ましってわけ〜。ちょっとはアタシを楽しませてくれるかしら?」
鞍馬大天狗が手に持っていた羽団扇を大きく振り空に舞い上がった。
「テメェーこそ、直ぐにくたばるなよ!」
米国人のロックは日本語が解かるのかアリスにそう返して来た。
鞍馬大天狗が羽団扇を素速く左右に大きく振ると、突風が吹き空はいつの間にか妖しく曇り雨が降り出した。雨は大粒になり次第に強さを増し前方がよく視えない。
「…視界が遮られたかぁ~。まぁ、想定内のことだしな。じゃあ俺様はコレであの女を泣かせてやるぜ」
雷霆神インドラがヴァジュラと呼ばれる金剛杵を振り翳すと空に雷鳴が響き渡り鞍馬大天狗目掛けて落雷した。
周りに煙が立ち籠める中、鞍馬大天狗は羽団扇で落雷を防いでいた。
「ちょっとアンタ!女性に向かって酷いでしょ!」
「嗚呼?鞍馬様は女性だったのかぁ~?か弱い女性の天狗様は死にたく無かったらさっさと敗けを認めたらどうだ?俺様は慈悲深い神様だからなぁ~」
「アンタ、マジでムカつくわ」
どうやらアリスは堪忍袋の緒が切れた様で、悪鬼酒呑童子に命じ腰にぶら下げている酒壺の酒を雷霆神インドラたちに向かって浴びせ掛けた。
その酒は鬼キャラを愛用しているプレイヤーたちから《神殺しの酒》と言われている酒で、神キャラ愛用プレイヤーたちからは避けたい技の一つとされている。神キャラで揃えたロックにとって大きな痛手だ。ロックの使用キャラたちが苦しんでいる間アリス愛用の鞍馬大天狗は竜宮主乙姫の技【海の恵】で回復していた。
観戦者からは「さすが、鬼天狗のアリスだ」と嫌味を交えた声援が飛び交っている。
「あ〜。もっと楽しみたいけど、アンタもよ〜く知ってるでしょ?この対抗戦がどんなゲームなのか。だ・か・ら・こんな所で油を売ってられないのよ。アンタを片付けたら『デスクィーン』を探さなきゃ」
そう言うと、鞍馬大天狗は座禅を組み法術を唱え出した。
「くそっ!【神通力】を出す気だな。ならこっちも奥の手だ。猿、シヴァ、天竺への道を開くぞ!」
少々ダメージは受けたが【不死】の技を持つ猿神ハヌマーンのお陰で致命傷を負わずに済んだロックは二神にそう命じた。インドラ、ハヌマーン、シヴァが自身の武器で空に輪を描くと光が指し雄叫びと共に大きな巨体を揺らして歩く白象が現れた。
[きゃー!あの白象はアイラーヴァタよ。私、あの白象が欲しくてロックに挑んだ事があるのよ]
[さすがにあのデカさじゃー鞍馬ヤバくねぇ?]
[俺はアリスちゃんの応援するぞ!]
観戦するプレイヤーたちのキャラたちも次々と声援を上げる。
フィールドでは激しく暴れ回る白象と共に破壊神シヴァも辺り一面を炎で覆い破壊の限りを尽している。
逃げ場が無いフィールドの中で、悪鬼酒呑童子と竜宮主乙姫は身動きが取れず鞍馬大天狗の技を待つしか無かった。
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