第二章

26:アルバイト初日①

「おはようございます」

『おはようございます!』

「ようこそ、Flower cafeへ!……まず初めに自己紹介からするわね。オーナーの山白香蘭やましろからんです。店内ではオーナーか、ランって呼んでね。これからよろしく。ふふ。あら、そんな緊張しなくていいわよ。ふふふ」

「あっ、はい!ありがとうございます!!こちらこそよろしくお願い致します!」


凄い気品と言うか、なんというか、とにかくオーラが凄いな……。

ただ、ちょっとミステリアスな感じもするような……。


「じゃ、次は私!店長の灯月海華とうづきみかです。よろしく!ミカって呼んでね!!一緒に働けるの楽しみにしてたよ!」

「よろしくお願いします!」


うわぁ……いい人そう!

何となく姉貴って呼びたくなるようなそんな感じがする!!


「おっ次は俺だね!正社員の光星碧こうせいあおだよー!!セイってお客さんいるときは呼んでね!よろしくー!!」

「はい!よろしくお願いします!」


・・・。

あれれれれ?

一瞬チャラそうに見えたけど案外真面目な人なのかも?


「はーい!次は私だよー!!同じく正社員の桜木藍羅さくらぎあいらだよ!サクラって呼んでね!!ところで君、碧と違ってかっこいいねぇー!!『ちょっ!?それ、地味にどころじゃ無くて普通に俺をディスってね?』え?別にそんなつもりないけど……」

「あ、あの!碧さんかっこいいです!!俺なんかよりずっと!!藍羅さんありがとうございます!嬉しいです!!これからよろしくお願いします!」

「うん♪よろしくね♪」


なんだろう……うん、独特。

それが一番、藍羅さんにはしっくりくる気がする!


「バイトの緑川花火みどりかわはなびだよ!後輩来るの楽しみにしてたんだー!!あ!ハナビって呼んでね!よろしく!!」

「よろしくお願いします!」

「花火ちゃん、ほんとに楽しみにしてたものね。あ、私もバイトで、菊佳雪音きくかゆきねと申しますわ。ええと……キクカと呼んで下さいませ。これから宜しくお願い致します」

「こちらこそよろしくお願い致します」


ハナビさんは明るくって、こっちまで元気になってくるなぁ……。

それに楽しみにしてくれてたなんて嬉しすぎる!!

雪音さんは花火さんのお姉さんみたいに見える。

後は、お嬢様にしか見えねぇ……。


「最後は俺か……若葉朔わかばさくだ。ワカバって呼べよ。後、必要以上に俺に近付くな。よろしく」

「よろしくお願いします!」


ひぇー!!

こえぇー!!

よろしくが夜露死苦にしか聞こえねぇ!


「ちょっと何その態度!朔だって楽しみにしてたじゃん!」

「別にそんなこと無いだろ!」

「そんなことあるじゃん!!」

「そんなことない!後輩が増えてめんどくさがってたじゃんか!」

「はぁ?何バカなこと言ってんの?ニヤニヤしてたくせに」

「ニヤニヤしてねぇ!」

「今だって……図星刺されて……ねぇ?」

「っだから!してねぇ!!」

「二人とも、今ここでケンカするのは止めようねー」

『っはい!すみません!!』

「あらあら、そんな焦らなくてもいいのよ?」

「すみません、いつも二人はあんな調子でして……」

「雪音さん……」

「でも、仲が悪いわけでは無いので安心してくださいませ」

「はあ……あーケンカするほど仲がいいってことですか?」

「えぇ、正にその通りですわね。うふふ。それに、朔もただ素直に喜べないだけですので。うふふ」


ってことは……歓迎されてないってわけでは無いんだよな。

良かったぁ……。

これで夜も寝れるよ……昨日ぐっすり寝たけど


「で、名前は?」

「え?」

「お前の」

「あっ……若葉さんすみません!皆さんも!!ええっと……波澄祐哉はすみゆうやです!何て呼んで貰っても良いのですが、バイト中だけ俺って事がバレないように呼んで欲しいです」

『りょーかい!』


メンバー全員が声を揃えて返事をする中、ある一人が


「何か理由があるの?」


と言った。


「藍羅!『別に話さなくても良いんだけど、そこまで言うぐらい大事な理由がきっとあるんでしょ?』祐哉くん気にしないで良いからね。答えたくないなら無理して答えなくて良いから」

「あ、海華さん大丈夫です」


祐哉は最初から話そうとしていたかのように話し始めた。


「単刀直入に言うと、俺、今の姿はいつもの姿じゃないんです」

「え!どういうこと!?もしかして今、変装してるとか……」

「碧!静かにしてなさい!!」

「海華さん、実は碧さんが仰ってることに近いんです。今変装してるんじゃなくて、学校でだけ変装してるんです。話は長くなるんですけど……良いですか?」


そう言って、全員が頷いたところを確認してから祐哉の口から語られた理由は残酷なものだった。


「小学六年生の頃までは今みたいな姿で登校していたんです。そしたら、女子から自分で言うのもなんですけど、凄いモテて……そうなると、大勢の男子から恨まれちゃって、小6の夏にその中の一人の男子が突然俺に襲い掛かってきたんです。そして、首の動脈辺りをカッターで切りつけようとされて……『え……それってもう、殺そうとしてるんじゃ……』『碧!』幸い、頬に軽く当たっただけだったんですけど、こんなことになるくらいなら、地味になってモテないようにしようと思って学校では変装してます。あ、でも流石にずっとは疲れるので、外ではしてないんですけどね」


祐哉はもう気にしていない風に話してはいるが、内容が内容なだけに……。

一同声を出すことも躊躇われた。

そんな中、声を発した者がいた。


「っ何て言えばいいか分からないけど、とにかく、その姿が学校の子にバレると前みたいになるかもしれないからって感じだろ?」

「はい、そういう感じです」

「それならちゃんとバレないようにするから、そんな気負うな」

「若葉さんありがとうございます」

「そうね、気負わなくて大丈夫よ。皆気を付けるから。ふふ。それに、もう本当に気にしていないんでしょう?」

「はい。それに、友いや、親友から変装しないで来てみて欲しいと言われているのでもうすぐ変装をやめようかな、と」

「なら気にする事ないわね。とりあえず名前を決めるわよ」

「お願いします」

「はい!オーナー!!スミヤはどうですか?」

「あら、もう思い付いたの?花火ちゃん。……ということなんだけど祐哉くんはどうかしら?」

「はい、良いと思います!花火さんありがとうございます」

「えへへ」

「じゃあスミヤくん、これに着替えてきてもらえるかしら?ふふ」

「っはい!オーナー!!」


渡されたのは、モカ色のブレザーみたいな制服。

襟の際には小さな花が描かれていてオシャレになっている。


「これからよろしくお願いします!」

『よろしく!』

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