第3話 12歳

あれから毎日、闇の技術を学び続け、12歳となった。

魔法の適正は雷、水、風、闇魔法だった。水魔法の中でも派生した氷魔法は暗殺に適している。

小さい氷を飛ばせば心臓を容易く貫けるから。

「セバス、父上の容体はどうだ。」

「なかなかよくありませんな。」

「そうか。」

「坊ちゃん、ボスが呼んでるぜ。」

「わかった、プロキオン。」

実力者にはコードネームが与えられる、こいつもそう。

「コンコン」

「失礼しやす、ボス、坊ちゃんを連れてきやしたぜ。」

「そうか、ご苦労。ゼクス、近くに来い。」

父上、もう立てないくらい弱ってるのか。

ベッドで寝ている父上に近づく。

「はい、父上。」

「私はもう情けないことに体が動かん。これからはもう裏はお前に任せたい。…代行してくれるか?」

「はい、お任せください。」

「そうか、ではまずは組織のメンバーと顔合わせをしてもらう。夜ご飯を食べ終わったらセバスと例のところへ来い。いいな?」

「御意。」


父の部屋から出ていくとラナに出会った。

「ゼクスお兄様、父上はどうでしたか?」

「ああ、元気だったよ。」

「ならよかったです。」

そういって笑う妹を見て、微笑ましく思う。

「ベルティアはどこにいる?」

「中庭で素振りをしています。」

「そうか、じゃあ俺もしに行こうかな。」

「では私も行きます。」

中庭にいくと、ベルティアが素振りをしていた。

「やぁ、やぁ、やぁ。」

「よう、ベルティア、なかなか筋がいいな。」

「兄上、僕に稽古をつけてください。先生にも褒められたんですよ。」

「よーし、かかってこい。」

「カン、カン、カン・・・・・」

ふむ、なかなか食らいついてきている。ベルティアはきっといい騎士になる。

「よし、このぐらいにしておこうか。」

「はあ、はあ、はあ、兄上はすごいです。僕も兄上のようになりたいです。」

その言葉を聞いた瞬間、思わず顔が歪みそうになる。

駄目だ、ベルティア、俺は裁く側の人間だが裁かれるべき側の人間でもある。

真っ当な道を歩いてほしい。

「そうか。ちゃんと魔法の練習も怠らないようにな。はは、そんな嫌そうな顔をするな。」

そういって、ベルティアの髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。

「やめてくださいよー、兄上。」

「ほーれ、ほれ。」

「もうゼクスお兄様、そのへんで。はい、飲み物とタオルです。」

「サンキュー。」

「ありがとうございます、姉上。」

平和な時間はあっという間に終わり、夜となる。


「では行きましょうか、ゼクス様。」

「ああ。」

俺が先頭に立ち、開かずの部屋から地下室へと行く。

あいかわらず、囚人どもが喚いている

「うわー、いやだ、殺さないでくれー。」

なら、悪いことをしなければいいだけだったのに。

「黙れ。」

重く暗い殺意を浴びせると、周囲が静かになった。

通路を進んでいくと大きな扉があった。

鍵に魔力を流すと

「ガチャリ」

鍵が開いた。

扉を開け、中には父と幹部が座っていた。

「よく来た、ゼクス。前に来い。」

一番奥に座っている父が声をかけてくる。

「お前らも知っていると思うが、今日からボスはゼクスとなる。指示に従うように。」

「ちょっと待ちなよ、まだそいつはガキだろ。そんなのがボスになるってか・・・」

心に蓋をし、おぞましい殺意を向ける。

「おい、話を聞いてなかったのか、俺がボスだ。異論は認めねぇよ。」

あたりが静まる。

「ゼクスの言うとおりだ。残念ながら俺の体は病に侵されている。もう長くはない。だからゼクスに裏は託すと決めたのだ。わかったか、スピカ。それにゼクスには処刑人としてふさわしい力がある。みんなもそれはわかっただろ。ゼクスが次の処刑人だ。」

「…わあったよ。それじゃあ、この場は次代の処刑人への戴冠式ってことかい?」

「そうだ。ゼクス、こちらを向け。お前にはこれをやる。」

「…白い仮面。」

「そうだ。闇にありながら飲み込まれるな。そういう戒めが込められておる。それと処刑人が変われば国王陛下に報告する義務もある。その時にそれを見せるのだ。その白い仮面が処刑人であることの証明となる。」

「分かりました。」

「では、ゼクス、お前が今日から処刑人だ。この王国の闇の王、なにか一言をかけてやってくれ。」

「俺はまだ若輩で慣れないこともある。だが自分の役割をきちんとこなすつもりだ。俺に手を貸してほしい。」

それを聞いた瞬間、すべての幹部が立ち上がり跪いた。

そして

「「「「「「「「御意」」」」」」」」」

ここに処刑人の移行は成った。


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