第2話 父視点
私はどうすればいいのだろうか、やらねばならないことは分かっている。だがそれはしたくない。
「セバス。」
「ハッ。」
「私はどうすればいいと思う?」
「ゼクス様にお伝えするほかありません。」
「…あの子は優しい。絶対に苦労するだろう。何より心が持たないかもしれない、父のように。」
「…確かにそうかもしれません。ですがラナ様やベルティア様はまだ幼すぎます。それでは間に合いません。」
「クッ、何度この病の体を憎んだことか。忌々しい。…ゼクスに告げるか。」
「ゼクス様はお優しいお方です。きっと引き受けられるでしょう。弟たちに押し付けるような子ではありませんから。きっと奥方様の影響ですね。」
「妻の忘れ形見に汚れ役を押しつけるのは本当に忍びない。何度、我が家の仕事を憎んだことか。」
「…必要なことではあります。おそらくフォルス家の初代当主も悩んで引き受けたことでしょう。」
「それがわかっておるから、この気持ちのぶつけるところがわからんのだ。」
「そうですか、…。」
「私でさえ人を殺し慣れるのは時間がかかった。セバス、あの子の教育係を引き受けてもらえんか。」
「私でよいのであればお引き受けしましょう。」
「頼む。お前にしか頼めない。」
「分かりました。」
翌日、
私は伝えなければいけない。父も同じような気持ちだったのだろうか?
ゼクスは賢い、こちらの意図が伝わる。
「…子供たちのうち誰かがやらないといけないということですか?」
思わず顔が歪んでしまう。
どうして最愛の妻との子を闇の道に進ませなければならないのだ。他の家ではだめだったのか。それでも組織のボスとして部下に弱みは見せられない。部下は忠誠心に篤い。その信頼を裏切ることは出来ん。
話を続ける。
ゼクスの放った言葉に顔がこれまで以上に歪む。
「大丈夫です。僕は父上と母上の子供ですから。」
おそらくゼクスが思っているよりひどい事を話してしまう。それでも家族のために受け入れることがわかっているから、なおさら辛い。
そして我が家の裏家業について話していく。
薄々気づいておったのか。完璧に隠しているつもりだったのだが、それが裏目に出てしまっていた。
そしてまたもやゼクスに意図が伝わる。
「僕に裏の技術を教え込むということですか?」
一度でも闇に浸かった人間は二度と光の世界には戻ることができない。何より私が実感しているから間違いない。技術までなら何とかまだ間に合う、だが人を殺せば確実に戻っては来れない。そしてそれを初日にやらせようとしている、私は親失格だ。せめて心が壊れないようにセバスに任せよう。それぐらいしか私にはできることはない。私には表と裏の仕事があるから。
己の無力さを痛感する。
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