処刑人の一族

@sasuraibito

第1話 始まり

僕は今日も王都の屋敷で貴族の子供たちと遊ぶ。僕の家は公爵家で、僕の友達は同じ考えを持ってる家の子供らしかった。

ずっとこんな楽しい毎日が続くんだと思ってた。今日までは。

「来たか、ゼクス、お前も今日で七歳だ。お前に話さないといけないことがある。」

「何をでしょう?、父上。」

「その前に確認だ、お前に覚悟はあるか?」

「覚悟ですか?」

「そうだ、一度でも知ればもう引き返せなくなる。それでも覚悟はあるか?」

「ないと言ったらどうなるんですか?」

「ラナかベルティアに大きくなったら尋ねるだけだ。そのときにはもう、お前が代替することは出来んがな。」

「…子供たちのうちの誰かがやらないといけないということですか?」

「…そのとおりだ。」

そこで初めて父上の顔が歪んだ。嫌なことなのかな?

「誰かがやらねばならないということなら僕がします。僕は二人の兄ですから。」

「そうか、すまない。お前には辛い役目を押し付けることになる。」

「大丈夫です。僕は父上と母上の子供ですから。」

そう言った瞬間、父の顔がこれまで生きてきた中で最も歪むのを見た。

「…お前は強い子だ。では話そう。本当にいいんだな?」

「はい、聞かせてください。」

「我が家は建国当時から闇の部分を担ってきた。諜報、暗殺、拷問、処刑など。そして、その当主が組織のリーダーだ。処刑人と言われておる。」

「…そうだったんですね。使用人の中にもまぎれていますよね?」

「!!、気づいていたのか?」

「はっきりとではありませんが、足音がしないので不審に思ったことはあります。」

「なるほどな、これからは気を付けさせよう。それでお前を組織のリーダーにふさわしいように教育する。」

ここで初めて父が顔を歪めた理由が分かった。

「僕に裏の技術を教え込むということですか?」

「聡いな、その通りだ。非常につらく、これまでの歴史では心を病んだものもいる。決して油断はするな。」

「分かりました。」

「ではお前の教育係を呼ぼう。お前も知っている奴だ、セバス。」

「はい、旦那様。」

!!、全然気づかなかった。どこにいたんだろ。

それにしてもセバスは闇の人間だったんだな。

「今日からセバスに学べ。成人する前までには完璧に学んでもらう。」

「分かりました。」

「では、セバス、頼んだ。」

「お任せください。では行きましょう、ゼクス様。付いてきてください。」

セバスの後を付いていくと、階段を降り、入ってはいけないという開かずの部屋にやってきた。

「ガチャリ」

中に入っていく。

すると、数字が書かれたボタンがあり、ものすごいスピードでセバスは打ち込んでいく。

「ガコン」

突然床が開き、地下へつながる階段が見えた。

「これは…。」

「さぁ、行きますよ。」

「カツン、カツン、カツン・・・・。」

僕の階段を下りていく音だけがする。

下へ降りると、とても広い空間があった。

そこには牢屋に収容された囚人たちがいた。

「セバス、これはいったい…?」

「ゼクス様には心を鍛えてもらいます。」

「心?」

「はい、心というのは鍛えづらい。ですからどうしても重い精神的負担をかける必要がございます。まずは・・・、この人を殺してください。」

そういうとセバスは牢屋にかけられら鍵を開け、一人の男性を外に連れ出す。

そして手足を椅子に拘束する。

「やめてくれー--。殺さないでくれー---。死にたくねぇよー----。」

「えっ、殺すの?」

「はい」

「む、無理だよ。殺すなんてできないよ。」

「ゼクス様、その程度の覚悟だったのですか?、旦那様に宣言されていたではないですか、僕がやると。どのみち、ゼクス様はこの家の秘密を知ってしまった。戻ることは出来ません。そうなると殺され、ラナ様かベルティア様がこの汚れ役をしなければなりません。それでもよろしいのですか?」

ラナやベルティアが?

絶対にダメだ、僕は兄だから汚れるのは僕でいい。ラナ達には楽しい人生を送ってほしい。

「…わかったよ。僕がやる。」

その間も選ばれた男は泣き叫んでいる。

すると、セバスが目に不思議な色を灯す。

「ゼクス様、一つアドバイスが。」

「何?」

「人を殺すときはまず己の心を殺さねばなりません。」

「…自分の心を殺す。」

「はい、精神的ダメージで心を壊さないように。」

「…よく分からないや。でも僕は殺すよ。誰にもこの役目を押し付けたくない。」

「…ご立派です。ではこちらを。」

そういうと、小さい刃物を手渡してくる。

「急所を狙えばすぐ終わります。心臓か頭、もしくは首。」

「…わかったよ。」

手が震える。本当は殺したくない。でも弟たちに役目を押し付けるのはもっと嫌だから。

「ア、ア、アアアアアアー-------。」

自分を奮いだたせるため、声を出す。

そして刃物を手にし、首を掻っ切る。

「プシュー」

「グギャーー」

男が暴れている。

そして返り血を全身に浴びる。

「うう、うう、あ。」

手に殺した感触が残り、涙が零れてしまった。

「…ご立派です。ゼクス様。」

「…僕は人を殺したんだよ?」

「それでもです。あの男はこれまでに数えきれない人を殺してきました。もしあの男が生きて、何らかの拍子に逃げ出せば、またたくさんの人が殺されるでしょう。それを許せますか?」

「…許せないよ。でも僕もあいつと同じ人殺しだ。」

「そうですね。ですが誰かがやらなければならない。それでもやるとお決めになられたのですよね?、ならばブレてはなりません。あえて厳しいことを言いますが、あなたは殺した分の命も背負って生きていかないといけない。それが処刑人の贖罪の方法です。」

「うう、ああー、ああー-あー-。」

しばらく号泣してしまう。

そして泣き止むと、

「僕は…、いや俺は生きるよ、殺した奴の分まで。だから処刑人としてこの国の敵、大切な人の敵を殺すよ。」

「…はい。」

「では訓練をしてくれ。」

「御意。」




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