フォースバトル VS 隠密騎士。
「ちょっと、一体どこまで走るのよ」
「王都まで」
「バッカじゃないの! 王都まで普通に歩いてまだ二週間以上掛かるわよ」
「全力で急げば二時間くらいで……」
「貴方、本物のバカね」
俺はこの街道が王都まで続いているとは聞いていたのだが、正直どれだけ遠いのかまでは知らなかった。黒づくめ共に追われ逃げるように村を飛び出して来たからだ。更に追い打ちを掛けるようにキャッシュがぐずり始めた。
「あなたの走りにつき合わされてもうクタクタよ。少し休ませて」
「のんびりしてたら追いつかれる」
「先回りされてたくせに」
「ぐぬぬ……」
キャッシュは急に良いことを思い出したと言って急に
「前に冒険者のお客さんがこの辺りの脇道を入った所に秘境村っていうのがあってその先の山の麓にある洞窟を探索に行くって言ってたわ。あと少しで日も暮れそうだし、その村で休ませて貰いましょうよ」
「そもそもお前、いつまで付いて来るんだよ」
「もちろん、代金を十倍……いえ、百倍にして払って貰わなきゃ割に合わないわ。それまで絶対に離れないから!」
「割に合わないって、自分から首を突っ込んだくせに」
「うっさいわね、貧乏人!」
「何だと守銭奴!」
二人は口さがない言い合いを続けながら街道から離れ、寂れた小さな小道へと歩みを進めていた。
そんな時だ、後ろの茂みからまたもや黒づくめの男が飛び出して来た。まるで時代劇の忍者のような黒い忍び装束に革の胸当てや小手、具足のような装備を身に着けた男が俺たちを呼び止め静止した。
「君たち、そちらへ行ってはいけない!」
「また黒づくめかよ」
「明るい家族だっけ、貴方達本当にしつこいわね」
「ちがう、僕は騎士団のおんみ……」
「あっ、そろそろだ。キャッシュ、俺の後ろに下がっとけ」
「なんでよ」
「いいから、頼む」
キャッシュは俺の言葉に渋々従った。すると今歩いて来た道の方からバキバキと何かをへし折り砕く様な嫌な音が近付いてきた。
とっさに音のする方へ振り返った黒づくめの男に見えたのは、ぶつかる枝葉をへし折りながら飛来する何らかの回転体だった。その回転体は声を上げる間もなく彼に激突し、その体をクルクルとキリモミさせながら茂みの奥へと弾き飛ばした。
回転体はそのまま俺の手の中に収まるとピタリと止まった。
「何なのよ〜その剣」
黒づくめの飛ばされた茂みの方を見ながら、呆れたような声で尋ねるキャッシュに、俺はひとつため息を突いてからこの剣について話す事にした。
「この剣は勇者に取り憑く呪いの聖剣なんだ」
「何だか色々と突っ込みたいワード満載ね」
「話しは少し長くなる。とりあえずここを離れよう、続きは歩きながらだ」
俺は5歳くらいの子供の頃、とある占い師との出会いから話した。ほとんど娯楽などない貧乏村にその占い師はやって来た。水晶玉に手をかざすとその者の未来が見えるとの話しだった。
未来に希望など持てない貧乏村の大人達には不人気だったようだが、子供を持つ親たちには一定以上の人気があったようだ。俺もうちの両親に連れられ見てもらう事になった。
「俺が水晶玉に手をかざしたら淡い光で発光したんだ。その占い師いわく聖剣との出会いが俺を勇者へと導くって啓示を受けたらしい」
「貴方がおとぎ話に語られる様な、伝説の勇者だっていうの?」
「そこが問題でさ、俺の他に同じ啓示を受けた子供が三人いたんだわ」
「一気に胡散臭くなったわね、その啓示」
「だろ、でも俺はこの剣に出逢っちまった」
俺はその剣、エクスカリバーを掲げてコイツとの出会いについて語り始めた。
ーつづくー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます