フィフスバトル VS 聖剣。
占いの事なんて、とっくに忘れてた十歳の暑い夏の日、日課の魚釣りに疲れて木陰にあった細長い岩に腰掛けてたその時だった。
『名付けよ、我の主たる資格を持ちし者よ……我に名を、名を付け……ちょ、ちょっと待ちなさい。何無視して立ち去ろうとしてんの。名を、名を付けて〜お願い!』
「置いて帰ろうとしたの?」
「だって尻の下からいきなり話し掛けて来るんだぜ、気持ち悪いじゃん。でもなんか必死そうな声を出してたからさ、まぁ名前位ならって」
「それでエクスカリバー? 何かの物語か伝説……それともまた啓示か何かから付けたの?」
「そこの川の名前」
「エクスカ
「何だよ、笑うなよ。それならキャッシュはあのフライパンに名を……って言われたらどうする」
「う~ん、ゲイ・ボコルグ……かな。初めて武具として使ったのが酔っ払って暴れたゲイのおっさんをボコボコにぶっ飛ばした道具だったから……かな」
「俺と大して変わんねぇ〜」
なんだろう二人して笑うと久しぶりに楽しいと感じる気持ちになれた。この剣に名を付けてから苦労の連続で笑う余裕なんて全くなかったからだ。
俺はあの時、名付けを終えるとその場から逃げ出した。でもこの剣は俺を追って村まで飛来した。俺を追って一直線に回転して飛んでくるものだから村中の家を破壊して回った。
「その時の修理代が……」
「一千万ね!」
「いや、三百万。父は働くの苦手だったので、王都のギャンブル場で一発当てて来ると言って村を出て行った」
「他人の親の事を悪く言いたくないけど、クズね」
「母も『良い働き口が見つかったので探さないで下さい』と書き置きを残して俺が寝てる間に仕事に出て行った。あれから一度も連絡はない」
「何かもう色々切ないわね」
「村の人達がほぼタダでだけど、仕事を回してくれたから何とか生きて来れた。でも最近になって……」
「
「親父がギャンブルで作った借金一千万を回収するため親父の家族を探して貧乏村まで来たんだ」
奴らが来たことを村の人達から聞いた俺は家には戻らず、かねてから計画していた【冒険者で大金稼いでウハウハ計画】を実行する事にした。
「貴方ってネーミングセンスが壊滅的よね」
「うっせーわ」
「でも分かった。私も協力する」
「えっ?」
「貴方が借金を返して、うちの未払いの定食代を一万倍にして返せる様に」
「おいおい、倍率がさっきより爆上がりしてんぞ」
「利子と必要経費よ。私だって勝手に飛び出して来ちゃってきっとクビになってる」
「自業自得……と言いたい所だがすまない」
回収屋たちから逃げる為にあの定食屋に身を隠したのが事の始まりだ。責任は若干俺にもある。一人より二人、協力してくれると言うのなら少しでも早く金を返せる様に努力しよう。なんだろう、事態は少しも良くなってはいないが、一人より二人。少しだが明るい未来が見えてきた様な気がしていた。
ーつづくー
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